「コンプライアンスをナメているすべての人たちへ」――マクドナルドが最大4時間eラーニングしたわけ不況を勝ち抜く社員研修

100年に1度の不況と言われる経済危機で、コスト削減が盛んに叫ばれている。社員教育におけるコストも同様で、研修としてeラーニングを導入するといった企業も増えてきた。「e-Leaening WORLD 2009」で見た、eラーニングの導入事例を紹介する。

» 2009年08月06日 21時30分 公開
[塙恵子,Business Media 誠]

 8月の総務特集は「社員研修」がテーマ。社員の能力向上がうたわれる中、社員研修はどこに向かっているのか、本特集で検証していきたい。

 100年に1度の不況と言われる経済危機で、コスト削減が盛んに叫ばれている。社員教育におけるコストも同様で、個人によるスキルアップ、資格取得を推奨する会社や、これまで集合研修のみだったところに、eラーニングを導入するといった企業も増えてきているようだ。

 eラーニングは、教室で研修を行った場合に比べ、交通費、宿泊費、講師の費用、そして個人の学習時間を削減できる点はメリットだと思うが、一方で個人勉強で本当に身に付いているのかという疑問もある。

 8月5日より開催している「e-Leaening WORLD 2009」で、eラーニングによる研修の最新動向を見てきた。ネットラーニングがビジネスセッションでは、日本マクドナルドeラーニング活用事例を紹介した。

「コンプライアンスはそんなに甘いもんじゃない!」 4時間コース

 日本マクドナルドのeラーニングによるコンプライアンス研修は3年を迎えた。

 「わたしは電車通勤ですが、携帯電話の電源についてのアナウンスはコンプライアンス教育の1つだと考えています。あれだけしつこく言われたら、100%理解するでしょう」(日本マクドナルド法務部の野口英一氏)

 日本マクドナルドでは、当初(2007年と2008年)2時間〜4時間のコースのコンプライアンス研修を導入。「コンプライアンスはそんなに甘いもんじゃない! そう思ってあえて長くしました」(野口氏)

 2007年の受講率は91.8%。受講期間は91日間設けていた。2008年は64日間に、2009年に39日間と大幅に受講期間を減らしたが、それでも受講率は100%を達成。「ルーズな人はいくら受講期間を長く設けてもやらないもの。“あなたのために特別に〜”と言って延長期間を設けると効果的です(笑)」(野口氏)

 たとえeラーニングの受講率が増えたとしても、効果がなければ意味がない。野口氏はその問題点を次のように説明した。「受講者のeラーニングのイメージは“テスト”。eラーニングはテストで100点とらないと進めない、終わらないということケースが多い。かったるい、あまりやりたくないという意識が根付いてしまった」(野口氏)

 電車でも、車両に1〜2人は「今電車の中だから」と言いながらも携帯電話で話している人がいる。「テストをしたら100点でした、理解しました。でも行動に移しているのかは分からない」(野口氏)

「ちょっと長すぎました」 1時間コース

 これまで2〜4時間コースだったコンプライアンス研修を、2009年に1時間コースに減らした。「ちょっと長すぎましたね。反省しました」(野口氏)。またテストではなくシミュレーションによる診断を導入した。テスト結果が思わしくなかった人に対して、点数を指摘するわけではなく、診断という形でその人の傾向を知らせ、意識を高めるためだ。

 ちょうど「クォーターパウンダー」を発売した時期だったため、「ハンバーガーをナメているすべての人たちへ」などクォーターパウンダーのPRフレーズを診断結果に盛り込んでみたという。例えばE判定だったら「コンプライアンスをナメているすべての人たちへ」とマクドナルドらしいインパクトのあるフレーズを使うなど工夫も忘れなかった。「eラーニングを作ってくれと頼んだらどこでもできる時代。単に安ければ導入するというものではない。導入するなら費用対効果を見なきゃいけない。企画力を重視したい」と野口氏は企画へのこだわりを口にした。

 「正直なところ、eラーニングだけでは社員研修は足りないと思っている。やはり集合研修、教材などと組み合わせていかないと」と野口氏。また継続することが重要という。野口氏は「eラーニングは1回だけで完了だったら効果がない。継続していかないと意味がない。でも毎月やっていたら受講者は飽きてしまいますので、わたしたちは年に1回eラーニングを実施することにしています」と聴講者にアドバイスした。

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