ロンドンでタクシーに乗った時、タクシーの運転手はカーナビなしで、渋滞を避けながらうまく運転していた。わたしが感心したのは、タクシーの運転手の知識ではなく、ロンドンの住所表示方法である。
ロンドンで友だちと一緒にタクシーに乗った時のこと。行き先はかなり遠かったが、タクシーの運転手はカーナビなしで、渋滞を避けながらうまく運転していた。
「よくこんな道を知っているね」と感心したら、運転手は「タクシー運転手の試験は、ロンドン中の道路を覚えることだ」と言う。だから道路の名前を必死になって覚えているらしい。
わたしが感心したのは、ロンドンのタクシーの運転手の知識ではなく、ロンドンの住所表示方法だ。住居表示には、「街区方式」と「道路方式」がある。欧米では、道路の名称と、道路に接する建物に付けた番号で場所を表示する「道路方式」を採用しているという。人は大抵道に沿って移動する。だから道路と住所がひも付いていた方が分かりやすいのだ。
イギリスと同じようにフランスやオーストラリアでも、通りの名称と沿道施設で住所を示している。学生時代、2年間シドニーで生活したが、市内の地図には、すべての通りの名前が載っていて、とても便利だった。
家族旅行でフランスの田舎町を車で走り回ったことがある。地方の小さなお城やとりでを片っ端から見た。わたしが見たかったのは、美しい大きな城ではなく、人が生活しているとりでや小さな城。しかも人口が少ない田舎では誰とも出会わない。でも道標はしっかりと表示されていたし、ミシュランの地図本1冊だけで不自由なくどこでも行けた。
日本国内では、道路、鉄道、河川などで区画された地域に付けられるブロックで住所を表示する「街区方式」が一般的だ。そもそも住民以外は道路、鉄道、河川を知らないから、なかなか目的地を特定しにくく、迷ってしまう。
山形県東根市の一部では、欧米と同じような住居表示を採用しているという。国土交通省でも、通りの名称と位置を示す番号を使って、目的地を特定できるルール作り(「通り名で道案内」参照)を始めているようだが、日本全国で取り入れられないものだろうか。
まず通りを知らなければ移動もできない。
1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。近著は「仕事ができる人のアイデアマラソン企画術」(ソニーマガジンズ)「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちら。アイデアマラソン研究所はこちら。
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