人生観が変わる瞬間を執筆せよ樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

日ごろの仕事に追われていると、時に具合が悪くなり、入院するようなことがある。その時は人生を見直す“チャンス”かもしれない。

» 2009年08月06日 20時30分 公開
[樋口健夫,Business Media 誠]

 日ごろの仕事に追われて、あっという間に30代から40代に進んでいくと、時に体の一部にトラブルを生じ、入院するようなことがある。

 健康診断で見つかれば幸いだが、筆者の場合は40代の初めころ、(恥を承知で言えば)痔ろうと分かった。風呂で小さなしこりを見つけたのだ。名医と言われるM外科で手術。それ以来全く問題はない。

 激務の者が何日かでも入院すると、大きな精神的ショックを受けて人生観が少しは変わることが普通だ。入院して人から世話を受けたりすると、それまでがむしゃらにビジネスオンリーで進んで来たことに違和感を感じることもある。

院長先生からも「欲しい」と言われた「じろう物語」

 筆者の場合、程度は軽く、重大な手術ではなかった。だが、それでも2度の手術を行ない、完全に治癒するまでは時間がかかった。

 筆者は入院中、小型のワープロを持ち込んだ。それで書いたのが「じろう物語」だった。これは筆者が最初に局部の異常を認識した時から、1回目の検診と手術、さらに2回目の最終手術までの家族の協力といった入院体験をベッドの上で詳細に執筆したものだ。

 手術や麻酔の方法などに関しては、先生に専門用語を説明してもらい、時にはノートに書いてもらうほど詳しく書いた。もちろん筆者なりにだじゃれやパロディも盛り込んだつもりだ。この「じろう物語」は、院長先生からぜひとも、ということで一部プリントした。

 同じ時期に入院していた、ほかの患者も名前を伏せてインタビューした。こちらもおまけとして付けている。未公開だが希望者にはお配りしてもよい(いないと思うが)。

 その後、ネパール駐在中に急な下血も体験した。どうも体の同じ辺りばかりが壊れてきているのだろうか。その時には、反乱軍のゼネストの最中で、外出すると暴徒に襲われるので、警察の護送車に守られて病院に行った。

 信じられないほど清潔ではないカトマンドゥの病院に入院した(現地の人たちから言えば、信じられないほど清潔らしいが)。翌日、必死になってバンコクに脱出し、そこで内視鏡検査を受けると、単なる炎症からの出血だと分かった。この時も一連の記録を全てノートに書き留めた。このような入院を体験すると、お医者さんの偉大さと看護婦さんの激務が分かってくる。

自分がいなくても進んでいる仕事にショックを受けたら……

 入院中「自分の仕事はどうなるか」と心配だろうが、仕事はちゃんと回っているはず。「自分がいないと仕事が進まないはず」という信念が敗れて、「自分がいなくても仕事がちゃんと進んでいる」「自分がいなかったら、余計にちゃんと進んでいる。いなかったら、新しい注文が決まった」などと知る。これがビジネスパースンには、さらに大きな精神的ショックになるわけだ。ちょっとした入院でも精神的ショックを受けることから、人生観に影響がでる。

 ベッドに数日でもじっとしていることで、いろいろ考えてしまって人生観が変わるときには、ぜひとも執筆を勧めたい。仕事をどのようにしてきたのかという仕事だけではなく、仕事だけしていていいのかといった人生を見直すことができるはずだ。今後何をするべきなのかを考えさせられる。特にまわりの人間関係に支えられていることが分かることも大切だ。

 いつも筆者の文章をいじることに明け暮れている、このコラムの某鬼編集者。彼に言いたい。自分の体力をかさにきて昼夜逆転の生活をしていては、今にきっと突然のことで入院するだろう。そのときに筆者と同じきつい体験をして、自分の人生を見直すはずだ。もちろんそんな時には、見舞いに行くつもりである。

今回の教訓

 人生を見直す前に先生を見直しました――。(鬼)


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著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。近著は「仕事ができる人のアイデアマラソン企画術」(ソニーマガジンズ)「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちらアイデアマラソン研究所はこちら


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