「この仕事、本当にやるべき?」が分かる――タスク“処理前”チェックリスト最強フレームワーカーへの道

「時間をもっと有効に使いたい」「スケジュールを立てても思い通りにいかない」という人のために前回、すき間アクションの極意をお伝えした。今回は、そもそもやるべきタスク選び抜くためのチェックリストをご紹介しよう。

» 2009年10月19日 17時00分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]

 「時間をもっと有効に使いたい」「スケジュールを立てても思い通りにいかない」というナレッジワーカーの永遠の悩みに少しでも答えるべく、先週は「仕事に優先順位はつけない――『5分間すき間アクション』か『90分間じっくりアクション』か」をご紹介した。

 念のため、前回の内容を軽くまとめておくと、以下のようなポイントに集約できる。

  • 重要度と緊急度だけでは仕事の優先順位は決めることができない。
  • 優先度の低い仕事はあらかじめ「取り除き」、仕事の優先順位はあえて、つけない。
  • 5分でできる「すきまアクション」のリストは気分やシチュエーションで断片的に処理してOK!
  • 「15分×n<最大90分」の「じっくりアクション」は1日のスケジュールに組み込む。
  • 「すきまアクション」用と「じっくりアクション」用の作業環境をしっかり整える

 私の周りには「仕事は優先順位をつけよ」というのが定説となっている。もちろん、その意図するところは間違いではないが、「そもそも、優先順位の低い仕事というのが存在してよいのか?」という気がする昨今だ。

 なんせ、「やらないよりやったほうがよい事」はごまんと存在する。それらに目を向けると際限がない。それでなくても、数年前に比べて多くのナレッジワーカーは、仕事の電子化グローバル化で恐ろしく作業量が増えている。だから、これ以上「やらないよりやったほうがよい事」を増やしてはいけない。断腸の想いで「やらない!!」と自分にも他人にも宣言することが大事だ。「やらない!!」を明確にすることで、「やるべきこと」は責任もって必ず達成する方が結果的にも信頼されるだろう。

 10のやるべき事のうち「自分は責任を持って3つだけやります。しかし、この3つで大きな成果を残します」と宣言して最終的に非常に大きな成果を残す人と、「全部やります!」と宣言したにも関わらず、完了していないタスクが散見され、さらに悪いことに完了した仕事の成果も粗が目立つ人と、どっちが信頼できるだろうか? これは個人も会社も同じだ。

 そこで、今回は私も使っている「タスクを処理する前のチェックリスト」を紹介しよう。多少、「GTD」と類似する部分もあるが、もっとシンプルで多くの人にとっては使いやすいと思う。このチェックリストで、Noとなったものは見直してからでないとリストに入れないことにしている。

タスクを処理する前のチェックリスト
チェック項目 Noの場合の見直し例
1 自分にとって本当に大切なことを実現するためのタスクか? 「やらない勇気」
2 どこまでやれば完了か? 期限と目標レベルは具体的か? 「具体化」と「定量化」
3 90分以内に完了できる大きさか? 最小単位が90分以下になるまで「細分化」
4 一度切りのタスクか? 今後、再現性がないと言えるか? 「フォーマット&テンプレート化」
5 本当に自分にしかできないタスクか?  自分が一番成果が出せるか? 「プロ任せとチームワーク」

1:自分にとって本当に大切なことを実現するためのタスクか?

 これはタスクの目的に関する一番重要な問いかけである。「本当に大切なこと」は何だろうか? 家族と幸せに過ごす、会社が大きくなって従業員も豊かになる、自分の作ったサービスで世の中に貢献する――などいろんな「大切なこと」があるだろう。

 ここでぜひ考えたいのは「そのタスクは将来、大切なことを実現するために本当に必要なことなのか?」という自分自身への質問だ。どんなに簡単な仕事であっても、この問いかけにNoであれば本来やるべきではない。逆にYesであれば、どんなに些細(ささい)な業務であっても必ずやり遂げなければならない。間接的、直接的、あるいは短期に、長期に、そのタスクが「大切なこと」につながっているかどうかをチェックしたい。

2:どこまでやれば完了か、期限と目標レベルは具体的か?

