利益を4倍にした経営者が決めたのは「マネジメントをやめる」ことだった「7つの習慣」セルフ・スタディ・ブック 第二の習慣(1/2 ページ)

それまで実行できていなかったリーダーシップに取り組んだことで、成果を何倍にも増大した事例をご紹介しましょう。ある石油会社の経営者の話です。

» 2009年08月03日 09時50分 公開
[フランクリン・コヴィー・ジャパン,Business Media 誠]

「7つの習慣」セルフ・スタディ・ブック with DVD Vol.3 第二の習慣:目的を持って始める

 実りある人生を送っている人々には共通する習慣があった――1996年に発売されて以来、ビジネスパーソンをはじめとする世界中の人々に多くの影響を与えたスティーブン・コヴィーのベストセラー『7つの習慣』

 現代の日本社会に不足がちなリーダーシップを身につけるためには、「リーダーシップとマネジメントの違い」を認識することが第一歩となります。自分はどうありたいのか、何をしたいのか、自分の行動の基礎となる価値観や原則はどういったものなのかを明確に示す「ミッション・ステートメント」の重要性を説く『第二の習慣』から5編をお届けします。


 それまで実行できていなかったリーダーシップに取り組んだことで、成果を何倍にも増大したある経営者の話をご紹介しましょう。全幅の信頼の下、経営者がマネジメントを現場に委任し、自らはリーダーシップの分野で才能を発揮した、素晴らしい事例です。

 ある石油会社の社長が私に次のように話をしてくれた。

 「コヴィー先生がリーダーシップとマネジメントの違いを指摘してくれたとき、私は社長としての役割を考え直しました。今まで私はリーダーシップ的な仕事は一切やっていなかったことに気がついたんです。マネジメントばかりに心を奪われて、日々の問題解決を管理する渦の中に飲み込まれていました。しかし、マネジメントは他の人に任せられるものだと分かったので、リーダーシップを発揮することに専念しようと決めたんです。

 でも最初はとても難しかったですよ。禁断症状が起きました。目の前にあるせっぱ詰まった問題に対応することをやめたものですから。以前はそういう問題に対応することで、ある種の達成感、あるいは満足感を感じていましたからね。会社の方向性や組織文化をつくることや、徹底した課題分析や新しい事業機会の発掘などに取り組み始めてみましたが、最初はあまり達成感を得ることができませんでした。周りの人間もこのスタイルの変更に対し、禁断症状を起こしていましたよ。以前のようにさまざまな問題について、私に相談することができなくなりましたからね。

 しかし私は頑張り続けました。リーダーシップは絶対に必要だと確信していましたから。そしてそのリーダーシップを発揮しました。おかげで今では会社は全く生まれ変わりました。事業環境とピッタリ合った戦略で仕事をしています。売上が倍になり、利益は4倍になりました。リーダーシップはもうやめられませんよ」

 続いて、目の前の問題ばかりに気を取られ、長期的な視野のもとに行うべきリーダーシップに取り組むことを忘れてしまった組織の例を紹介します。極端な事例かもしれませんが、いまだに多くの組織では、このようなビジョンなき対応にエネルギーが注がれているのではないでしょうか。

 ある企業は、社員のコスト意識を高めようと考えていた。その取り組みを推進した結果、社員全員が経費のことばかり気にし始め、新規事業にまで考えが回らなくなってしまった。慌てた会社側は、新しいビジネス開発に力を入れ始めた。社員は、躍起になり、事業の開発へと乗り出し、社内の人間関係に注意を払わなくなった。すると会社は必死になって人間関係の向上に努めるよう、社員を啓発し始めた。1つの短絡的な方針が、次々と問題を発生させてしまった。

 あまりにも頻繁に路線が転換されるので、社内全体に不信感が広がり、社員は会社の方針を真面目に受け取らなかった。そして、駆け引きや、対立、縄張り争いに勢力を傾けるようになってしまった。

 このように説明してくると、リーダーシップとマネジメントが全く別のものに感じられるかもしれません。確かに区別は必要ですが、両者は密接にかかわり合っており、切っても切れない関係にあることも事実なのです。

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