短時間で多様なアイデアを引き出す道具アイデア・スイッチ(2/4 ページ)

» 2009年07月21日 18時00分 公開
[石井力重,Business Media 誠]

技術的な視点からアイデアを引き出す「USITオペレータ」

 発想トリガーのリストは、文系的な問題(ビジネス、組織)、理系的な問題(商品、デザイン)どちらにも活用することができます。このうち、先のSCAMPERは文系的な問題に適しているのに対し、USITオペレータは理系的な問題に適しています。

 例えば、視点を変えた新商品を考案したい、そんなときにはUSITオペレータが効果的です。使い方はSCAMPER(スキャンパー)の使い方(3ステップ ※)と同じです。

※詳しくは『アイデア・スイッチ 次々と発想を生み出す装置』もしくは、誠 Biz.IDで以前連載していた「アイデア創発の素振り」でご確認ください。

「モノ」をチェンジ

1. 何かを消去する、単純化する

2. 何かを多数(2、3……∞個) に増やす

3. 何かを分割(1/2、1/3……1/∞ずつ)する

4. 複数のものをまとめて1つにする

5. 何か新しいものを導入する

6. 周囲にあるものを導入する

7. 外観や様子を変えたものを導入する

8. 固体のものを粉体、液体、気体のものに置き換える

「性質」をチェンジ

1. マイナスを生じる性質を使わない、関係しないようにする

2. プラスを生じる性質を使う、関与するようにする

3. プラスを生じる性質をもっと強くし、マイナスを生じる性質をもっと抑える

4. 形、大きさ、位置など、空間的な性質を新しく取り入れる。もしくは、いろいろな性質を部分や場所によって変える

5. 季節、日、秒など、時間的な性質を新しく取り入れる。もしくは、いろいろな性質をさまざまなやり方で時間的に変化させる

6. 姿、形、ありさま、外見を変える

7. 内部構造を変える

8. とても小さなスケールの空間的性質を変える

9. とても小さなスケールの時間的性質を変える

10. 対象とするもの全体の性質を向上させる

11. 対象とするもの全体の機能を向上させる

「機能」をチェンジ

1. 何かのもつ機能を別の何かに担わせる

2. 何かのもつ複合した機能を分割して、別の何かに分担させる

3. 2つの機能を統合して、1つの何かに担わせる

4. 新しい機能を導入する

5. 何かのもつ機能を大規模な機能にしたり、小規模な機能に変える

6. 何かのもつ機能を別のところへ移動させる

7. 何かのもつ機能を周期的に大きくしたり小さくしたりする

8. 何かのもつ機能を長時間にわたる機能にしたり、短時間で終わる機能に変える

9. 何かに検出機能をつけてみる

10. 何かに測定機能をつけてみる

11. 何かに適応機能をつけてみる

12. 何かに調整機能をつけてみる

13. 何かに制御機能をつけてみる

14. 今の機能を、別の物理原理を使った機能に変えてみる

「組み合わせて」アイデアをチェンジ

1. 出された複数の案について、ある機能はA案、別のある機能はB案といった形で、機能同士を組み合わせてみる

2. 出された複数の案について、ある部分はA案、別のある部分はB案といった形で空間的に組み合わせてみる

3. 出された複数の案について、ある時間はA案、別のある時間はB案といった形で、時間的に組み合わせてみる

4. 出された複数の案について、ある仕組みはA案、別のある仕組みはB案といった形で、構造的に組み合わせてみる

5. 出された複数の案について、A案に使われている原理とB案に使われている原理を組み合わせて、それを用いて1つの案をつくってみる

6. 出された案について、より広い範囲で考えてみる。対象とするものと一緒になって働いている他のものは何だろうか。それを含めた、より大きな「全体」をなすシステム。その範囲で、先に出された案を組み合わせてみる

「鳥の目・虫の目で」アイデアをチェンジ

1. 出された案の中に使われている言葉を、一般的な言葉に言い換え、案を連想的に膨らませる

2. 出された案の中に使われている言葉を、具体的な言葉に言い換え、案を連想的に膨らませる

3. 出された複数の案を、階層的な体系に整理分類し、案を網羅的に出してみる


補足:このリストは、リスト開発者・中川徹教授(大阪学院大学)の許可を得て、筆者が加筆修正したバージョンです。原典の表現は下記をご覧ください。原典:http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jlectures/USITSol0209/USITSolTableFull020906.html

 ひとつの指示文につき、長くても1〜5分程度にして、次々と考えることがコツです。また、ラフで構わないので、頻繁に絵を描くと良いでしょう。「リストの指示内容が示す状態を、仮に問題にしている商品にあてはめてみるとどんな姿になるか」と考えながら描いてみると、言葉で考えているよりもずっと良い発想が出ます。書き始める前には気がつかなかったアイデアが得られるでしょう。素朴な線でもとにかく書いてみると、「これに似たものを見たことがあるな。もう少しこの部分をあっち側に移動させてみよう……」といった感じで自分の思考を進めてくれることがあります。

 ではさっそく、練習問題からいきましょう。

練習問題

 あなたは、ペット用品の企画部門で、犬用の新しい手綱を企画することになりました。現在の商品はよくあるような太い綱で、手持ちの部分が輪になっているタイプのものです。これまでにないアイデアを盛り込みたい、そんな企画会議の場面です。



 それでは、実際に10分ほどUSITオペレータでアイデア出しにトライしてみてください。

 いかがでしたか? 短時間でも3個以上アイデアが出せたはずです。

 それでは、USITオペレータを使って実際に私が考えた方法を紹介します。

固体のものを 粉体、液体、気体のものに置き換える(「モノ」をチェンジ8)

 手綱の握りを液体に→お湯を入れられて手が暖かい →湯たんぽ手綱

何かのもつ機能を大規模な機能にしたり、小規模な機能に変える(「機能」をチェンジ5)

 2メートルの手綱を200メートルに→物理的な綱では難しい→無線式の手綱、飼い主から離れ過ぎると、首輪から犬の嫌がる音が出る→自主的に犬が200メートル圏内に →ワイヤレス手綱

何かに調整機能をつけてみる(「機能」をチェンジ12)

 手綱を手元のスイッチで硬くできる仕組み→犬に手綱のひねりで方向指示を与えられる →スティック手綱



 このようなアイデアを出してみました。SCAMPERと同じく、非常に多くの問いかけをパスしています。

 このUSITオペレータは、創造的な技術開発の理論をやさしくしたものとして開発され、たくさんのノウハウが凝集されています。発想トリガーのリストとして「効果」の点で見ると、2つの構造に分かれます。前半は初期的アイデアの創出、後半はアイデアの結合改善です。つまり、同じ問題で何度も発案してみると、次第にアイデアに深みが出てきます。ぜひ試してみてください。

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