あなたの企画を“宝石”にする3つのステージ樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

会社の仕事で企画書を作る場合、肝心の内容が面白くないと他人の心に響かない。そこで、3つのステージで企画を“宝石”にするやり方をご紹介しよう。

» 2009年07月16日 08時30分 公開
[樋口健夫,Business Media 誠]

 会社の仕事で企画書を作る場合、メインの内容が命。これまでの連載で、文章の書き方に慣れても、内容が面白くないと他人の心に響かない。

第1ステージ:原石発見

 アイデアマラソンを活用してきた筆者は、常に持ち歩くノートに思いつくことをすべて書き留めている。通勤でも、昼休みでも、夕方のドトールでも、寝る前でも、いつもノートを取り出して、常に発想を書き込んできた。

 いつでも思いついたことを書き出すために、課題やテーマを紙切れに書いて、スーツの胸ポケットに入れて持ち歩くのはオススメだ。最近だと携帯電話などのメモ機能を使うのもいいだろう。電車で座りながら、そのテーマの紙切れを胸から取り出して、通り過ぎる外をうつろに眺めながら考えにふけっていた。思いつくと、その紙切れに発想のキーワードを書き留めていたのだ。

 そうして2週間ほど筆者は出せる発想をすべてノートに書いた。自分のが思いつくことのできるありとあらゆることを考えてノートに書き留めた。数百個の思いつきを並べてみると、不思議とその中に鈍く光るものを見つけることができた。元々の選択肢が多くないと、よいアイデアは選び出せないのである。

 鈍く光るのは企画の原石か、海岸に光るガラスの破片か、はたまた外部からの光がハレーションしているのか分からない。宝石の原石かどうかを瞬間に判断するのはどうしても成功体験の蓄積が必要だったりする。これも、アイデアマラソンのような発想手法を長く継続した経験が重要かもしれない。

 ともかくも「これだっ」と感じたら、さっそく書いてみることが重要だ。未知のチャレンジを企画化する時は、書いてみないと全体像がつかめないことが多いからである。逆に書くことをサボると、煮詰まらない企画に終わってしまうことも多いのだ。

第2ステージ:即まわりの閲覧

 一端書き終わると、せっかく書いたのだから提出してしまおうと焦る人が多い。自分の書いた文章は、自分の産んだ赤ちゃんと同じに見えるのだろう。

 ちょっと待った。この状態はまだ原石である。鈍く光っているだけで、それが宝石なのか、ガラスなのか分からないのだ。

 筆者の場合、企画書は部下に読んでもらうことにしていた。エッセイは、家で子供たちに読んでもらった。もったいぶって、交換条件を出してくるヨメサンに頼んで読んでもらい、その上に不必要に自信を壊されるよりも、子供たちの方が気が楽だった。

 読んでもらっているときは、じっと我慢して読み手の顔を読んだ。「次長、これ面白いですね」というのと「次長、これ面白いですか?」では、まったく違うのだ。公募に応募したエッセイの場合も、子供たちから「父ちゃん、まあ、面白いけれど……」など言われたら、まずはダメだということである。

 部下たちも、子供たちも遠慮して言うが、裏側には「全然だめ」という意味が含まれている。「そうか、やはりだめか」と、原文を引き下げて、筆者は書きなおしを決意するのだ。

第3ステージ:原石から宝石を磨く

 一端書きあげた企画は第2ステージの試練を通して、書き直す。ただ、そう決めていても、締切までに時間があれば、筆者はその原稿をノートに挟んで持ち歩いていた。

 また電車の座席、ドトール、(電柱を避けて)歩きながら考える。どこかで雷光のようなブレークスルーを見つけるまで考えるのだ。それはいつどこで起こるか分からない。電車の中でも、自宅の書斎でも、寝る直前でもちょっとした時間があれば、再びアイデアマラソン的に考えて考えた。寝る前に、その原稿を読んでいたら、よく眠れたものだ。

 そうこうしているうちに、ついにピカッと来る。電車の座席で究極の発想を思いつくと、思わず独り言「やった、これだ」と言って、周りの乗客が筆者の顔を見る。ノートに書いた後は、うれしくなって、席を立ち、ドアのガラスから遠くの景色を眺めて充実感を楽しむのだった。

 自宅の場合は、ピカッが来ると、家の中をうれしくて歩き回り、子供たちの勉強を邪魔していた。

 こうなると、できる限り急いで書きなおすことが必要だ。全速力で書かないと、そのピカッの啓示がぼやけてしまう。もう、キーボードを叩く速度は機関銃の如く、一気に完成させてしまう。

 書き上がったら、急ぎ印刷して部下や子どもに見せる。ここで「いいですね。すごいですよ、これは」「父ちゃん、これ面白い!」となればOK。でも場合によっては第2ステージからやり直しということもある。ともあれ、こうしたプロセスで作った企画は当たった。これがビジネスパースンの執筆の充実感となるのだ。

今回の教訓

 部長の企画は部下の朱入れチャンス――。


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著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。近著は「仕事ができる人のアイデアマラソン企画術」(ソニーマガジンズ)「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちらアイデアマラソン研究所はこちら


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