実際に“全社員在宅勤務”を実施してみたらインフルエンザ特集(1/2 ページ)

新型インフルエンザが流行しており、BCPの見直しを考えている企業も多いだろう。しかし、計画を漠然と立てるのは難しいうえに機能しない。今回はBCPを立案するだけでなく、実際にパンデミックを想定し、全従業員の在宅勤務を試してみた企業にその際の課題などを聞いた。

» 2010年01月08日 08時00分 公開
[大津心,@IT]

 新型インフルエンザが流行している。2009年12月第1週は、1週間に感染した患者数が150万人規模ともいわれており、学校閉鎖も相次いでいる状況だ。

 企業への影響も大きく、「風邪の症状が出たら出社してはならない」「家族が感染したら出社してはならない」「感染した場合には、完治後も1週間は自宅療養」など、対応方法もさまざまだ。中には療養が長引き、自宅勤務を余儀なくされている社員もいるようだ。

 今後、さらに感染力の強いインフルエンザが発生すると、学級閉鎖ならぬ“会社閉鎖”や“事業所閉鎖”も起こりかねない。企業はこのような事態に備え、「BCP(Business Continuity Plan):事業継続計画」を作成しておくべきだが、実際の手本なしに実効性のある計画を立てるのは難しい。

 そこで今回は大規模災害を想定し、BCPの一環として実際に「ほぼ全社員の自宅勤務」を実施した株式会社リンクに話を聞いた。

実際に全員在宅勤務を実施してBCP対策を評価

 リンクは、ホスティングサービス「at+link」やIPビジネスフォンサービス「BIZTEL」を提供しているITサービスベンダ。ホスティングサービスは、ビジネスインフラとしての事業継続が社会的に求められていることから、災害やパンデミックが起こったとしても事業継続は必須の課題だった。このことから、事前の計画だけでなく全社員60名による自宅勤務の演習を決定したという。

リンク 代表取締役社長 岡田元治氏

 具体的には、万が一インフルエンザが大流行して職場閉鎖が起きた場合の事業継続に備え、実際に在宅勤務演習を実施。まず、2009年9月17日(木)に実施し、続いて10月21日(水)〜22日(木)にかけては平日の2日連続で実施したという。

 想定は、「首都圏でパンデミックが発生し、出勤による業務遂行が困難または危険と判断された場合に『1〜2週間程度』在宅勤務に切り替える」という設定だ。

 同社 代表取締役社長 岡田元治氏は、「2009年のゴールデンウィークころから新型インフルエンザが流行しており、今後爆発的に流行する可能性もあるので、それが起こる前に事前演習を行った。いまでも予防接種の優先順位などで混乱が生じている。いつ発生しても対応できるように備えることが重要だ」と実施背景を説明した。

 また、同氏は「以前、SARSや鳥インフルエンザが流行したときなどに、BCPのマニュアルを作った企業は多い。しかし、マニュアルを作っただけや、バックアップ装置などを導入しただけで安心している企業が多いのも事実だ。しかし、実際に災害などが起きた際には、マニュアル通りにいかないことがあるはず。1度は実際に試してみないと、問題点を洗い出せず、現実的に役に立たないだろう。また、他社が考慮していない問題として、“復旧に必要な期間の運転資金などをきちんと準備していない”という点も挙げられる。大地震などが発生した場合、売り上げが数カ月間停止してしまう可能性もあるだろうが、“その間の給与準備も事業継続計画の一部”という意味で備えるべきだ。当社の場合、全従業員の半年分の給与を備蓄している」と語り、BCPへの心得を示した。

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