会社の方針がはっきりしなくても――部下が喜ぶストーリーで方針を伝える方法人を動かす話し方講座(1/2 ページ)

最近、主任研修や管理職層の研修などをやっていると特によく聞かれるのが「会社の方針がはっきりしない!」ということ。しかし、この不況下で一寸先も分からないわけですから、明確な方針がないのも分かります。とはいえ、そのぼんやりとした方針を伝える必要はあります。どうやって伝えたらいいでしょうか。

» 2009年06月23日 14時00分 公開
[水野浩志,Business Media 誠]

 世界的な不況の影響でビジネスの世界にも大きな変化が起きています。そんな中で、会社の方針が分からない、会社の方針が伝えられないと悩んでいる組織人もたくさんいます。今日は、そんな人たちのために、いかにして方針を作り、それを伝えていくかということを考えてみましょう。

あなたは会社の方針をきちんと理解しているか?

 最近、主任研修管理職層の研修などをやっていると特によく聞かれるのが、

  • 会社の方針がはっきりしない!

 という文句。「皆さんは、会社の方針を理解して、それに基づいてきちんと部下を指導していますか?」なんてことを聞いてみますと、最初のうちは「やってますよ」的な発言をしていたりもするんですが、深入りして聞いていくとだんだん話がモヤモヤした感じになり、そのうち「いやあ正直、会社の方針がよく分からないんですよね」という話になってきます。

 すると、ほかの参加者も同調し始めて「朝令暮改が多すぎる」「そもそも、自分の上司が会社の方針を理解していない」「無茶な数字や現場無視のコスト削減の指示しか下りてこない」 と会社の文句がぞろぞろ出てきて、しまいには、場末の居酒屋で繰り広げられる愚痴大会のような様相を呈してきます。

 まあ、勤め人としてのつらさや大変さは理解できます。ですが、そんな環境の中でも、部下や後輩を持つ立場であれば、きちんと彼らに方針を示してやらないと、チームがバラバラになってしまいます。では、いったいどうしたら部下や後輩たちが納得するような方針を示してやれるのでしょうか?

マインド:明確な方針はあきらめよ

 昨年の末から、市場が大きく変わってしまいました。世間では、「100年に1度の大不況」といって大騒ぎになっていますよね。これだけの変化が起きると、規模が多い会社や、勘のよろしくない経営者がいる会社では、この環境の変化にきちんと対応できないようです。もしあなたがそういった企業に勤めているとしたら、残念ながら、

  • 上からきちんとした方針が下されるのを待つのは時間の無駄

 だと言うしかないかもしれません。なぜなら、今の段階でトップ自身が明確な方針を持っていないのですから。なので、ここはもう自分自身が腹をくくって、

  • 自らが方針を作り、その方針に沿って部下を導く

 しかないんですよね。こんなことを言うと「組織で動く以上、上を無視して勝手に方針を作るなんて言語道断!」と言われるかもしれません。だから、もし仮にうすらぼんやりしている方針が下りてきているなら、そのうすらぼんやりした方針を、なんとか理解する努力をするべきでしょう。

 しかしそれでもなお私は、自らが方針を作り、その方針に沿って部下を導く余地があるように思います。それはいったい何かというと、

  • ビジネスパーソンとしての成長の方針を示す

ということであります。

 会社の方針がいかに不明確であろうと、それとは別に、ビジネスパーソンとしての能力を求められることは間違いありません。もちろん、置かれた立場や環境によって、求められる知識が変わることはあります。しかし、交渉力や文章力といったコミュニケーションスキルや、時間管理や創造的思考といったような「ビジネスパーソン全てに求められる根底の能力」については、全ての人たちに成長の余地が残されているのです。

 だからこそ、混沌として明確な方針が見えないままに部下や後輩を引っ張っていくとしたら、まずはその「これからの時代を生き抜くための根源の能力を育成する」ことを方針に打ち出すべき。そうして彼らを導いてあげるということは、1つの方法として有効なのです。

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