“情報生態系”としての手帳――オリジナルの「手帳活用書」を作り出せ2009手帳特集“超”入門編

手帳は市販の状態では完成品ではない。PCのように必要なソフト(手帳術)をインストールし、運用方法(利用習慣)を身につけてはじめて完成するアイテムなのだ。

» 2010年01月05日 16時00分 公開
[舘神龍彦,Business Media 誠]

 手帳を使いはじめてしばらくすると、自分なりの工夫をしたくなってくる。もちろん、手帳が趣味的なアイテムの側面を持つことや、紙ゆえに加工や工夫の自由度が高いこともその理由の1つだが、実はそれだけが理由ではない。

手帳に工夫が必要なワケ

 仕事をしていれば、自分の周辺に仕事関連の各種情報が発生し伝達されていく。それはざっと以下のようなものだろう。

  • 長期/短期のタスク
  • ToDo
  • 各種会議などのミーティング
  • アポイント
  • アイデアなどのメモ
  • 覚書的メモ

 これらは、PCだけで記録、管理しきれるものではない。ほとんどの手帳では、こうした雑多な仕事関連情報をキャプチャー/記録/保存するための道具として使うために、工夫が必要なのだ。その意味で、手帳は市販の状態では完成品ではない。PCのように必要なソフト(手帳術)をインストールし、運用方法(利用習慣)を身につけてはじめて完成するアイテムだと言える。

 市販の手帳の中には、これらの記録に関して一貫した設計思想とそれに沿ったパーツが用意されているものがある。そして想定される使い方をすれば、手帳を利用する習慣が身につくようになっている。「記録すべき事項」やそのための各種ツールは、手帳ごとに異なる。これは手帳それぞれの設計思想が異なるためだ。

 以下に2つの具体例を見ていこう。

「超」整理手帳の場合:ToDoリストとメモ帳を分離

 以前も紹介した「『超』整理手帳スタンダード」の場合は、記録する事柄ごとにパーツが明確に分かれている。

蛇腹式のスケジュールシートに加え、メモとToDoを別冊子として用意している「超」整理手帳(画像は「超」整理手帳2010 オフィシャルサイトから)

 蛇腹式のスケジュールシートは、基本的には時間軸に沿った事柄を記入する。また、ToDoリストとメモは別パーツとして用意している(「超」整理手帳の基本セットに同梱)。これは「超」整理手帳が、2つ以上の冊子をカバーに挟む“モジュール型”手帳であることによって可能になったものだ。

 つまり、スケジュールを記入する紙面には、基本的にはスケジュールのみを書くようになっている。実際、蛇腹式のスケジュールシートは他の手帳にくらべて1日の記入欄が小さい。

 その代わり、ToDoやメモは別冊子として用意している。1日のスケジュール欄のサイズに左右されることなく記入できるわけだ。また、ToDoリストが別になっているので、やりのこしたタスクが発生しても、スケジュール欄に転記する必要がない。

 これはメモも同様だ。普通のとじ手帳は、スケジュール欄とメモページがひとつにとじてあり、メモページに書ききってしまうと、別途メモ帳を用意する必要がある。「超」整理手帳はメモ帳を別パーツにすることで、この点を解決している。

 参考までに言えば、日本能率協会マネジメントセンターの「能率手帳」シリーズの中には、専用のメモページを別売オプションとして用意しているものがある。「能率手帳」「能率手帳エクセル」などの各シリーズがそれだ。

 ただ、同じ「超」整理手帳でも、最近登場した「『超』整理手帳エレファントA5」では、考え方が少々異なるようだ。

 「エレファントA5」では、蛇腹式のスケジュールシートとA5サイズの方眼ノートの組み合わせを、A5のノートカバーに組み合わせている。つまり既存型の「超」整理手帳に望まれていた大きな記入面を実現するためにノートを用意したわけだ。その代わり、メモとToDoを統合した形になった。

 以上は、「超」整理手帳の標準的な構成を前提にしている。そして使う人によって、これらには工夫の余地がある。例えば、エレファントA5にスタンダードのメモ帳やToDoリストを組み合わせてもいいし、それがロディアのメモでもいいのだ。

フランクリン・プランナーの場合:ミッションという最上位概念

 システム手帳の一種だが、人生の自己実現というコンセプトを持つフランクリン・プランナーが最重視するのは、ミッション・ステートメントである。

 ミッション・ステートメントは、自己実現の果てにある未来の自分像であり、手帳を使うユーザー自らが規定する。手帳はこれを実現するための道具だ。詳しくは解説書を参照して欲しいのだが、この手帳を使うのにはまずこの概念を理解する必要がある。

1日のスケジュール、タスク、メモを1ページにレイアウトした、フランクリン・プランナーのデイリーリフィル(画像はフランクリン・プランナー オンラインショップから)

 まずスケジュールシートは、既存のシステム手帳を踏襲しており、月間、週間、1日のそれぞれを用意している。またToDoリストは1日見開きの中に設けている。ここにToDoを毎日リストアップして、A1/A2/A3/B1/B2/B3のように優先順位を付けて処理してゆき、やり残したものは次の日以降に転記することを推奨している。

 メモも、通常のシステム手帳の考え方を踏襲し、白紙や方眼のメモリフィルを用意している。また「サテライトノートブック」(リフィルを綴じたノート型メモ)を別売りしており、バインダー本体を持たない場合はこれにメモできる。夢の実現をサポートするために、週ごとの目標を記してその週の間は常に参照する、「一週間コンパス」というツールもある。

 リフィルが交換可能なシステム手帳をベースとしながらも、「ミッション」の存在やタスクの優先順位付けなどを明確なコンセプトとして持っている点が、フランクリン・プランナーの特徴だ。

自分なりの情報生態系を組み立てる

 今回は、2つの手帳を例に挙げて、“情報生態系”としての手帳を考察してみた。この2つの例に限らず、専用の活用書がある手帳ほど、情報生態系に関する考え方がそれぞれ独自である。そして実際には、各手帳の使い方や考え方は、ほかの手帳のユーザーにも応用されている。

 手帳利用暦の長い人は、このように各種の手帳活用書にある考え方を自分なりに理解し咀嚼し応用して、自分の手帳活用に取り入れているのだ。

 手帳も手帳術も手帳活用書も、選択肢は無数にある。限られた時間の中で、いかに自分なりの手帳術と自分ルールと情報生態系を組み立てていくか。暫定的にでも答えが見つかれば、そこであなたの手帳術は1つの到達点にたどり着くと言えるのではないだろうか。

 そしてもうお分かりのように、そういったもののケーススタディが各種の手帳専用の解説書なのである。その意味では、「手帳術を組み立てる」とは「自分の手帳活用書を作り出す」ことでもあるのだ。

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