文系女子は理系思考ができるか?

理科、数学……いわゆる理系分野は超苦手の筆者。でも理系の考え方って生きてく上で本当に必要なの? 『理系思考術』の筆者、岡嶋裕史先生に聞いてみた。

» 2009年07月08日 12時15分 公開
[塙恵子,Business Media 誠]
photo 理系思考術』(ソフトバンククリエイティブ刊)

 筆者は根っからの文系人間。小学校のとき算数のミニテスト(おそらく分数だった)で0点を取って、教室で大泣きしたことは抹消したい過去だ。おそらくそれからだろう。理科、数学(算数)、いわゆる理系分野には“苦手”意識がつきまとう。

 理系に強いってだけで頭が良く、仕事もバリバリこなしそうだ。とはいえ、筆者は一応社会にも出て自立もしているし、とりあえず生活に支障はない。理系科目が苦手でもこれまでさほど不自由を感じずに生きてこられたのだ。むしろ生きてく上で必要なの? そう問いたいくらいだ。

 そこでソフトバンククリエイティブから発売した『理系思考術』の著者、関東学院大学准教授の岡嶋裕史(おかじま・ゆうし)先生に、理系思考とは何なのか、どうしてそれが必要なのか、そしてどうしたら身に付くのかについて聞いてみることにした。

ロジックがあれば理系

photo 岡嶋裕史先生

 理系を敬遠してきた筆者。「理科や数学と言われるものなんだろうな」というくらいで、そもそも定義がよく分からない。

 ところが岡嶋先生は意外なことを口にした。「僕が言う理系とは、数学や理科から切り離しているんですよ」。文学、社会科学、いわゆる“文系”と思われているものでも、ロジックがあればそれを理系と呼んでいるという。一体どういうことだろうか。

 岡嶋先生は「最近ツールが使えればいいやと思っている人が多い」と言う。例えば「中身もよく知らずにWindowsというツールを使っている」そんな人のことだ。もちろん筆者もその1人。「中身が分からないというのは怖いことです。とんでもないことが起こっても、中身を知らなければ修正もできないし、間違いに気付けない。コンピュータみたいに、世の中を牛耳っているようなメカニズムを知っておかないと損をするんですよ」

 岡嶋先生は、中身を知るような好奇心を持っていたり、知る努力を惜しまない人を、“理系的な思考”を持っている人と呼んでいるのだそうだ。「魔法のツールだけで済ましていると、魔法使いだけの特権みたいになってしまう。中身を知る努力をすれば、普通の人でも同じ魔法が使えるようになるんです」

すごく大事なデータ、Windowsにすべて任せていいの?

 正直なところ、筆者のような“ツール使えればいいや人間”が、いきなり考えを変えるのはなかなか難しい。何か起こることも想定していないし、たとえ何か起こっても「だれかがどうにかしてくれる」――筆者だけでなく、そう考えてしまう人も多いのではないだろうか。

 「(前述のWindowsの例にとって)マイクロソフトみたいなところが作っているから安心だろうと思ってしまうのでしょう」と岡嶋先生。先生が小学生のときは、マイコンが出始めたころ。マイコンのプログラムを組んだりしていると、「意外とみんなプログラムっていいかげんに作っている」と思うことも少なくなかったそうだ。「みんな、すごく大事なデータをすべてWindowsに任せちゃう。例えば、ウイルス対策ソフトを使うとこんな表示が出る時がある。『余計なファイルを削除しました』――おい、余計なファイルって何だよ、みたいなことがあって。その辺りのメカニズムをよく知った上で、ツールを使ったほうがいいですね」

 「中身を知ろうとしないのは、“ツール”があふれる時代背景も影響している」――岡嶋先生はそう指摘する。「昔は物理的、金銭的に“できないこと”ばかりでした。今はそういった壁は興味一つでいくらでも取り払える時代。中身を知るモチベーションはある程度“できない”という制約がないと出てこないものです」

 以前はWebページを作るのにHTMLタグを知らなければならなかったが、最近では確かにHTMLタグの知識はなくてもWebページは作れる。苦労してタグを勉強しホームページを作るより、ブログなど既存のツールを指示通りに使う方が断然楽だし、「自由にできる」と言われると逆に動けないのかもしれない。一から調べて何かを作り出そうとしても、結果が保証されているわけじゃない。「どうしてもどこかで無駄になるんじゃないかって思って、ためらってしまうのでしょう」

女子だって突き詰めて考えることもある

 中身を知った上でツールを使うことの大事さはよく分かった。しかし、どこから始めたらいいのか。今のままでは、基礎も足りない上に、中身を知ろうとするモチベーションも上がらない。

 「数式とか、難しい言葉で説明する必要はまったくありません。簡単な図形に変換できるとなおいい。トムとジェリーで、ジェリー(ネズミ)を捕まえるためにトムが作る妙な機械のように、“こんな風に動いている”ってことだけが分かればいいんじゃないかな」

 女性の日常生活においても、ロジックを立てている場面はいくつもあるのではと岡嶋先生。「女性は化粧をするとき、(チークやリップ、シャドウなど)色の組み合わせを考える。どうしたらよく見えるのか。それが自分に合うのはどれだと考えている過程で、その本質はなんだろうって考えているんだと思う」。化粧を考えると、日々女性は無意識のうちにロジックを組み立てているのかもしれない。もしや、筆者も理系思考の持ち主だったのでは。

 喜んでいる筆者を見て、岡嶋先生は言葉を付け足した。「(ロジックを組み立てることを)感覚的なところで済ましてしまうと、理系思考は一瞬で終わってしまいます……」。ぎくっ。筆者もちょっと理系思考に近づけた気がするが、一瞬で終わらないように、岡嶋先生に聞いた理系思考について復習してみる。

理系思考のおさらい

  • 理系思考で本質や中身に迫ることが重要
  • 中身を分からないと間違いに気づけないし修正できない。だから理系思考になるといい
  • 理系思考になるには数式などを駆使する前に、ロジックを組み立てることが大切。簡単に物事や状況を図に変換できるとなおいい


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