ニーズもソリューションも、相手と一緒に検討する売れるコンサルティング・セールスへの5つの道

取引先開拓のための商談を成功させるためには、質問と主張のバランスが重要だ。質問をしたり、相手の話を聞いたりすることは誰でもできるが、高いレベルでの相互理解に結び付けられる人となると非常に少ない。

» 2009年07月01日 12時50分 公開
[マハン・カルサー, ランディ・イリッグ, (訳)フランクリン・コヴィー・ジャパン,Business Media 誠]

連載「売れるコンサルティング・セールスへの5つの道」とは

 連載「売れるコンサルティング・セールスへの5つの道」は、フランクリン・コヴィー・ジャパンの書籍『ヘルピング・クライアンツ・サクシード』から抜粋したものです。営業マンと顧客の関係をどうすれば、長期間に渡る良好な関係を築けるか――そんな疑問に答える連載です。


 取引先開拓のための商談を成功させるためには、質問と主張のバランスが重要だ。スティーブン・R・コヴィーが指摘する第5の習慣「理解してから理解される」は、コンサルタントにも有効なスキルとなる。上手に質問すると、そこに相互理解が生まれる。コンサルタントはクライアントが本当に大切にしているものを理解し、クライアントは自分たちの置かれた状況や可能性をしっかり把握できるうえに、理解してもらったという気持ちになる。クライアントの話をうまく引き出すと、それをこちらの話とマッチさせやすくなるのだ。

基本的前提その5:理解してから理解される

 質問をしたり、相手の話を聞いたりすることは誰でもできるが、高いレベルでの相互理解に結び付けられる人となると非常に少ない。有益な質問の仕方か、または全神経を集中して相手の話に真に耳を傾ける能力、あるいはその両方が欠けていることに気づいていないのだ。

 人を動かす唯一の方法は、相手が欲するものを見きわめ、手に入れる方法を教えてやることだ。

――デール・カーネギー

 コンサルタントはクライアントと接する際、次の3つの伝統的な手法をとりがちだ。

1.こちらが一方的に話す

 質問と主張のバランスがとれていないときは、大概主張が多くなりがちだ。「一方的に話す」のは必ずしも悪いというわけではない。信頼を得ているビジネス・アドバイザーは時に、クライアントがすべきことを強く主張することで、恐怖心、不安、疑念を払拭させたりする。つまり、一方的に話す手法は常に我々の持つ選択肢の一つだ。にもかかわらず、自分たちのニーズに最適とクライアントが感じるようなソリューションを生み出す可能性は低い。

 一方的に話すことの問題点は次のようなものだ。

  • こちらが話そうと思ったことがクライアントにとっては興味がなく、関連性もない。双方にとって時間の浪費となり、商談が続かない。
  • こちらの主張が間違っている可能性がある(少なくとも確率的にはあり得ることだ)。
  • クライアントが話に乗ってこない可能性があり、その場合、セールスや構想が頓挫しかねない。
  • 横柄か無知、またはその両方の印象を持たれる。
  • 質問すればもっと多くの機会が生まれるかもしれないのに、一つの課題について話すことで大きな利益を失う場合がある。
  • クライアントに応じた話題や用語、優先事項の使い分け、落とし穴に対する早めの発見・対策、理解を通じた信頼関係の構築などができなくなる。

2.相手の要求を鵜呑みにする

 クライアントは自分たちのニーズについて説明し、こちらはそれを満たすソリューションを提案する。実に単純なことである。クライアントの要求に応じるのは必ずしも悪いことではなく、意見が一致しているときは特にそうだ。だが、要求に沿ったソリューションを提案しても、相手が的外れと感じて話が御破算になってしまったり、要求と異なるソリューションを提案した別の業者と契約したり、といったことがよくあるものだ。また私の経験でも、要求通りのものを提供しながらクライアントに満足してもらえなかったことが度々あった。

 クライアントの要求を鵜呑みにした場合のマイナス面としては、次のようなものが考えられる。

  • クライアントが間違っているのに、こちらが非難され、深刻な事態に発展したりすることがある。
  • こちらの論旨をリードできなくなる。
  • 解決しようとしている問題や成功の測定方法について、こちらの理解が不足する場合がある。
  • 多くの機会を埋もれたままにしかねない。

3.当て推量をする

 もちろん、我々コンサルタントとしては、「当て推量」という表現は好まず、診断、評価、分析などと言う。だが、情報が不足していたら、当て推量と言われても致し方ない。例えば、クライアントと1、2時間話をしたコンサルタントが、次のような当て推量をはじめる。彼らの本当のニーズは何だろう。実際の問題は何だと思うか。彼らはなぜ今までにそれを解決しなかったのか。こちらとしては、どんな提案を行うべきか。話をした相手は適切だったか。この支払いをするだけの資金力はあるだろうか。いくら請求すべきか。競合相手はどこだと思われるか。

 我々コンサルタントは知的な人間で、この当て推量という作業の体裁を取り繕い、「提案」と呼んでいる。また、どの程度当て推量をしているかも常にわかっていて、当て推量が多ければ、それだけ提案も長たらしくなる。対面での顧客開拓のコストが増え続けると、それに比例して当て推量のコストも大きく膨らむ。

4.一緒に検討する

 これまでの手法とは異なる、別の対処法がある。それは、クライアントのニーズを真に満たすソリューションを一緒に追求するというものだ(この場合、ソリューションをゆくゆく提供するのは我々とは限らず、ほかの業者になるかもしれない)。

 もちろん、これは簡単なことではない。クライアントは押しつけや鵜呑み、当て推量をするものと、クライアントは思い込んでいるのだから。更に困ったことに、「お宅は専門家なのだから」と言ってこちらに一方的に話させたり、「言うとおりにしてくれればいい」と要求を鵜呑みにさせたり、「すべて提案依頼書に書いてある」と言って当て推量を強制したりする場合もある。


 この「一緒に検討する」というやり方にも欠点があるといえなくはない。1つは、時間がかかりすぎる点だ。だが、その見方は誤っていると私は断言する。時間の使い方が違うだけで、そのほうが能率的といえる。クライアントのニーズを満たすソリューションを持っていないなら、あとからではなく、早い段階でそれに気づくほうが時間的に、またコスト面でも効果的なのだ。

 このことは2つ目の欠点につながっていく。相手のニーズを真に満たすソリューションを我々が持ち合わせていないことがばれ、そうすれば取引先を「失う」羽目になるという。だが、持ってもいないものを失うことはない。相手のニーズを満たさないものなら、どっちみち売れないだろう。仮に売れたとしても、あとになって不満を持たれたら、やはり顧客を「失う」ことになるのだ。そういうわけで、「一緒に検討する」という手法の短所なるものを長所に変え、良い面を活かすことは可能だと私は声を大にして叫びたい。


 一緒に検討するという手法により、クライアントのニーズを真に満たすソリューションの提供という目的を実現すること、それが本書のねらいである。毎回そうなるとは限らないが、その確率を確実に高めることは可能なのだ。

連載「売れるコンサルティング・セールスへの5つの道」、いかがだったでしょうか? 誠 Biz.IDでの連載は今回でいったん終了です。続きは書籍でお楽しみください。


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