眺めていてもメールはなくならない――「読むなら返す」の原則あなたの不安、見積もります

GTDの応用例として「メールの受信トレイを空にしてみましょう」というライフハックがあるのですが、幅広く広まっているわりにはなかなか実践されていません。あなたの受信トレイは今、空になっていますか?

» 2009年07月30日 10時00分 公開
[佐々木正悟,Business Media 誠]

 受信トレイをゼロにしてみようと決意して、すぐに直面してしまう問題が2つあります。「今すぐには対応できないメールの存在」と、「どうしても対応できない心の壁」です。

ビジネスパーソンの不安ポイント

「メールにはすぐにレスせよ」とよく言われますし、せめて佐々木さんの『「1日1箱」仕事術』で書かれているように、前日までに届いたメールくらいは対処したいと思っているのですが、なかなかうまくいきません、すぐに取りかからねばと思いながらも、未処理のメールがたまる一方です。


 私が以前働いていた職場には、重要書類に何度も繰り返し目を通す人がいました。何度も目を通すことで書類の内容を頭に入れているのかと思ったら、どうやらそうではない。その人によると、「記憶のために読んでいるのではなく、その案件を処理できるタイミングを探っていた」のだそうです。「何度も読み返すことで、徐々にその内容に心がなじんでくる。そうすることで、自分が元気なときに案件をまとめてえいやと処理できる」とのことでした。

 仕事が滞らない限り、これは悪い方法だとは思いません。しかし、同じことをメールでやってもうまくいくとは限りません。というのも、メールは一日に何十通も届くことが少なくないですし、書類と違っていくらたまっても他人の目に触れにくいため、いつしか手に負えないほどの量がたまってしまいがちだからです。

 そうならないためには「メールチェック」などしないことです。何度「チェック」しても、メールは減りません。「なじむ」ことができるだけです。メールを読むときは必ず返信する。そのようにルールをはっきりさせておけば、余計なメールチェックで時間を無駄にすることもなくなります。

 これは、メールチェックの時間を減らすための、1つの優れたルールなのです。返したくなかったら、読まないことです。読むのでしたら、返しましょう。「なじむ」ために二度、三度と読み返したところで、仕事は減らず、時間が減るばかりなのです。

心のエネルギーを中途半端に使わない

 心のエネルギーというのは面白いもので、本当にやる気になっていない限りは、やらずに済ませようとするところがあります。メールチェックの例で言えば、本当にやる気がないのなら「チェック」で終わってしまうのです。

 しかし、レスをせずにチェックだけで済ませたとしても、やはり少しはエネルギーを使ってしまうものです。これでは、レスのためのエネルギーがなかなかたまりません。「安物買いの銭失い」と言いますが、なにやらそれに似ています。

 エネルギーを十分ためて、やるべきことをやれるようになったときに、取りかかりましょう。これはメールレスに限った話ではありません。

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 「シゴトハッカーズ」「あなたの不安、見積もります」の筆者、佐々木正悟さんの新刊『残業ゼロの「1日1箱」仕事術』が発売になりました。

 次に何をすべきかは分かっている、材料もすべてそろっている、でも、なんとなく取りかかる気がしない……。仕事を前に、こんな状況でダラダラと時間を浪費してしまった経験は誰にでもあるでしょう。

 本書のテーマは、どうやって自分の中から「やる気」を引き出すか……といっても、気合いや根性を総動員するような「精神論」ではありません。

 ご紹介しているのは、最新の脳科学・心理学の知識に基づいた「正しい」モチベーションの上げ方なのです。


筆者:佐々木正悟

 心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。著書に、『スピードハックス』『チームハックス』のほか『ブレインハックス』、『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』、『やる気ハックス』などがある。「シゴタノ!−仕事を楽しくする研究日誌」にて「心理ハック」を連載中。ブログ「ライフハックス心理学」主宰。


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