自利利他とオープンソース――創造的選択インタビュー全文公開(後編)達人のクリエイティブ・チョイス(3/6 ページ)

» 2009年07月24日 12時30分 公開
[鷹木創,Business Media 誠]

CSRが反射的にイラッとする理由――「供給専従はダメ」

吉川 だからアプローチも余力を集積するというのが大事で、無理してやるのはダメなんです。みんないっぱいいっぱいだから、時間もお金も。なので、ちょっとしたことで、でもそれがここに利く、というアプローチが多いし。

 あと「供給参加」としたんですけど、供給専従はだめなんですね。全面的にそっちにいっちゃうというのはだめで、一時的に供給側に回ってみる。ケースで言うとオープンガーデンとか品川女子学院の話とかするんですけど、一時的に制作者側になる、モノを作る側になる。でもそれも一時的になるからいいんであって、専従してしまうと責任と利益がからんで、多分面白さがでてこない。こちらで一時的にやるようにするとだからこそ大きなうねりになる。

堀内 「本業と関係ないところで社会貢献しても共感できない」っていうところで、確かに金融系の会社が木を植えてますとかいう CMを見ると、反射的にイラッとするというか「本業で還元してよ」って思うことがある。それをやる理由はあるんだろうけど、CMでは伝わってこない。

吉川 もう生活者が分かっちゃってるんだと思うんですよ。そうやって写真で撮ってくると言うことは。だとするとそうやっててもしようがない。だけどCSRをやりたいというなら、生活者が細々とやっているやつを支援しちゃうとか、大きくしちゃうとか、まとめちゃうとか。で、その時にみんな集まれーとやるだけじゃなくて、そこに企業のリソースを入れちゃうと、こりゃとんでもないことになるなと。

 NPOとかNGOとか社会起業家の限界を超えるだけの能力をやっぱりもっているじゃないですか、企業って。それはそれでちゃんと生かそうよという話。一部のNPOでもすでにそういう動きはある。面白かったのは、いろいろ社会起業家に取材したんですけど、ケースで紹介したいんですけどというと、快くいいですよというNPOもいれば、しばらく考えさせて下さいというNPOもいる。

堀内 へー、それはなんで?

吉川 要するに、何か「企業対自分たち」のような。結局メールが返ってきて「今回はご遠慮します。私たちは私たちでやります」とか書いてある。

堀内 何か利用されちゃうんじゃないかという思いがあるのかも。

吉川 そこは残念なところなんですけど、でもどんどんどんどん組んでいったほうがいいなと。生活者は「我がことから皆のことへ」が自然とできている気がしますし、企業も自然に我がこととしてやっていかないと共感を得られないような気がしますね。

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