立場が変わっても一緒に仕事ができるか――退職時や異動時のマナーを考えるアラフォー起業家の“継続拡大”人脈術

少しご無沙汰していた人でも、退職や異動のあいさつをきっかけに、また連絡とってみたいと思って、お目にかかることがある。そしてそこから何か新たなコラボレーションが生まれることもある。転職や異動のあいさつはよいきっかけになるのだ。

» 2009年11月04日 14時55分 公開
[加藤恭子,Business Media 誠]

 転職によって人間関係が広がる例を以前に書いた。その時は自分自身が転職するケースだったが、今回は「周りの人」の転職を考えてみたい。その後の人脈や、いろいろな辞め方、異動の実例をご紹介する。

 少しご無沙汰していた人でも、退職や異動のあいさつをきっかけに、また連絡とってみたいと思って、お目にかかることがある。そしてそこから何か新たなコラボレーションが生まれることもある。つまり、少し疎遠になっていて、連絡のきっかけがつかめない人がいた場合、その人からの転職や異動のあいさつはよいきっかけになるのだ。連絡をいただいたら、相手が自分を記憶しているということだし、移動や退職を伝えたいと思ってくれているというわけである。仲良くしたい相手であれば、このタイミングできちんと返信をしておきたい。

 転職相談にのったりしていたのに、突然音沙汰がなくなって消えてしまう人もいる。多分転職後に忙しくなってしまい、連絡ができなかったのだと思うが、数カ月たって「今の会社、イマイチなんでどこかないですかね?」と相談されても、もうアドバイスをする気持ちが失せてしまっている。これは転職後に「○○に転職しました」とメールを1本入れていれば、防げることだと思う。凝った文面である必要もないし、メールでいいから、どんなに忙しくてもあいさつは返しておきたい。タイミングを逃してしまった場合、遅れても気づいたときに対処するというのも、しないより全然よいと思う。

 ちなみに退職時の対応は個人差が大きい。もう5年以上前の話だが、社用車を返さない人、ノートPCを床に叩きつけて「手元が狂って落としてしまった」と大事な情報を引き継がない人、「嫌な会社だったから、会社のアドレスでメルマガを数十購読手続きをして退職したんだ」と吹聴する人――。どう考えても「あの人に会いたいなあ」「あの人とコラボレーションできないだろうか」「今、うちの会社で営業部長を募集してるんだけど、過去に一緒に働いた人の中でふさわしい人はいないだろうか」と考えたときに彼らの顔は浮かんでこない。確実に問題外だ。これは損をする辞め方だと思う。

 筆者が知っている記者でも、両極端なことがある。海外支局に転勤となったAさん。なんと昼夜合わせて80件の送別会が開催された。また移動先の現地からも丁寧なメールが送られてきた。一方、ほかの分野の担当に変わったBさん。異動の連絡もなく、送別会が開催されることもなく、いつの間にか消えていた(単にBさんに嫌われていただけなのでは? と思われた読者もいるかもしれないが、筆者のほか複数の広報担当者やPR会社の人たちもBさんの異動を知らなかった。なので、筆者が特別に嫌われていたわけではなかったと思われる)。

 Aさんは企業の広報担当やPR会社の人を「情報を持ってきてくれる人」と尊重していた様子だった。Bさんは「強引に売り込んでくる」と思ったのか、はたからみてもPR会社や企業の広報担当に冷たい態度を取っていた。Bさんは「長期にわたる人脈」という観点で「損」をしているのではないかと感じた。もしかしたらネタ元も限られてしまい、記事を書く場合も不利だったということはないだろうか。ちなみにBさんの前の担当者も、その前の担当者も、そしてその又前の担当者も、異動のご案内メールはPR会社や企業の広報担当者に送っていたし、丁寧な人(異動後も引き続き情報交換をさせていただいている)の場合は、わざわざ後任の方をご紹介いただいた。

 無理して「いい人」になる必要はないと思うのだが、仕事のからむ場で、最低限の相手への思いやりとマナーは守っていきたいものだと思う。

著者紹介:加藤恭子(かとう・きょうこ)

 IT誌の記者・編集者を経て、米国ナスダック上場IT企業の日本法人にてマーケティング・広報の責任者を歴任。外資系企業ならではの本社へのリポートの方法や、離れた地域にいる国籍の違う同僚とのコミュニケーションを通じて、効率よく実施する仕事のノウハウを高める。現在は、その経験を生かし、IT企業・組込み系システム企業のマーケティング・PR(広報)のコンサルティングを行うビーコミの代表取締役として活動。日本PR協会認定PRプランナー。

 日経BP社、翔泳社、アイティメディア、ダイヤモンド社、アスキーなどで連載や記事も寄稿。インターネットを活用したコミュニケーションも研究しており、複数の学会などでブログコミュニケーションやネットPRに関する発表をしているほか、「CGMマーケティング」(伊地知晋一著、ソフトバンククリエイティブ刊)の編集協力も務めた。青山学院大学国際政治経済学研究科修士課程修了。現在は某大学院の博士課程に在籍し、引き続きコミュニケーションを勉強中。


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