あなたとクライアントが望むものは同じ売れるコンサルティング・セールスへの5つの道

「買ってもらいさえすればいい」ではセールスマンは失格。何よりも顧客の成功に貢献することが一番重要だ。資産活用から生産性、品質管理、顧客満足の向上、主要業績の改善――これらを実現できなければ良好な取引関係を維持できないのである。

» 2009年06月25日 20時30分 公開
[マハン・カルサー, ランディ・イリッグ, (訳)フランクリン・コヴィー・ジャパン,Business Media 誠]

連載「売れるコンサルティング・セールスへの5つの道」とは

 連載「売れるコンサルティング・セールスへの5つの道」は、フランクリン・コヴィー・ジャパンの書籍『ヘルピング・クライアンツ・サクシード』から抜粋したものです。営業マンと顧客の関係をどうすれば、長期間に渡る良好な関係を築けるか――そんな疑問に答える連載です。


 セールスや意思決定の手法には必ず、基礎となる前提や考え方というものがある。それは明確に示される場合もあれば、そうでない場合もある。本書で紹介する手法の前提は、次の5つだ。

  1. コンサルタントとクライアントが望むものは同じ
  2. 動機はテクニックより重要である(そして、テクニックもまた重要である)
  3. 課題なくしてソリューションはあり得ない
  4. 手法がモノを言う
  5. 理解してから理解される

基本的前提その1:コンサルタントとクライアントが望むものは同じ

 コンサルタントとクライアントの利害が一致する段階がある。クライアントのニーズを的確に満たすソリューションを双方が追求するときだ。そうしたソリューションが実現しそうもない場合、クライアントはソリューションそのものをあきらめるか、それとも別の業者に乗り換えるかの判断をする。このようなケースが相当数に達すると、コンサルタントにとっては痛手となる。

 クライアントが一度ソリューションを採用したのち、それがニーズに合わないことに気づいたとしたら、それはコンサルタントにとって更に悪い状況だ。そうすると、そのソリューションの修正によって得た利益をすべて、ときにはそれ以上をはき出すことになりかねない。また、この是正が効果を上げないと、クライアントに不満を抱かせ、ほかのクライアントを紹介してもらえなくなる。労力と資金を使って対応に努めても、クライアントの不満や幻滅を解消できるとは限らないのだ。

 さらに、インターネットが普及した今では、買い手が自らの経験を、良いものも悪いものも含め簡単に公開できる。私が取引した会社の中にも、販売して何億ドルもの損失を被って後悔したところがある。ニーズに合ったソリューションを得ていないという思いをクライアントに抱かせるのは、コンサルタントにとっても損であることをおわかりいただけると思う。

 損失を被るのはクライアント側も同じだ。ソリューションの購入に至らなければ、解決すべき問題がそのまま残る。達成したいと思っている結果がどれも実現しないことになる。ソリューションを購入した場合でも、それがニーズを満たさないとなれば、期待していた金銭的利益をあきらめなければならないばかりか、調達・導入プロセスにおいて莫大な資金や時間を浪費することになる。こうしたプロジェクトに取り組むたびに、コンサルタントとクライアント側の推進者に向けられる冷たい視線や抵抗は幾何級数的に増え、成功の可能性は下がっていく。

 だから、コンサルタントとクライアントはともに、ニーズを的確に満たすソリューションを追求するのだ。それを手にすることができれば双方にとって成功であり、できなければ両方とも失敗に終わる。これは幸いである。両者が同じものを求めていることがわかれば、仕事はしやすいからだ。

 問題は、それでもクライアントのニーズを満たすソリューションが必ずしも提供されるとは限らない点だ。お互いにそれを追求していながら、そうしなければ両方とも損失を被るというのに、逆効果となるような行動に出てしまうケースが多々あるのだ。賢明な判断ができるよう、そうした行動にもっと敏感にならなければいけない。

