「もはや残業は美徳ではない」――ファイザー(前編)“有給&残業”攻略法(1/2 ページ)

「金曜は正午で退社」「特別休暇の種類も豊富」――ファイザーの残業削減と休暇取得への取り組みについて、2回に渡って見ていこう。

» 2009年05月27日 19時00分 公開
[塙恵子,Business Media 誠]

 「花の金曜日」(ハナキン)という言葉がある。週休2日制導入当時、晴れて休日の前日となった金曜の夜に遊び回るという風潮ができたことからこう呼ばれたという。筆者は知らなかったが、金曜日よりも店などが空いているために、木曜日を「花の木曜日」(ハナモク)と呼んでいたこともあるそうだ。

 筆者は残念ながら「花の○曜日」とは無縁だが、医薬品の製造、販売で有名なファイザーには、もはや死語になった“ハナキン”いや“ハナモク”という言葉を使いたくなる、そんな制度がある。


 1960年、70年代に週休2日制、フレックス制を導入するなど、他社に先駆けてワークライフバランス支援を積極的に行ってきたファイザー。社員数は約4700人(2008年11月30日現在)。そのうち女性の割合は約4分の1だが、ここ数年は新卒採用の約半数が女性になってきており、ワーキングマザーに対する支援も必要になってきた。最近は育児のための短縮勤務、在宅勤務などの制度も導入し、仕事と子育てを両立する労働環境作りも心がけているという。

 現在「ワークライフマネージメント」として、「残業を減らしていこう」「ただ減らすだけではなく、働き方を変えよう」という取り組みを、残業対策や休暇などの運営・管理を担当する人事部門の労政部を中心に実施。2008年には人事部門内に「GPTW(グレート・プレース・トゥ・ワーク:働きがいのある、働きやすい職場)推進室」(現・GPTW推進部)という専門部署も設け、労政部とともにワークライフマネージメントを推進している。

 ファイザー残業削減や休暇取得促進への取り組みを、労政部の海宝和養(かいほう・かずやす)部長と、奈須野雅子(なすの・まさこ)さんに聞いた。まずは残業削減への取り組みについて見ていこう。

金曜日を有効活用 旅行や役所の手続きも

photo 海宝部長

 前述の通り、ファイザーはフレックス制を導入しており(コアタイム 午前10時〜正午/午後2時〜4時)、社員それぞれ退社時間は異なるが、所定就業時間は午前9時15分〜午後6時(うち45分が昼休み)、金曜日だけは午後4時を終業としており週38時間の勤務だ。

 本社では職種を問わず午後4時退社を目指す。ただし、顧客と接することの多い全国各地の営業所などでは、本社と異なり月曜から金曜日の労働時間は均一で、金曜日の時間短縮は行なわず、年間4日の休日の付与で調整している。

 「なかなか午後4時に退出するのは難しいように思えるが、派遣社員などは時間通りに退社する。午後4時に設定したことで、午後6時にはほとんどの人が会社を出る」(海宝部長)。金曜日の午後4時の定時に帰る集団が少しでも存在することで、ほかの社員にも“帰らなければならない”という意識が生まれるようだ。

 また本社では2008年、金曜日の正午以降のコアタイム時間中でも退社できる制度「ウィークエンドフレックス」を試験的に導入した。上司の了解が取れれば、半休や有給休暇を使う必要はないという。

 「この時間を使って語学のスキルアップや資格取得を目指して自己啓発に励んだり、趣味を楽しんでもいい。人が少ない平日に映画館や、美術館などに行ったり、土日含めて2泊3日の旅行を楽しむ人もいます。また介護に活用してる人もいます」(海宝部長)。役所への書類提出や運転免許の書き換えなど、平日に限られた手続きを行うにも、この制度は便利そうだ。

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