リコーの「ちょっと変わった」オンラインストレージサービス「quanp」。ユーザー座談会を取材して見えてきたのは、「人生を預けてほしい」という開発者の思いとユーザーからの声だった。
リコーのオンラインストレージサービス「quanp」はちょっと変わっている。
まずサービス名が読めない。手元の辞書にはそんな単語は載っていないので、どういう意味なのだろうと長らく不思議に思っていたのだが、これは「quantum(量子)」と「paper(紙)」を組み合わせたリコーの造語だそうだ。「クオンプ」と読む。
1Gバイト(無料)〜100Gバイト(980円/月)のストレージを提供するが、リコーは「オンラインストレージサービス」とは言い切らない。なぜだろう、とこれも不思議に思っていたが、最近理由が分かってきた。2008年5月のサービス開始時にはシンプルなストレージ機能だけを提供していたが、毎月のようにバージョンアップを繰り返し、オンラインプリントサービスとの連携や各種ウィジェットの公開を通して、用途が単なるデータの保管だけに留まらなくなってきたためだ。
では、そんなquanpを開発する側は、サービス立ち上げからこれまでに何を考え、今後の展開をどう予測しているのか。一方で、ユーザーはquanpのどんな機能を便利に思い、何を不満に感じているのだろうか。リコーが実施したquanpのユーザー座談会「quanp Lab」で、そのあたりのもろもろを聞いてきた。
「デジタル化した“思い出”がばらばらになっている」。クライアントソフト「quanp.on」やWebブラウザで利用できる「quanp.net」の開発を担当するリコーの山本周(やまもと・ひろし)氏はそう指摘する。
「インターネットを介したメールやチャット、SNSなどの利用者が増加するにつれて、コミュニケーションもデジタル化してきた。写真、動画、テキスト、音声、そういったデジタルデータに、人生そのものの思い出が詰まっている」(山本氏)。
しかし、それらの“思い出”は何台ものPCのHDDに分割して保存されていたり、保存されていること自体を忘れられていたりと散在している。これらのデータを1個所にまとめ、「もう1つの脳/もう1人の自分」にする――これがquanpのコンセプト“file your life”の目指すものだという。
データを単に蓄積するのではなく、活用につなげるにはどうしたらいいか。その点を志向してリリースしたのが、複数人で共有した画像をスライドショーで表示できるデスクトップウィジェット「quanp slideshow」や、富士フイルムと連携して提供する「quanp photo print」といったサービスだ。
人生のドキュメントをまとめるということになれば、もちろん膨大な量のデータになる。保存したデータをサムネイル表示し、フォルダ名に合わせて自動でタグを付けるなど、検索性も重視した。「どのデータを扱うかなんていちいち悩まないで、とにかくquanpに放り込んでください。使うときにはこちらが最適な形に勝手にしておきます。そういうイメージ」(山本氏)
ユーザーがquanpを利用する理由はどこにあるのだろう。座談会に参加したユーザーの意見をまとめると、大きく分けて次の3つに分類できる。
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