「創造的な選択」の四つの原則クリエイティブ・チョイス

われわれの選択は1人1人、1回1回、違うもの。こうした選択のうち、創造的な選択を実践するためのヒントはないか? という切り口でまとめたのが、「創造的な選択」の四つの原則です。

» 2009年04月22日 16時10分 公開
[堀内浩二,Business Media 誠]

連載「クリエイティブ・チョイス」について

 問題を「イエスかノーか」に絞り込んでしまってませんか?――。新連載「クリエイティブ・チョイス」は、選択肢以外の「第三の解」を創り出し、仕事や人生の選択において、満足度を高めることを考えます。4月23日発売の書籍『クリエイティブ・チョイス』から抜粋したもので、今回も序章からです。


ワークでもライフでも使える原則を

 オンとオフ、ビジネスとプライベート、ワークとライフ、公と私といったように、「仕事」と「それ以外」は分けて考えられがちです。実際、そのほうが整理しやすい面もあります。本連載のテーマである「選択」について考えてみると、個人の選択は個人の裁量で行なえますが、仕事上の選択には組織の合意が欠かせません。

 しかし「どうせ組織が決めることだから」と個人が選択肢の創造をあきらめてしまうと、組織は創造の輝きを失います。『知識創造企業』(野中郁次郎、竹内弘高著、東洋経済新報社、1996年)の野中氏が指摘するように、個人こそが創造性の源であり、組織はその増幅装置です。仕事で「創造的な選択」をめざすならば、その仕事に個人的な意義を見出す必要があるということです。この個人的な意義を本連載では「我がこと」と呼びます(第1章で詳述)。

 仕事を「我がこと」にせず、「ひとごと」にしてしまうと、創造性から遠ざかるだけでなく想像力や倫理観の低下にもつながります。個人としてはできそうにない非人道的な選択も、「仕事は仕事だから」という理由付けがあればできてしまうのが人間です。

 そこで本連載では、「仕事」と「それ以外」の違いよりも共通する部分に目を向けて、両者に等しく適用できるような原則を考えます。事例も、「A国市場に進出するかしないか?」というような仕事の選択と「転職するかしないか?」というような生活(人生)の選択をバランスよく紹介していきます。

「創造的な選択」の四つの原則

 本連載では「創造的な選択」を四つの原則にまとめました。

 「ちょっと待った。よく『枠を外して考えよう』といわれるように、創造は『原則』のような枠組みの外側で起きるものではないか? この原則に従えば必ず『創造的な選択』ができるというのは、創造という言葉の定義からして矛盾ではないか?」

 と感じる方のために、補足をしておきたいと思います。

 本連載で提案するのは「正解を出すために従うべき絶対法則」ではなく「最善の解を見つける踏み台としての基本原則」です。

 いうまでもなく、われわれの選択は1人1人、1回1回、違うものです。しかし一般的な「選択」に関しては、キャリアの選択や仕事上の意思決定など、複数の分野でさまざまな知見が蓄積されています。それらを「『創造的な選択』を実践するためのヒントはないか?」という切り口で切り取っていけば、ある程度一般化できる要素は見つけられます。

 そういった要素を、わたしがお話をうかがってきた方々のストーリーに当てはめて、シンプルな原則にまとめたのが、「『創造的な選択』の四つの原則」です。

 「創造的な選択」とは、目的と手段を繰り返し問い直すプロセスです。継続的な活動の方法論がおしなべてそうであるように、これらの原則もらせん階段のように繰り返し活用されることを意図しています(図1-1)。

  • 第一の原則 【目的】「おもいきって」かつ「個人的な」目的を立てる(第1章)

 「我がこと」な目的を突き詰めれば、目の前の思い込みから自由になれる。

  • 第二の原則 【手段】「論理的に」かつ「直感で」選択肢を広げる(第2章)

 目的と選択肢とを行き来しながら、方法にこだわらず選択肢を見つけていこう。

  • 第三の原則 【試行】「偶然を求めて」かつ「勇気を出して」踏み出す(第3章)

 選択肢を考えつくだけならだれでもできる。とにかく一歩を踏み出し、試して学ぼう。

  • 第四の原則 【自得】「楽しみながら」かつ「終わらない」物語を創る(第4章)

 試行の結果を活かして、物語を書き直そう。

 第1章から第4章まで、4つの原則について1つずつ述べていきます。第5章では、このらせんを力強く回していくために、再び目的に焦点を当てます。

今日のクリエイティブ・チョイス「まとめ」

 本連載では、「クリエイティブ・チョイス」を「目的→手段→試行→自得」という四つの原則にまとめました。これを踏み台として、らせん階段を上るように自分なりの「クリエイティブ・チョイス」を切り拓いていきましょう。

著者紹介:堀内浩二(ほりうち・こうじ)

株式会社アーキット代表。「個が立つ社会」をキーワードに、個人の意志決定力を強化する研修・教育事業に注力している。外資系コンサルティング企業(現アクセンチュア)でシリコンバレー勤務を経験。工学修士(早稲田大学理工学研究科)。著書に『「リスト化」仕事術』『リストのチカラ』の文庫化/ゴマブックス)がある。グロービス経営大学院客員准教授などを兼任。


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