売れない新人の同行で得た、思いがけない好成績とは「ユニット式営業組織」のススメ(1/2 ページ)

著者はある時、2人で営業に行く方が、はるかに契約を取りやすいことに気付きました。現代の「営業」現場の持つ本質的な理由が、そこにはあったのです。

» 2009年05月20日 12時30分 公開
[吉見範一,Business Media 誠]

誠 Biz.IDの新連載
まだ1人で営業に行っているんですか? 〜2人で始める「ユニット式営業組織」のススメ〜

 ほとんどの会社で「営業」は単独行動が基本になっています。しかし著者はあるとき、2人で営業に行くほうが、はるかに契約を取りやすいことに気がつきました。それは決して偶然ではなく、現代の「営業」現場の持つ本質的な理由がそこにはあったのです。


 大勢の営業マンを抱える営業所に行くと、大抵目にする光景があります。それは、個人別の営業成績を表す、壁に張った棒グラフ。それは、営業マンを個人単位で管理し、競争させる、「個人別営業組織」の象徴とも言える光景です。

 かつては私もそれが当たり前だと思っていました。ところが、ある時そんな思いこみがひっくり返されるような衝撃的な事件が起きました。まずはその話から始めましょう。

「今日は、一緒に営業行ってみようか?」

 初めまして、営業「ツール」コンサルタントの吉見範一です。最近、私をモデルにしたビジネス小説ができてしまったせいもあって、すっかり有名になってしまいました。落ち着いて街を歩けない日がくるんじゃないかとワクワクドキドキしている「紙芝居★営業マン」と言えば私のことです。え、誰ですか? そんな日は決してこないから安心しろなんて言ってるのは。ちょっとぐらいは人気者になる夢を持たせてくださいよ。

 思えば私が営業の仕事を始めて35年、学習教材から始まって袋小物、生活雑貨、電気部材、電話会社選択サービス、クレジット会社、光ファイバーとさまざまな営業の仕事を経験してきましたが、どこの現場でも最終的にはトップクラスの売り上げを挙げられたのはささやかな自慢です。

 なんて言うと本当に自慢げに見えちゃいますが、正直、自分の力だけでここまで来られたわけじゃ全然ありません。いろいろな人と出会い、助けられ、偶然の発見もあり、教えられたこともあって35年間営業一筋に生きてくることができました。それがなかったら、全然売れなかった1年目の最初の3カ月で、営業の仕事からはドロップアウトしていたことでしょう。本当に、いくら感謝しても足りないと思っています。

 だから、なんです。その日、私が

 「今日は、一緒に営業行ってみようか?」


 と、明美ちゃんに声をかけたのは。決して、女好きのおじさんだからじゃないんですよ。

 明美ちゃんというのは2003年ごろに私が仕事をしていた、電話会社を登録してもらう「マイライン」営業所の新人の女の子でした。もちろん、営業経験ゼロの新人が売れるはずもなく、成績が上がらなくて困っていたので、よーしここは一丁、俺が営業の見本を見せてやろう! そこからノウハウを学んでくれればそれでいいし、今日の仕事の一部でも彼女に担当させて、売り上げも一部つけてやれば少しは自信にもなるし気持ちも明るくなるだろう! という親切心が理由でした。

 誰に言っても信じてくれないんですが本当ですからね。明美ちゃんが若くてキレイで気だてのいい子だったからだなんて、そんな理由は3割ぐらいしかなかったんですよ、本当に。

 おっと、何か余計なことを口走った気もしますが、とにかくその一言がきっかけで、私と明美ちゃんはその日、一緒に営業に出ることになりました。忘れもしない、2003年の……忘れもしない……たぶん2月ごろのことでした。

 ところが、事態は私がまったく予想もしていなかったような方向に進みました。

とにかくよく売れたんです

 私の予想以上にどんどん契約が取れていくんです。

 もちろん、ちょっくら俺のノウハウでも見せてやろうと思って明美ちゃんを連れて行ったわけですから、売れてくれないことには話になりません。1件目の契約が取れて一安心、2件目も順調に成約できて鼻高々、3件目が取れるころには私もすっかりいい気になりました。同行した明美ちゃんもすっかり尊敬のまなざしになっているんですから、もうたまりません。

 調子に乗って4件目、5件目と注文をとり続けました。そのたびに明美ちゃんの私を見る目が違ってくる。絶好調! どんなもんだいオレ様! 営業なんてちょろいちょろい!

 と、天狗(てんぐ)になりかけたところで私は

 「ちょっと待てよ……なにか変だな?」


 と気がつきました。

 もちろん、売れるのはウレシイですよ。気持ちイイですよ。

 でも……売れすぎる。あまりにも簡単に売れすぎる。もちろん売る自信はありましたが、それにしてもちょっとその限度を超えるぐらいによく売れる。いくらなんでもありえないぐらいのペースでした。これはいったいどういうことなのか?

 「まさか……若くてキレイな女の子を連れてるから売れるのか?」


 それはオジサン営業マンとしては考えたくないことでした。でももしそうだったらどうしよう? この子に営業のノウハウ教えたら、トップの座を奪われ、自慢できなくなり、ことと次第によっては失業の危機!?

 まあ、現実にそんな心配をしたわけではありませんけど、それにしても不思議なくらいよく売れました。だから、これはどうしてなんだろう? と一生懸命考えました。それがこの記事を生んだきっかけです。

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