仕事に人をつけて見える化――チームの層を厚くする方法「現場の仕事」を見える化する

「人に仕事がつく」と何をやっているのかが分からなくなる一方、「仕事に人をつける」と何をやっているのかが見えるようになります。そのため、仕事の担当者を普段から2人以上つける体制を整えておきましょう。他部署を体験学習させるのもいい方法です。

» 2010年01月06日 13時30分 公開
[小山昇,Business Media 誠]
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 長引く不況の中、自社の経営に悩みを抱えている中小企業の経営者が多いのではないでしょうか。そんな中、経営の内部を社員に公開し、徹底的な透明化(=見える化)を継続することで、社員のモチベーションを高め、増収増益を達成した会社があります。それが経営サポート事業などを行なう武蔵野――。「中小企業のカリスマ」と呼ばれる同社の小山昇社長が「現場の見える化」の方法を伝授します。4回目は「チームの層を厚くする方法」をご紹介しましょう。


この連載は書籍『経営の見える化』から抜粋、編集したものです


人に仕事がつくのではなく、仕事に人をつける

 「人に仕事がつく」と、ブラックボックスになって何をやっているのかが分からなくなります。ところが「仕事に人をつける」と、何をやっているのかが見えるようになります。

 東京駅を6時30分に発車する「のぞみ5号」は、9時6分に新大阪駅に到着します。昨日なったばかりの運転手でも、明日定年する運転手でも、誰が運転しても、「のぞみ5号」は9時6分に新大阪駅に到着します。それは「仕事に人をつけている」からです。

 「武蔵野」では、「総務部門」の人材を毎年変えています。同様に「経理部門」も1年に1回変えています。たとえ人が入れ替わっても、仕事に人をつけていれば、仕事が滞ることはありません。

ダブルキャストで社員の層を厚くする

 仕事に人をつけていれば、人事異動をしても現場が混乱しません。普段からダブルキャスト(同じ役をこなせる人を2人以上用意すること)の体制を整えておけば、臨機応変に対応することができます。「武蔵野」では長期休暇制度を設けていますが、課長職以上は、連続して9日間の有給休暇を月末から月初にかけて取らせます。

 月末月初はどの現場も忙しいため、抜けた穴を誰かが補わなければいけません。部長が休めば課長が部長の代わりをし、課長が休めば一般社員が課長の代わりをするようになる。そのことによって社員の層が厚くなり、ダブルキャストが実現します。

 以前、こんなことがありました。営業部門の社員が、お酒の席でこんなことを口に出したんです。

 「いいよな、事務員は。夏はクーラー。冬は暖房がかかっているから、快適じゃないか!」

 私は「そうか、そうか。それならば……」と思い、営業の社員に「コールセンター」での体験学習を積ませました。朝から晩まで、電話を取り続けた結果「もううんざり。営業がいい」。

 すると今度は、内勤の社員が「営業は外出できるからうらやましい」といい出しました。私は「そうか、そうか。それならば……」と思い、お客様まわりを「1日100件」体験させました。すると「もうヘトヘト」。急に文句をいわなくなります。

 このことにヒントを経て、課長職になると半期に2回、自分が経験したことのない事業部の体験学習を実施しています。これもダブルキャストを実現するためのひとつの工夫です。

著者紹介 小山昇(こやま・のぼる)

 株式会社武蔵野の代表取締役社長。その経営手法には定評があり、2000年に日本IBMと並んで、日本経営品質賞を受賞した。「中小企業のカリスマ社長」と呼ばれ、現在は全国300社以上の中小企業に経営のサポートを行っている。


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