「学習曲線」――人前が“苦手”から“楽しい”に変わる法則研修に行ってこい!

メンバーからリーダーに成長する過程で、必ず人前で話すスキルを磨かなければなりません。今回は「人前で話すのは苦手」という人に、人前で話す機会をチャンスと思えるようなヒントをお伝えしましょう。

» 2009年08月31日 15時40分 公開
[原田由美子,Business Media 誠]

 メンバーからリーダーに成長する過程で、必ず磨かなければならないスキルがあります。それは「人前で話すスキル」です。

 リーダーになるということは、より多くの人に、自分(組織)の仕事(成し遂げたいこと)を理解してもらい、その仕事に協力してもらうための働きかけをしていかなければなりません。だから、人前で話す機会が増えてくるのです。

 その一方で、研修で自己紹介をお願いすると、「人前で話すのは苦手」という人が非常に多く見られます。あなたはいかがでしょうか?

 今回はそんな人に、「苦手」という意識を脇に置いて、人前で話す機会を「チャンス!」と思って取り組んでもらえるようなヒントをお伝えしていきます。

話す機会を区別する

 人前で話す機会は多種多様な場面に分類できます。そこで今回は、業務場面に多い3つの役割をベースに分類していきます。さらにそれを、目的とそれに合わせて必要なスキルとして“ポイント”に整理しました。次の表をご覧ください。

役割 目的 ポイント
プレゼンテーター 聞き手に対し、何らかの意思決定と行動を求める ・信頼感を与える
・悩みや課題を確認する
・解決策を効果的に印象付ける
・意思決定と行動を促す
勉強会(研修会)講師 聞き手に対し、知識や技術を指導する ・信頼感を与える
・学びたい気持ちを醸成する
・知識や技術を教える
・習得度合いを確認する
会議やプロジェクトの推進役 参加者が発言しやすい場をつくり、話し合いが進めやすいように場を促進する ・雰囲気づくり
・意見を引き出す
・意見をまとめる
・合意をとる
・今後の段取りを確認する

 さて、話す機会をすべて同質のものとして捉えてしまうと、何からトレーニングしてよいか分からなくなります。しかし、自分の業務に多い役割や、自分ができていることと、できていないことを区別すると、場面ごとに必要な知識や技術を集中して獲得できます。

“人前で話すのが苦手”の本当の理由は?

 このように、自分に求められている役割を踏まえて考えていくと、そのために何をすべきかアプローチしやすくなります。ここまでお読みいただいて、「なるほど!」と、思って行動に移せる人は、是非自分に必要な知識やスキルを磨いていってください。

 しかし、ここまで読んでもまだ何となくモヤモヤとしている人、次のようなことがモヤモヤの原因ではないでしょうか?

 「苦手」と思っている多くの方に共通するのは、プレゼンテーションや勉強会の講師として、そもそも「人前に立つ自信がない」ということです。

学習曲線を知っておく

 笑顔で感じよく、説得力ある話し方で、自信に満ちてあなたの前に立って話しているプロの講師のデビュー当時を想像したことがあるでしょうか?

 人前であがって頭が真っ白になる、手や足が震える、滝のように汗が流れるなど、今活躍している講師でもほとんどの人が、一度はこのような経験をしています。また、話し慣れている講師でも、研修の直前は「緊張する」と言います。

 さらに個別に話を聞いてみると、「話すのが苦手だった」という人がものすごく多いのです。

 しかし、「人の役に立ちたい」「自分の経験が生かされるなら」という思いが勝るためか、最初は恥をかきながらも、人に隠れた部分で努力を重ね人前に立ち続けることで、ある時次のような瞬間を迎えます。

 「人前で話すのが楽しいかも」と、思える瞬間です。この瞬間が訪れると、講師として輝きが増し、さらに人前に立つことが楽しめるようになります。

 このようなタイミングが訪れるのには、ある法則が関係します。「学習曲線」という法則です(参照:Wikipedia)。

 学習したことが、ある時を境に急にできるようになることはないでしょうか? PCも、最初はキーボードの位置を見ながらしか操作できなかったかもしれません。しかし、今ではいかがでしょうか。気が付いたら誰よりも早く入力できるようになっていたりしていませんか?

 それと同じことが、“人前で話す”ということにも起こるのです。

 講師に「どうしたら人前で話せるようになりますか?」といった質問をすると、「場数だよ」という人が多いのも、そうした背景があるからです。

 まずは、物事を習得するには、学習曲線という、ある一定以上の時間数をかけることが大事であることを知っておいてください。

少ない機会を生かすには?

 とはいえ、プロの講師でない限り毎日人前で話をする機会なんて、ほとんどありません。身につけたくてもなかなか練習する機会がないというのが実情でしょう。

 それでは、急に人前で話す必要が出てきた時だけでなく、日常でも大事なことを日頃から意識してトレーニングしておくというのはいかがでしょうか?

 日常でも人前で話す際でも、両方に必要なのは、“信頼できる印象”です。“信頼できる印象”をトレーニングするためには、大きく分けて考えると、見える部分と見えない部分に分かれます。

信頼できる印象のトレーニング
見える部分 身だしなみ、姿勢、声の大小・高低、アイコンタクト、思いと言動の一致性 など
見えない部分 人間性(どのような思いを持って仕事に取り組んでいるか、どのように自分を生かしていきたいか など)、証拠(過去の実績、現在の取り組み など)

 このように分類した後で、まずは、見えない部分に注目してください。すぐにイメージができるることと、そうでないこととあるかもしれませんが、それはそれで構いません。イメージが出来た段階で、手帳など、毎日確認できるところに書き記しておくことです。

 そして、見える部分に移ります。自分自身を表現する上で最適な、身だしなみや姿勢、声の大小・高低などを自分なりにイメージしてみます。そしてそのイメージを描きならが、プロの講師のように発声練習や、早口言葉を練習します。これだけでも違いが出てきます。

 あなたに権限があり、朝礼で3分間スピーチをする場が設けられるのであれば、メンバーのレベルアップも含めて、取り組むのもオススメです。

 大事なことは、できることから取り組み、継続していくことです。

 また、ラッキーにも研修に行く機会があれば、講師に話し方を見てもらったり、どのように話すトレーニングをしているか、話すための準備をどのように行っているかなど、生のアドバイスをもらってみてください。休憩時間であれば、テーマに関係なくても大丈夫です。

 できるビジネスパーソンほど、“人前で話す”機会が増えていきます。身の回りにあるすべての機会を生かして、次のチャンスをつかんでいってくださいね。


著者紹介:原田由美子(はらだ・ゆみこ)

 大手生命保険会社、人材育成コンサルティング会社の仕事を通じ、組織におけるリーダー育成力(中堅層 30代〜40代)が低下しているという問題意識から、2006年Six Stars Consultingを設立、代表取締役に就任。現在と将来のリーダーを育成するための、企業内研修の体系構築、プログラム開発から運営までを提供する。

 社名であるSix Starsは、仕事をする上での信条として、サービスの最高品質5つ星を越える=お客様の期待を越える仕事をし続けようとの想いから名付けた。リーダーを育成することで、組織力が強化され、好循環が生まれるような仕組みを含めた提案が評価されている。


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