研修に行くことが“ラッキー”と思えるか?研修に行ってこい!

わたしたちは会社から与えられることに慣れきっている――本連載では与えられた環境を生かし、自分自身の能力を高めていくために、研修をうまく活用するヒントを提供していきます。

» 2009年08月03日 16時45分 公開
[原田由美子,Business Media 誠]

 ここ数年で今までとは明らかに違う変化が、企業研修の中で起こっています。それは、研修に参加する人が多国籍化していることです。

 特に新入社員研修では顕著で、中国韓国インドなど、アジア系の優秀な人材を新入社員として採用し、日本特有の商習慣を学ぶ、ビジネスマナー研修などに参加しています。

 また、研修で取り扱うテーマもグローバルな流れに対応しています。国際会計、グローバル営業、国際取引(貿易実務)、国際間のアライアンス、企業買収など。自分はグローバルな感覚で仕事をしていなくても、仕事を通して世の中が急速に変わってきていると感じます。

光る人材が、日本人とは限らない時代

 このようなグローバルな変化の中で、わたしたちが一番関心を寄せておきたいのは、“海外の優秀な人材”の存在です。

 日本では今、社員のモチベーションを上げる研修や、社内を活性化する研修がトレンドです。一方、新入社員や中途で採用される彼らは、モチベーションは高くて当たり前。常に自分の付加価値を高める努力を惜しみません。またそうした姿勢で研修に臨む彼らは、明らかに光って見えます。

 日本では会社があり、会社が与える役割をつつがなくこなしていればよいという状況が当たり前です。しかし世界を見渡すとそれは当たり前ではありません。いつ何がどうなっていくかが分からない。その中で、国や地域や家族のために、自分として自分ができる努力を精一杯しておくことこそ当たり前でなのです。

 彼らから気付かされたのは、わたしたちは与えられることに慣れきってしまっているのかもしれないこと。また、今ある環境を生かしきれていないのかもしれないということです。

「研修に行って来い」と言われたら?

 その生かしきれていない最たるものの1つが、企業主催で実施する研修ではないかと思っています。そこで本連載では、研修を企画しコーディネートする立場から、与えられた環境を生かし、自分自身の能力を高めていくために、研修をうまく活用するヒントを提供していきたいと思っています。

 今までは、「研修に行って来い」と言われると、「仕事が忙しいのに……」「休めないかな?」「誰か代わってくれないかな?」なんて気持ちがあったかもしれません。

 しかしこれからは、「研修に行って来い」と言われたら、「ラッキー」と思えるようになるのがこのコラムの目的です。このコラムが少しでも皆様のお役に立てばうれしいです。

15年で数万人の参加者に会った経験から

 わたしが研修コーディネートする仕事に携わるようになって、15年が経ちました。コーディネートをするためには、担当する会社の目標や方針、会社の風土、働く人について、よく知っておく必要があります。

 そのためわたしは、講師のサポートを目的としながら、可能な限り研修の現場に立ち会ってきました。そうすると、いろいろと面白いことに気が付きます。その中で、最初に面白いと感じたのは、会社で一目置かれている人は、初対面でも分かるということでした。

 いわゆる“オーラ”みたいなものがあるのか、「あっ、この人いい仕事しそうだな」というのが、何となく分かるんですね。“オーラ”というと、非科学的な表現だとお感じになる方もいるかもしれません。能力開発的な用語を使うと、「顕在化している能力とその再現性」というとらえ方をします。

 わたしが持つイメージとしては、その人の良質な日常習慣や日々の前向きな努力が外に現れて伝わってくることを指しています。あなたの周りにもいないでしょうか? 言葉では表せないけれどもキラキラしている印象の方。そのようなイメージだと思ってください。

“オーラの正体”

 顕在化能力とは、その人が持っている能力が、言動により発揮されている状態を指します。反対に、発揮されていない能力は、潜在能力というとらえ方をします。

 また、状況や環境が変わると、できたり、できなかったりしていないかなども合わせてみていくことを再現性といいます。


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 一般的に、能力のイメージをお伝えするとき、人間の能力は無限の可能性を秘めているところから、表出している部分が少なく、そのすそ野が未知数である氷山を使って表現されています。おもしろいですよね。

 さて、そのような外に現れている能力の視点から、“オーラ”なるものを分析し、知識や行動の細かな要素へ落とし込みを図り、体系化したものがコンピテンシーです。コンピテンシーについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

あなたもキラキラできる!

 そうしたコンピテンシーの中から、会社があなたへの期待をこめて、仕事上必要とする要素を抽出し、組み立てを行い提供しているのが、現在の研修です。

 しかし、キラキラと輝いている人のさまざまなエッセンスを凝縮しているので、一度にすべてを身につけようとすると、疲弊してしまいます。

 1つだけでも、自分が「身に付けるのにはちょっと努力が必要だけど、取り組んでみたい!」と思ったものを選び取って、毎日実践し習慣化するのがコツです。

 ポイントは、「ちょっと努力が必要」と思ったものに真剣に取り組むこと。そうすると、キラキラとした輝きは自然と現れてきます。これから研修に参加するときは、そんな視点をもって臨んでみてくださいね。

著者紹介:原田由美子(はらだ・ゆみこ)

 大手生命保険会社、人材育成コンサルティング会社の仕事を通じ、組織におけるリーダー育成力(中堅層 30代〜40代)が低下しているという問題意識から、2006年Six Stars Consultingを設立、代表取締役に就任。現在と将来のリーダーを育成するための、企業内研修の体系構築、プログラム開発から運営までを提供する。

 社名であるSix Starsは、仕事をする上での信条として、サービスの最高品質5つ星を越える=お客様の期待を越える仕事をし続けようとの想いから名付けた。リーダーを育成することで、組織力が強化され、好循環が生まれるような仕組みを含めた提案が評価されている。


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