説明とは相手に向かって話すことではない――話し下手な人のための説明力向上法人を動かす話し方講座(1/2 ページ)

日常業務の中で必須となる「説明の場」。でも説明が不得意な人っていますよね? 今回は相手の理解、納得度を高めるテクニックを紹介します。

» 2009年06月15日 12時30分 公開
[水野浩志,Business Media 誠]

 日常業務の中で、ほぼ毎日あると言っても過言ではない、説明の場。上司や部下、顧客や取引先などに、きちんと理解してもらえるように説明できるかどうかで、自分自身のビジネスが、うまくいくかいかないかが大きく変わってきます。

 しかし、説明が不得意な人って結構いらっしゃいますよね。ということで、今回は、説明が不得意な人のための、説明力向上の方法についてお話ししましょう。

説明が不得意な人が見せる特有の行動とは?

 先日、とある営業の方から、商談を受けることとなりました。その方は、営業とは思えないくらいおどおどとしていて、会った瞬間から、「ちょっとこれは期待できそうにないぞ」という予感がしました。

 商談が始まると、やっぱりパッとしません。説明そのものがあまり上手くないので、聞いている私としても何が言いたいかよく分からず、小首をかしげていました。そんな姿が見えたのか、そうでなくてもこちらに目線を合わせない彼はますます目線を落とし、資料ばかりを見るようになってしまいました。そして、説明の口調も慌ただしくなり、まずは先にこちらのことを全部言い切ってしまおうと言わんばかりに話をし続け、私は完全に置いてけぼり状態。

 そんな、気まずい空気が流れた中で、彼の説明が終わりました。彼は、恐る恐る顔を上げ

 で、今の話、いかがでしょうか?


 と一言。

 いやあ、よく分からない上に、一方的すぎる話しっぷり。その上で、その質問がくるかと、あっけにとられてしまい、一瞬言葉を失ってしまいました。

 当然ながら、その商談は不成立。彼は気落ちして帰って行きました。

 でも、彼のその姿を見ていると、ここまで説明が下手な人も少ないものの、彼と同じ間違いをしている人は、結構多いだろうなあと思いました。

マインド:説明とは、相手に向かって話すことではない

 多くの人は「説明とは自分が相手に向かって話すことだ」と認識しているようです。だから、説明するということを考え始めると、「どうやって話そうか」ということに、かなり気持ちが持って行かれてしまうようなんです。

 しかし、あえて逆説的な表現をするならば、

  • 説明とは、相手に向かって話すことではない

 ということを、まずは強調しておきましょう。いや、もちろん話すことは話すんですが、それは、表層的に見える行為の1つでしかなく、それ以上に大切なことがあるんですよね。

 それは、

  • 説明とは、相手に理解、納得をしてもらうこと

 だということ。当たり前過ぎて何を言っているんだ、と思われるかもしれませんが、説明が下手な人は、どうやらこの当たり前すぎる事実を、説明する場で忘れてしまうようなんです。

 先ほど登場してくださった方も、まさにこの典型パターン。彼はおそらく、事前に話をすることを決めてはきたのでしょう。しかし、説明の場に立って話しているときには、私に対してどこまで理解できているかという気配りを、まったくといっていいほどしませんでした。

 その後、私自身が私の理解度を無視して話をしていることに不快感を感じ始めたとき、ようやく彼はそのことに気づいたのです。しかしその時にはもう、私に対して理解や納得をしてもらおうということよりもむしろ、「早く自分の説明を終わらせてしまおう」という気持ちの方が強く、自分が決めた話をやりきることに気持ちが行ってしまったようです。

 こうして、説明が終わった後は、何とも気まずい状態が出来上がってしまい、商談も、残念ながら不成立、ということになってしまったわけです。

 説明とは相手に理解、納得をしてもらうこと。この当たり前の事実を、まずはきちんと認識しておきましょう。

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