ビジネスにも“守破離” 155のフレームワークをどうやって身に付けたか最強フレームワークの達人に聞く

MECE、PEST、SWOT、VRIO、ERRC――。これらの4文字英語はすべてビジネスのフレームワークと呼ばれるものだ。「フレームワークは頭の中で考えていることを可視化することだ」というのは、『最強フレームワーク100』の著者である永田豊志さんである。

» 2009年06月24日 11時00分 公開
[鷹木創,Business Media 誠]

 MECE、PEST、SWOT、VRIO、ERRC――。一体、何のことか分からない人もいるはず。これらの4文字英語はすべてビジネスのフレームワークと呼ばれるものだ。「フレームワークなんて分からなくても仕事はできる」という人もいるだろうが、こんな考えもある。

 『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』の著者である永田豊志さんは、「役職が上がれば上がるほど、フレームワークは共通言語になる。きちんと身に付けることで、現場も経営も仕事の進め方が変わってくる」という。そんな永田さんに話を聞いた。


武道でいうところの型

 永田さんにとって、フレームワークとは何だろうか。「基本的には企画の引き出し。武道でいうところの型です。武道の基本は型をひと通り覚えること。同じようにビジネスパーソンにとっての基本、基礎に当たるものがビジネスフレームワークなんです」。まずは基本の枠組みであるフレームワークを覚えて、応用はそれから――というわけだ。

 元々編集者として仕事をしていた永田さんは、書籍のアイデア出しにもフレームワークを活用。「新入社員のころはいい企画がなかなか思いつかないから、企画の本数で勝負するしかない」と永田さん。100本のアイデアを考え、そこから1本に絞って編集会議で提案していた。

 簡単に言うが、元になった100本のアイデアをどうやって作るかが問題なのである。永田さんの解決策は「10×10のマトリックスにテーマとターゲットをプロットした」こと。こうして「すぐに100本作れた」というのがフレームワーク原体験だった。

 「フレームワークは頭の中で考えていることを可視化すること」。例えば何かを分類したい時、何となく分類すると、要素がもれたり、ダブったりするものだ。そこで冒頭のMECEというフレームワークの考え方に従えば、年齢別や所在地別、既婚未婚別で分けることで成人女性の分類をもれなく、ダブりなくできる。余計なことを考えなくても、頭の中にあった分類イメージを簡単に実現できるのである。

 「何か考えていたことやデータを入れると、何がしかの回答が出てくるのがフレームワーク」。何かを入力すると、何かが出力されると聞くと、何となくWebサービスのAPIのような感じもしてくる。「まさにAPIそのもの。フレームワークAPIと言えるかもしれません」

アイデアは選択肢、パワーストーンもiPhoneも選択肢

 いろいろな出力に使えるフレームワーク。組み合わせて使うことも効果的だ。ただ、時間管理やマーケット分析などに使うフレームワークと、アイデア発想系のフレームワークは「根本的に違う」という。「ビジネスフレームワークのほとんどは改善・分析系。ロジカルシンキングが中心です。ロジカルシンキングだけでものを作っているととても面白くないものばかりになってしまう。例えば任天堂Wiiも、ロジカルシンキングでは生み出せません」

 アイデア系のフレームワークをまとめたのが、6月27日発売となる『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』。ロジカルシンキングのフレームワークで型を身につけて、時間を余らせ、空いた時間でアイデア出し――。そんな時にクリエイティブ用の発想フレームワークを使うのだという。

 「アイデアというとキラキラしていて、すばらしいもののようなイメージがあるけど、僕にとっては単なる“選択肢”。すごく身近で、いつもの出勤ルートとは違うルートで出社することもアイデア。価値があるものでなくてはいけないと考えるとアイデアを出せなくなる。取るに足らないアイデアをたくさん生み出すこと。100個出せば、1個ぐらいいいアイデアが出てきます」

 『発想フレームワーク55』では、身に付けると力がわいてくるというパワーストーンの話にも触れた。「パワーストーンなんて『うさんくさい』と言われたけど、あえて入れた」。世の中はあらゆるものが仮説で成り立っている、というのが永田さんの持論。仮説の上でビジネスを動かさなければいけない。パワーストーンのようなスピリチュアルなものでも選択肢にはなるわけだ。「スピリチュアルなことを全面的に賛成するつもりはないけど、全否定して選択肢ごとなくすこともないでしょう。石の効果は分からないけど、少なくともパワーストーンを見に付けているビジネスパーソンとは話も弾みますし」。

 ビジネス会話のきっかけとしては天気の話などがありがちだが、パーソナルな話ではないのであまり盛り上がらない。一方、身につけているものなら話が弾む。「iPhoneを見せびらかすのと一緒」と笑う永田さん。「ポジティブな気持ちにならないと発想は出てこない。それを持つことでポジティブな気持ちになれるならそれでOKなんじゃないかな」。iPhoneもパワーストーンも同列の選択肢なのである。

自分なりのフレームワークを

 ビジネスにしても発想法にしてもフレームワークを活用すると良さそうなことは分かった。でもやり方が分からなかったり、自分の方法に合わない場合があったりする。「僕自身はフレームワークをそのまま使う必要ないと思っています。GTDも確かによかったけど、自分だったら、この通りにはやらないなと思いました。フレームワークのいいところは、フレームワーク自体を使うだけでなく、エッセンスとしていいところがあれば自分自身が作り上げたやり方に移植できることです」

 とりあえずよく分からないのであれば、まずはやってみる。仕事の進め方に合わなかったらほかのフレームワークを選べばいいし、その後で本質的なことが分かったら、省略したり追加したりしてもいい。自分自身で別のものを作ったっていいのだ。

 「コンサルタント会社が作ったフレームワークはコンサルタントのもの。普通の企画の人間が使うのに適したものではありません。100個のフレームワークをそのままそのまま受け取る必要はありませんよ」。『最強フレームワーク100』『発想フレームワーク55』――併せると155のフレームワークを学べるわけだが、すべてを真に受ける必要はない。これらをヒントに自分なりのフレームワークを探してみてはいかがだろうか。

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