「内製化でコストダウン」にひそむ罠――新人研修で気を付けたいポイントイマドキ新人教育の法則

10月の総務特集は「新人教育」がテーマ。コスト削減が盛んに叫ばれている今、最近では研修全般に内製化の動きも見られる。しかし「コストダウンのことだけを考えて研修を内製化するのは危険だ」という。本特集でイマドキの新人研修の流れを追う。

» 2009年10月01日 20時30分 公開
[塙恵子,Business Media 誠]

 8月に続き10月の総務特集も「研修」がテーマ。内定式などで来年度の新人の顔もそろい、そろそろ研修の準備も始めなければならないころ。今回は「新人教育」について取り上げていく。

コストダウンのことだけを考える内製化は危険

 いわゆるリーマンショック以降、コスト削減が叫ばれている。コストダウンのために講師を社内で調達するなど、研修を内製化する企業も増えているのではないだろうか。

 組織開発コンサルティングのNGKが実施した人材育成担当者を対象とした調査(有効回答数63社)によると、内製化を支援する研修会社を選択している企業の割合は36%。また、研修会社と内製化を考えた研修企画を考えている、内製化した研修プログラムを定期的に見直していると答えた企業は61%と高い割合になっている。しかも社内トレーナー候補が存在すると答えた企業は半数を超えている。

photo (出典:NGK)

 「コストダウンのことだけを考えて研修を内製化するのは危険だ」というのはNGKの望月明人取締役。単に内部講師をつけてみたり、eラーニングを導入してみたりするのではなく、内製化できるところと、アウトソーシングすべきところはきちんと見極めるべきだと望月氏は説明する。

 先ほどの調査によれば、講座の評価基準は“明確”になっていると答えた会社は26%と低い数値だ。また、社内トレーナーのノウハウ、社内トレーナーの評価の仕組みなど、社内トレーナーを展開していく上での取り組みを行っている企業は30%以下だった。つまり全体的に内製化に関する関心は高く、内製化を意識した研修企画はしているものの、社内研修は「研修が成功したかどうか」の評価基準があいまいである場合が多いようだ。

photo (出典:NGK)

OJTでの教育も重要

 新人研修と同時に大事なのが「OJT(On the Job Training)」だ。しかし望月氏によればOJTでの教育が減ってきているという。「パッケージ研修だけでなく、5年10年と継続できるような職場内の教育や勉強会が必要。新人研修でコーチング研修をする会社があると聞くけど、新人研修ではティーチングがあってはじめてコーチングです。新人が何に関心があって、何に困っているのか。OJTによるティーチングで彼らの役割の議論をしたほうがいい」(望月氏)

 コーチングとは、相手から答えを引き出し、自己決定や自己解決を支持することであり、一方ティーチングとは、指示や助言によって相手に答えを与えること。OJTの教育を進めるには、OJTリーダーの教育も重要になるだろう。

photo 人材育成の効果を社内で定着させる上での阻害要因は?(出典:NGK)

 NGKのクライアントや取引企業に、人材育成の効果を社内で定着させる上での阻害要因を聞いたところ(有効回答数58社)、「研修は研修で実践とは違う」「職場の上長のサポートがない」「メンバーまかせ」がほぼ同数で上位となった。自由回答としては、「OJTの体制が弱い」(職場の年次構成の問題/上司自身がOJTの行い方について訓練、経験が不足)、「社内に定着させるまで、研修内容の充実が図れていない」「技術トレーニングは実践的で定着しているが、管理職やリーダー層が育成されていない」といった声が見られ、やはり特にOJTに関する悩みが多いようだ。


 これらの悩みを踏まえ、本特集では新人研修の内製化やOJT研修にはなにが必要なのかについても、次回以降で探っていきたいと思う。

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