コンサルタント側に見られる有害な行動

 クライアントのニーズを完ぺきに満たすソリューションを提供すべきコンサルタントが、それに逆行するような行動をとってしまうことがある。あるコンサルタントにそうした行動の例を挙げてもらった。

  • クライアントの話をまともに聞かない
  • 思い込みをする
  • 商談相手の選択を間違う
  • クライアントのニーズは自分たちのほうがよく分かっていると勘違いする
  • クライアントのニーズを自分たちのソリューションにはめ込もうとする
  • 成約という結果にこだわりすぎる
  • 時間をかけすぎる
  • 相手のビジネスをよく理解しない

クライアント側に見られる有害な行動

 クライアントのほうはどうだろうか。自らのニーズを満たすソリューションを求めつつも、彼らも商談の進展を阻むような非生産的な行動に出ることがある。クライアントに関してコンサルタントたちがよくこぼす不平をまとめてみた。

  • 自分たちのニーズを分かっていない
  • 自分たちのニーズを明確に説明できない
  • 自分たちのニーズに関して見解が統一されていない
  • 有益な情報を出してくれない
  • 適切な担当者と話をさせてくれない
  • 所要期間、資金、人材の見積りが現実的でない
  • ビジネスセンスより駆け引きや個人的問題を重視する
  • ぐずぐずと先延ばしにする
  • 意思決定が遅い

 クライアントのニーズを的確に満たすソリューションを提供する努力を続ければ、お互いの行動が自然とかみ合い、共通の目的へと到達できるはずだ。そうした努力をしているか否かが、必要な行動をすべて実行しているかチェックするための基準になる。クライアントに何かを要求したり、逆にクライアントから何かを求められたりしたときは、それによってクライアントのニーズを的確に満たすソリューションに近づけるのか、それとも逆戻りするのかを必ず検討するようにしたい。

 共通の利害、すなわち両者がともに追求するものに向けて努力するからといって、双方の利害が食い違ったり、真っ向からぶつかったりすることがないとは限らない。例えば、クライアントのために価値を生み出そうとするとき、つまりパイを拡大させようという段階では、双方が求めるものは同じで、もっと大きなパイだ。ところが、増加した価値に対する分担、つまりパイを分ける話になると、話が違ってくる。自分の取り分はもっと多くてしかるべき、とお互いに思うのだ。パイを大きくすればそれなりの分け前を得やすくなる、と人は考えるからだ。

 次回は「信頼=動機+専門知識」です。お楽しみに。

勝つチームを作る「トラスト・リーダーシップ」セミナー開催のお知らせ

 フランクリン・コヴィー・ジャパンは8月20日、管理職向けセミナー「トラスト・リーダーシップ」を開催します。

 100年に1度の不況と言われる昨今、多くの企業がリストラや残業の削減を行う中で、企業と社員、上司と部下という関係における“信頼”が低下しています。本セミナーでは、フランクリン・コヴィー・ジャパンの佐藤亙(さとう・わたる)取締役副社長が、リーダーとして結果を出すために必要なチームメンバーとの信頼について、その基本原則と信頼構築のための具体的な手法をお伝えします。

 ゲスト講師にはスポーツジャーナリストの二宮清純(にのみや・せいじゅん)氏を迎え、スポーツ界においてチームメンバーとの信頼によりチームを勝利に導いた事例をご紹介しながら、スポーツとビジネスに共通する“信頼”を考えます。

開催概要
開催日程 8月20日(木)9時〜17時
対象者 管理職、プロジェクトリーダー、成果を望むビジネスパーソン
会場 椿山荘(東京都文京区関口2-10-8)
受講料 2万9400円〜4万2000円(昼食付き)※参加人数、研修導入状況により異なります
定員 300名
申し込み方法 WebサイトまたはFAX 03-3264-7407 にて
支払方法 銀行振込
問い合わせ先 TEL 03-3264-7417 フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社 セールス・プランニング・チーム(月〜金 9時〜17時)

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