 これはあいまいなタスクを管理リストに入れないということだ。タスクとプロジェクトを混同している人は少なくない。タスクはなるべく具体的に、完了すべき数量と期限を明記すべきだ。

 例えば期限は設定したとしても、「競合調査を行う」といったあいまいな表現はなるべく避けたい。「5社以上の競合との比較表を作成」「競合とバッティングした営業マン5人以上にヒアリングを行う」「競合A社とB社の営業資料を取り寄せる」など、なるべく具体的にすべきだ。そうでないと、タスクを処理する時に「さて、どこから手をつけようか……」と途方にくれてしまう。タスクを処理するときには、手順はもう決まっていてアクションに集中できるようにすべきだ。

3:90分以内に完了できる大きさか?

 これは、長すぎるタスクは必ず細分化が必要ということだ。前回も90分以上の業務は効率がひどく低下するということを書いた。デスクワークで処理する「じっくりタスク」は効率を重視すると、15分単位×n分(最大でも90分以内)という枠に収めるべきだ。そうでなければ、事前に小さなかたまりにブロック分けする必要がある。

4:一度切りのタスクか? 今後、再現性がないと言えるか?

 これは意外に手をつけていない人が多い。2〜3回であれば、またゼロから始めても所要時間が変わらないと信じている人がいる。タスクに再現性があれば、必ず次回のためにほんの少しの時間を費やすことが大きな時間短縮につながる。

 具体的には、書類のテンプレート化、抜け漏れ防止のためのチェックリストなどが有効だ。また、PCやアプリケーションの操作であればショートカットを覚える、将来の自分に宛ててメモをメールで送るなども良いだろう。さらに、日常的に繰り返すタスクであれば、将来の時間を節約するために、たっぷり時間をとって事前にスキルを磨くのがいい。

5:本当に自分にしかできないタスクか? 自分が一番成果が出せるか?

 これも意外と意識的にやっていない人が多い。これは他力本願でいいということではなく、他人の力を巻き込むことを意味する。1人の力はたかが知れている。単独の力よりも組織力を使ったほうが最終的な成果は大きくなる。

 これが苦手な人は、ある意味、器用な人が多い。なまじっかデキるものだから自分で仕事を抱えこんでしまう。基本的には能力は高い人だと完了できるのだが、オーバーワークになりがちだ。「自分でできるからやる」のではなく、「自分がそれにかかる時間をほかのことに使ったほうが全体として成果が大きくなるのではないか?」という俯瞰(ふかん)的な見方が必要である。つまり「チームとしての成果」に目を向けるというわけだ。

 それに「餅は餅屋」という言葉もある。専門的なことはそれが得意な人に任せるほうが圧倒的に早い。専門的な知識をまんべんなく吸収するのはどだい無理な話だし、「この分野はこの人に聞け!」というコンタクトリストを充実させたほうがいい。

 他人を巻き込む仕事は、コミュニケーションが重要だ。要件が明確でないと他人は動きづらい。「誰に、何月何日までに完了させるべき仕事を、何月何日に依頼したか? それは何をどれだけやる仕事なのか? そして、どのタイミングで報告をもらうのか?」といった内容をクリアにする。

 そして、完了期限や途中報告の日程などをお互いに握って、それを自分のタスク管理に入れておけば進捗確認も万全だ。


 上記チェックリストですべてOKが出て初めて、そのタスクを自分がやるべきこととしてリストアップできるのだ。タスク管理に私はGmail Tasksを利用しているが、ツールは自分に合ったものを使えばいい(Gmail Tasksについては、「面倒くさがり屋がToDo管理10の失敗の果てにたどりついた「Gmail Tasks」への道」参照)。

 今回紹介したチェックリストは、慣れるまでタスク管理のヘッダ部、あるいは手帳やメモ帳の目立つところに付せんで貼るなどして、習慣化させることをお勧めしたい。習慣化すれば、常にタスクをリストに入れる前に「これは……か?」とセルフチェックできるようになるだろう。

 時間は貴重な資源だ。資源を“枯渇”させないためにも、本当に有意義なことに自分の時間を費やす努力を怠らないようにしたいものである。

著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)

 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

Webサイト: www.showcase-tv.com


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