私は人を雇う際、三つの条件で判断する名言で読む「リーダーの必読書」

ローマで開催されたテニスの2005年イタリア・マスターズ・トーナメントの第三ラウンドで、プロテニスプレーヤーのアンディ・ロディックはスペインのフェルナンド・ベルダスコと対戦した。ロディックの勝利が決したと思われた瞬間、コート上で信じられないことが起こった。

» 2009年10月22日 15時37分 公開
[フランクリン・コヴィー・ジャパン,Business Media 誠]

 私は人を雇う際、三つの条件で判断する。第一が人間としての誠実さ、第二が知性、そして第三が行動力だ。ただし、第一の条件が欠けると、他の二つはその人を滅ぼす凶器と化す。

――ウォーレン・バフェット(バークシャー・ハサウェイ社CEO)

 ローマで開催されたテニスの2005年イタリア・マスターズ・トーナメントの第三ラウンドで、プロテニスプレーヤーのアンディ・ロディックはスペインのフェルナンド・ベルダスコと対戦した。試合はロディックのマッチ・ポイントを迎えた。ベルダスコの放ったセカンド・サーブに線審がアウトの判定をすると、ロディックに対する観客の祝福が始まった。ベルダスコは試合が終わったと思い、ロディックと握手しにネットへと歩み寄った。

 ところが、ロディックはこのポイントを受け入れなかった。今のはインだったと言い、クレイコートにかすかに残った跡を見るよう主審に求めた。その跡は、ボールがラインを割らず、ライン上だったことを示していた。主審は慌てて判定を覆し、ロディックの主張どおりにポイントをベルダスコに与えた。

 これには誰もが驚いた。本来、プレーヤーの申告ではなく審判の判定が絶対とされる競技で、ロディックは自分に不利な申告をし、結局その試合を落とすこととなった。

 ロディックはその日の試合は負けてしまったが、はるかに大きなものを得た。人々の信頼を手にしたのだ。彼が見せた誠実さは、彼にどのように信頼性をもたらしただろうか。こんな見方をしてみよう。

 仮に次の機会にロディックが判定に抗議したら、審判団はどのような対応をするだろうか。審判は恐らく、最大の敬意をもって対処するだろう。彼の評判が広まり、それが彼に信頼性をもたらすはずだ。

 また、ロディックは内心どう思っただろうか。ボールが本当はコートに入っていたことを知りながら、勝利の判定をそのまま受け入れていたら、彼はどういう気持ちになっただろう。

 あの日のロディックのコート上での態度は、自分の利益を犠牲にしてでも誠実さを発揮するという意味でまさに象徴的な行動であり、私は「ロディック・チョイス」と名付けている。誠実さ、信頼性、そして他者と自分自身の両方に対する信頼には明確な関係があることが分かるだろう。

(『スピード・オブ・トラスト』86〜87ページより抜粋)

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