仕事に優先順位はつけない――「5分間すきまアクション」か「90分間じっくりアクション」か最強フレームワーカーへの道

誰しもが時間管理に頭を悩ませている。やるべきことをすべてやっていたら「時間がない」からだ。ではどうやって限られた時間を有効活用するか。答えは「すきまアクション」と「じっくりアクション」の“二刀流”なのだ。

» 2009年10月14日 12時50分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]
時間管理のマトリックス。重要度と緊急度のマトリックスにやるべきことをマッピングし、第2領域をいかに日常的なタスクに組み入れるかがポイントなのだが……

 拙著『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』で、一番役に立ちそうだと思うフレームワークを聞くと「時間管理のマトリックスかな……」と答える人がとても多い。ちまたにも時間を有効に使うテクニック本や早朝の効果に書かれた本が山ほど出回っている。「どうしたら、もっと時間を有効に使えるのだろうか?」という疑問に対する回答は、ビジネスパーソンが探し求めている切実な問題のようだ。

 「時間管理のマトリックス」は、やるべきことを「重要度」と「緊急度」のマトリックスに整理して、普段なおざりになってしまう「緊急ではないが、重要なアクション」に目を向けましょう、というフレームワークである。

 ただし、このフレームワークだけで実際の日常的な行動管理ができるわけではない。また分類したからといって、どの順番にやるべきかという優先順位のつけ方はよく分からない。「私はどの仕事から手をつければ良いでしょうか? 優先順位のつけ方を教えてほしい」とは、経験年数の浅いスタッフからよく聞かれる質問である。ほとんどの人は「物事には優先順位をつけなければならない」という「固定観念」にとらわれているようだ。しかし、私は優先順位をつけなければ仕事ができないのはナンセンスだと思う。私なら、

 「仕事の優先順位はあえて、つけない」

 その理由と具体的な行動管理の方法を解説しよう。

家族か仕事か、選べますか?

 「家族と過ごす時間を優先しますか? それとも仕事を優先しますか?」

 もし、このような質問を受けて「私は常に家族といる時間を優先します。だから仕事の時間は減らしてください」「私は常に仕事を優先しますので、家族には我慢してもらっています」という人がいたとしたら、それは大きな間違いであろう。

 家族との時間のために仕事量を減らせば、いつか職を失うかもしれない。職を失えば経済的にギスギスし、家族との関係もうまくいかないだろう。一方、仕事ばかりで家族をないがしろにすれば、離婚したり、子供が非行に走ったりすることもあるだろう。つまり、物事に優先順位をつけることが重要なのではなく、「やるべきことは、すべてやる」というのが正解なのだ。

 しかし、ここで疑問が湧いてくる。「そんな時間、ないっすよ!」

 もちろん、やれれば良い、やった方がやらないよりマシということは世の中、掃いて捨てるほどある。それをいちいち片付けていたら、この「限られた時間という資源」をむやみに消費してしまうだけである。だからこそ、「どれから手をつけるか」ではなく「どれをやらないか」を徹底することが、一番の幸せな道となるはずだ。

「すきま」か「じっくり」か

 私はやるべきと決めたタスクは、2つのタイプがあると思う。

やるべきタスク
すきまアクション 5分以内に完了できる作業レベルのもので、あまり思考力や集中力を問わないもの。1つのアクションがほかに影響しづらく、断片的な処理で問題ないタスク。
じっくりアクション 15分以上かかるクリエイティブな業務(つまり、頭に汗をかかなければならない仕事)で、集中力が必要なもの。影響範囲が広く、ほかのタスクとの連携も図らなければならないタスク。継続的に行うのは最大90分までとする。

 「すきまアクション」で処理できる量は計り知れない。5分で何ができるかといえば、

  • 未読メールを閲覧し、そのうちのいくつかに簡単な返信をする
  • ToDoリストを見直し、更新する
  • 関係者に近日中に行われるタスクについてリマインドする
  • 新商品のレビューをしてもらえそうな顧客にアポをとる
  • ビジネス書の1章分を読む
  • 提案書の目次を作る
  • 企画のアイデアをマインドマップにする

 ……などなど、5分でできることはとても多い。断片的な作業なので、気分が乗らないときにも気軽にできるタスクだし、多くの作業は「移動中」「ちょっとした待ち時間」に処理できるのが特徴だ。

 何度も言っているがやるべきタスクに優先順位は不要である。基本的に1日以内に完了させる処理であることには変わりないし、その時の気分や処理する場所など「TPOに応じて、早く済ませられそうなものから手をつける」ということが重要だ。

筆者の時間割イメージ。「じっくりアクション」は事前にスケジュールにいれ、「すきまアクション」はいつでも好きなところから実行できるようにリスト化しておく

 また、こうした「すきまアクション」には移動中に処理することが多くなるため、携帯すべきデバイスもしっかり整備しておく必要がある。私自身も必ずかばんに以下の3点セットを携行している。

  • iPhone(Gmail、Gmail Tasks、スケジューラなど)
  • ビジネス書(分厚い本なら1冊、新書なら2冊)
  • 文庫本サイズの白紙メモと消せるボールペン
 Gmail Tasksを使うに至った背景や、文庫本サイズのメモと消せるボールペンについては、バックナンバー「面倒くさがり屋がToDo管理10の失敗の果てにたどりついた『Gmail Tasks』への道」「消せるボールペンと文庫本ノートを使う5つの理由」を参照。

 一方、「じっくりアクション」はどのように取り組むべきか。

 まずは、やるべきことを見直したときに、それが「具体的」であるかどうかを5W2Hでチェックしよう。「いつまでどのくらいの時間をかけて」「誰が、誰と、誰に対して」「何のために」「どこで」「何を」「どのような手順で」行うかが明確になっているかどうかをチェックするのだ。そうなっていない場合は、改めてすべてを具体化することから始めなければならない。「締め切り」のないアクションや具体的にやるべき「量」が明示されていないものはタスクリストに入れてはいけない。

 具体化している場合は、それを「じっくりアクション」で処理できる大きさに「細分化」する。人の集中力は15分が限界と言われる。同時通訳者はどんなプロフェッショナルであっても、1時間を1人で担当することはなく、15分おきに交代するという。どんなエキスパートでも15分おきにブレイクを入れないとミスが発生してしまうというわけだ。

 また極度の集中力を必要としない事であっても、1つの事を大きく生産性を落とさずやれるのはせいぜい90分まで、とも言われる。学校の授業やセミナー映画の長さなどもこれに近い。90分を超える会議などは低い生産性の典型的な例として排除しなければいけない。

 つまり、「じっくりアクション」は「最大でも90分までのタスクとし、15分を1枠と考えてn枠単位で処理していく」というのが良いだろう。60分程度で行う作業や会合であっても、15分を目安にひと息入れる、話題を替えるなどすることが、生産性を高めるポイントだ。

 「じっくりアクション」はオフィスやミーティングルームにおいて処理するので、1日のスケジュールを組むときには「会社にいてじっくりアクションを処理する時間」と「移動先ですきまアクションを処理する時間」に分けておくことが大事なのである。

 引き続き次回は、タスクを効率的に処理するために私が普段使っている「タスクチェックリスト」をご紹介しよう。

著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)

 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

Webサイト: www.showcase-tv.com


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