相手かまわず信頼するのは、誰も信頼しないのと同様に過ちである名言で読む「リーダーの必読書」

かつての共同経営者であり、友人でもある人物に裏切られた彼は、それでも相手を許した。だが、自分が経験から得た教訓を無駄にすることはなかった。

» 2009年12月21日 08時30分 公開
[フランクリン・コヴィー・ジャパン,Business Media 誠]

 相手かまわず信頼するのは、誰も信頼しないのと同様に過ちである。

――ラテン語の格言

 私が知っている、ある会社のケースを紹介しよう。

 そこの会長と社長は一見、高い信頼関係があるようだった。ところが会長はある日、社長が組織内でミニ・クーデターを企んでいることを知った。社長は会社を、会長(彼も創業者の1人だった)や取締役会が考えているのとは違う方向に持って行こうとして、社内のリーダーを何人か集めていたのだ。

 その結果、2人の信頼関係は完全に崩れ去った。これは特に会長にとって耐え難いことだった。なぜなら、裏切られたという思いがあったからだ。会長は社長を追放し、会社の再編を行った。仕事上、社長と会長は袂を分かつこととなったのである。

 しかし、2人の間にはそれまで築き上げてきた友情があることから、彼らは個人的信頼の回復に努力した。何カ月間も話し合う過程で真摯に謝罪し、涙を流す場面さえあった。そして、ついにわだかまりが解け、2人は再び良好な関係を取り戻したのだった。

 ある日、元の社長が別の事業計画を持って会長を訪ねた。本題に入ろうとしたとき、会長は心を込めて言った。「君の思いやりには心から感謝したい。君とは個人的に、あるいは家族同士で付き合っていきたいと思う。市の委員会でも一緒にやりたい。君が委員長をしてくれれば私は委員でいいし、君が委員を望むのであれば私が委員長をやる。だが、ことビジネスに関しては君とは組まないことにするよ」

 つまり、会長は「賢い信頼」を行使したのだ。反抗的な態度をとらなかった。反感をずっと引きずったりもしなかった。かつての共同経営者であり、友人でもある人物を許し、信頼関係を修復するためにできる限りのことをした。だが、自分が経験から得た教訓を無駄にすることはなかった。全面的に信頼するわけにはいかないと感じた時点で、彼は一線を画したのである。

(『スピード・オブ・トラスト』431〜433ページより抜粋)

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『スピード・オブ・トラスト 「信頼」がスピードを上げ、コストを下げ、組織の影響力を最大化する』

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 「どんな状況であれ、信頼ほど即効性が期待できるものはないと断言できる。そして、世間の思い込みに反し、信頼は自分でなんとかできるものなのだ」――。

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