最悪のビジネス修羅場で正気を保つため――ノートに思いを書け樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

自分が担当している仕事が悪い方に転んで、修羅場の状態となった場合、あまりに辛く、笑い飛ばせるような体験記はとても簡単に書けるものではない。ではどうするか――。

» 2009年08月21日 20時00分 公開
[樋口健夫,Business Media 誠]

 恐ろしく長い期間(例えば1年半ほど)、絶対の自信を持って進めてきた大型案件なのに、突然風向きが変わっておかしくなった。本社も日本のメーカーも確注(絶対に注文が取れると筆者が言い切った)案件には、担当部の期待も大きかった。その大型が中型案件に格下げとなりそうと聞いて慌てていたら、今度は中型案件どころか案件がキャンセルになって霧消してしまいそうだと言われだした。

 もうこれはどうすればよいのだと混乱してしまったものである。穴があったら入って数カ月冬眠してこもりたいと思ったほどだ。海外に駐在している時に、こんな修羅場に何度か遭遇してしまった。考えるだけで気がおかしくなりそうだった。若い時は、ただオロオロして、夕食中に涙が出るほどつらいこともあった。夜も眠れず、体重が減ってしまうこともあった。

 しかし、あることをきっかけに修羅場をこなせるようになった。それがアイデアマラソンだったのだ。アイデアマラソンを開始した1984年以降、どんなにきつい場面でも、寝る直前にノートを取り出して必ずアイデアや発想を書き残すようにした。日記のように自分の思いを書き留めることによって、気分転換となり、つらい修羅場も持ちこたえたのである。

 ベッドでノートを開いて書き込みながら眠り込んで、水性ペンのインクでベッドシーツに、大きな青いシミを付けてしまったこともあったが、眠る直前に気分転換をしていると、逆に仕事の発想を思いついてしまうこともある。は、潜在意識では現在の問題をきちんと意識していて、いつでも連想から、その関係のヒントを出してくることがある。その発想を元に、「もう一度、説得してみようか」とか「やはり、お客の理不尽なことを、クレームしよう」とか「○×に相談してみるか」など、冷静になったからこそ思いつくことができて、「よーし、明日の朝は直接出かけよう」とやる気になることもあるわけだ。

 すごい名案を思いついてしまって、うれしくなって眠れなくなったり、そうした思いつきで修羅場を解決したりしたこともあった。眠る前の“儀式”で、筆者は強烈なストレスを裁ち切り、精神の安定を図ってきたのかもしれない。

今回の教訓

 PCにアイデアを書きながら、キーボードにお茶をこぼしたのは僕です――。(鬼)


関連キーワード

アイデア(発想) | キャリア | ノート | 就任・着任 | 研究機関 | ビジネスパーソン | ビジネスマンの不死身力 | 人材 | 研修 | メモ帳 | 通勤時間 | 仕事術 | やる気 | 考え方 |

著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。近著は「仕事ができる人のアイデアマラソン企画術」(ソニーマガジンズ)「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちらアイデアマラソン研究所はこちら


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