なぜ“無料”だと最高品質になり得るのか――国内ネットビジネスのフリーミアム戦略とはFREEMIUM HACKS!!(1/2 ページ)

「ロングテール理論」を世に知らしめたクリス・アンダーソン氏の新刊『フリー <無料>からお金を生みだす新戦略』。出版記念イベントで「無料ビジネス」のからくりと今後の展望について聞いてきた。

» 2009年11月24日 18時45分 公開
[杉本吏,Business Media 誠]
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 「無料なのに、ではない。無料だからこそ、コンテンツは最高品質になる」「それでもユーザーはお金を払いたがる」――。一見矛盾したようにも思える「無料ビジネス」のからくりを解き明かす新刊『フリー <無料>からお金を生みだす新戦略』が11月26日に発売される。著者は米「WIRED」元編集長で、今や広く知れ渡った「ロングテール理論」の提唱者としても知られるクリス・アンダーソン氏だ。

 この出版を記念して、ライフハッカー[日本版]編集部主催のトークイベント「FREEMIUM HACKS!!(フリーミアムを攻略せよ)」が11月20日、都内で開催された。パネリストとして登場したのは、トレンドアクセス社長で頓智・(とんちどっと)でCOOも務める佐藤僚氏、LoiLo取締役の杉山竜太郎氏、ライブドア執行役員・メディア事業部長の田端信太郎氏。モデレーターを務めたのは、『フリー』の監修・解説を担当したインフォバーンCEOの小林弘人氏だ。

左から、モデレーターを務めたインフォバーンの小林氏、頓知・の佐藤氏、LoiLoの杉山氏、ライブドアの田端氏。当日はドリンクフリー、PC用電源も無線LANも利用フリー、BGMもマーカス・ミラー「フリー」のリミックスという徹底ぶり。パネリストのサイドテーブルに置かれたドリンクの中には缶ビールのようなものが見えるが、これはもちろんキリンのノンアルコール飲料「FREE」だ

会場のスクリーンにはTwitterのハッシュタグ「#freejp2009」のタイムラインが時折映し出され、それを眺めながら会話が進められた

「セカイカメラ」のフリーミアム、企業向けは?

頓知・の佐藤僚氏

 頓知・の佐藤氏が紹介したのは、開発するiPhoneアプリ「セカイカメラ」の“フリーミアム戦略”。スペインの革製品ブランド「ロエベ」とのコラボレーションや、岐阜県高山市の取り組みを例に挙げ、無料でアプリを提供することによって、ユーザー主導で盛り上がっていくAR(拡張現実)の世界を説明した。

 気になるビジネスモデルについては、「アプリをローンチして2カ月、これからどう稼いでいくか悩んでいる」(佐藤氏)。しかし、まずは「BtoB向け」にビジネスを展開していくことを考えているという。「(店舗やイベント会場など)自分たちの空間をきちんと管理したい企業に向けて、高機能版を有償で提供する」というやり方だ。

 「エアタグは売らないの?」(小林氏)という質問には、「その可能性もあるけど、マーケットのサイズが限定的だし、この(iPhoneで見られる)狭い空間でどんなディスプレイ広告ができるのか……。そこが悩み」との答え。「BtoCでお金を取るとすると、プレミアムなコンテンツ。セカイカメラの中でペットを飼えるとか、そういうオンラインゲームのような世界かな」

(左)恋愛ゲーム「ラブプラス」の人気キャラ「姉ヶ崎寧々」のテキストタグが延々と連なる秋葉原駅周辺。(右)エアタグが浮遊する高山市商店街の店頭。「エアタグをiPhoneでタップしようとしてね、全然反応しないから『あれっ、バグか!?』と思ったら、リアルの看板だった(笑)。区別付かないですよねコレ」(佐藤氏)

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