異動、転勤、転職、起業――変化を成長につなげるための2つのヒント研修に行ってこい!

上司から「人材育成計画を作ってくれ」と頼まれたらどうしますか。そんな急な依頼や相談にも応えられるよう、異動、転勤、転職、起業といったライフイベントを踏まえて、人材育成やキャリアについて考えるヒントをお伝えします。

» 2009年10月15日 18時53分 公開
[原田由美子,Business Media 誠]

 上司から急に、「人材育成計画を作ってくれ」と頼まれたらどうしますか。または、部下や後輩から「これからのキャリアについて相談に乗ってほしい」と言われたらどうしますか。今回は、そんな急な依頼や相談にも応えられるよう、社会人生活全体を踏まえて人材育成やキャリアについて考えるヒントをお伝えします。

 「ライフイベント」という言葉をご存知でしょうか。人生において、それまでの生活から大きな変化が生じる出来事を指します。私生活におけるライフイベントとしては、入学、卒業、受験、留学就職結婚、出産、育児、住宅購入、介護――など。ビジネスでは、異動、転勤、海外赴任、新規事業の立ち上げ、事業の統廃合、転職起業なども生活に大きな影響がある出来事と言えます。

 こうした「ライフイベント」を一般的な平均年齢値に基づきまとめてみたのが図1。こうして全体を見渡してみると、そんなに意識せずに日々を送っていても、いろいろなイベントがあることが分かります。

 私生活のライフイベントは多くの人がイメージしやすい一方、ビジネスにおけるライフイベントは、おかれた環境によって大きな違いが出てきます。特に現代社会では、安定成長期で終身雇用が前提となっていた時代と比べて、キャリアを考えることや人材育成を計画的に行うことが難しくなっていると言えます。

グローバルスタンダードの「カッツ曲線」

 そのような時に参考にしたい考え方を図2にまとめました。

 マネジャーに求められる能力の研究したハーバード大学のロバート・L・カッツ教授が発表した「カッツ曲線」です。カッツ教授は、マネジメントの仕事を、

  • Top=経営者の仕事
  • Middle=管理者の仕事
  • Lower=監督者の仕事

 と3層に分類しました。さらに、マネジメントを行う上で必要な能力を、

  • テクニカル=業務遂行能力
  • ヒューマン=人間関係能力
  • コンセプチュアル=概念化能力

 に分類し、Top、Middle、Lowerの3層に必要な能力の配分を可視化しました。

 これによると、現場に近い層(LowerやMiddleの一部)に必要な能力は、業務遂行に必要な専門的な知識や技術になります。反対にTopに近い層では、専門的な知識や技術よりも周りで起こる事柄や状況を客観的、構造的に捉え、事柄や問題の本質を捉えた上で何らかの判断を下す――概念化能力が必要となることを伝えています。

 このような考え方は、世界のビジネスリーダーが一度は目にしたことがある考え方です。グローバルスタンダードとして知っておくといいでしょう。なお「カッツ曲線」は、1982年に書籍『スキル・アプローチによる優秀な管理者への道』で国内に紹介されました。この本に書かれていることは、30年ほど前はマネジメント職がやるべきだった仕事ですが、今は入社数年の社員に要求されているのかもしれませんね。

国内では「社会人基礎力」

 国内では、2006年2月に経済産業省「社会人基礎力」という考え方を示しました。経済活動を担う人材の確保・育成の観点から、職場で求められる能力を明確化し、産学連携による育成や評価の在り方をまとめたものです。この社会人基礎力が「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3要素になります。

 人材育成の現場を見ていると、確かにこの3要素は30代以下の世代で弱まっています。人材育成のご担当の方に、若手〜中堅社員の育成の課題をお聞きすると、

  • 自分から意見を言ってこない
  • 考える時間が長く、なかなか行動しない
  • 自分の時間を大事にする傾向がある

 ――とのこと。このほか「周囲とのコミュニケーションが少ない」という意見も多いです。

 カッツ曲線や社会人基礎力とともに注目したいのは、セルフマネジメントの考え方。環境変化が著しく、予想していなかったことが頻発する時代です。そうした時に、変化に強いマインドというのは、何よりも重要になってきます。

 大きな変化に見舞われても、早めに気持ちを切り替えて、前向きに取り組む考え方や行動が出来る人は、結果的にその変化をチャンスに転嫁できるからです。余談ですが、筆者の会社(Six Stars)でも「セルフリーダーシップ」という研修プログラムが大変人気です。変化に強いマインドと行動習慣作りを目指す研修ですが、企業での導入も多いので、こうした基礎的な要素の育成が重要であることを感じています。

 これから先の人材育成には、“変化に強い”ベースを作った上で、必要な能力を磨けるような情報や場の提供が必要です。日清食品のサバイバル研修などの情報も参考になりますね。

 まずは急な依頼や相談を受けた時、ご紹介したような考え方を参考にしてみてください。


 今回は一般的な人材の育成についてお伝えしました。次回は、企業ごとの強みを際立たせるための人材育成についてお伝えします。


著者紹介:原田由美子(はらだ・ゆみこ)

 大手生命保険会社、人材育成コンサルティング会社の仕事を通じ、組織におけるリーダー育成力(中堅層 30代〜40代)が低下しているという問題意識から、2006年Six Stars Consultingを設立、代表取締役に就任。現在と将来のリーダーを育成するための、企業内研修の体系構築、プログラム開発から運営までを提供する。

 社名であるSix Starsは、仕事をする上での信条として、サービスの最高品質5つ星を越える=お客様の期待を越える仕事をし続けようとの想いから名付けた。リーダーを育成することで、組織力が強化され、好循環が生まれるような仕組みを含めた提案が評価されている。


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