マイクロソフトの企業向けクラウドサービスはGoogle Appsとどこが違うのか

マイクロソフトは、企業向けクラウドサービス「Microsoft Online Services」の戦略説明会を行った。4月の提供開始に向けて価格などを発表したほか、「Google Apps」とのポジショニングの違いについても語った。

» 2009年04月06日 17時48分 公開
[杉本吏,Business Media 誠]

 マイクロソフトは4月6日、メールサーバ機能やファイル共有機能などをネットワーク経由で提供する企業向けクラウド型サービス「Microsoft Online Services」に関する戦略説明会を行い、4月末のサービス開始に向けて日本での提供価格を発表した。サービススイート「Business Productivity Online Suite」(BPOS)は1ユーザーあたり月額1567円から利用できる。

(左)Microsoft Online Servicesで提供する4サービス。Exchange OnlineとSharePoint Onlineは「業務の関係者が時間を問わずにコミュニケーションできるサービス」(佐分利ユージン執行役常務)。一方、Office Communication OnlineとOffice Live Meetingは「場所を問わずにコミュニケーションできるサービス」(同氏)。(右)価格はExchange Onlineが1044円、SharePoint Onlineが757円、Office Communication Onlineが261円、Office Live Meetingが800円。4サービスをまとめたBPOSは1567円。

 Microsoft Online Servicesは、2008年11月に米国でスタートした企業向けクラウド型サービス。3月に公開した日本語β版では、約1カ月間で500社以上の登録があったという。

 提供するのは、(1)Exchange Online(メール、スケジューラなど)、(2)SharePoint Online(ファイル共有、企業ポータル、掲示板などの情報共有機能)、(3)Office Communication Online(インスタントメッセージングや在籍情報確認など)、(4)Office Live Meeting(Web会議、アプリケーション共有など)の4サービス。

 サービスは単体でも販売するが、4サービスを合わせたサービススイート「BPOS」は1ユーザーあたり月額1567円と低コストな点が特徴だという。「通常は、メールシステムだけでも(1ユーザーあたり月額で)1200円くらいする」(ビジネス&マーケティング担当の佐分利ユージン執行役常務)。Exchange OnlineとSharePoint Onlineでは、Webブラウザからのアクセスに機能を限定した廉価版「Deskless Worker」も用意する。

 250ユーザー以上はユーザー数に応じて割引し、マイクロソフトのサーバ製品の既存ユーザー向け割引も行う。また、6月末までに申し込みをしたユーザー向けに割引を行うキャンペーンも実施する。

「あらゆる企業がクラウドに参加できる」

ビジネス部門担当プレジデントのスティーブン・エロップ氏

 「マイクロソフトの強みは“選択肢の力”。ユーザーは環境に応じて、クライアントソフトとオンラインサービスを自由に組み合わせることができる。これにより、あらゆる規模の企業がクラウドに参加できる」(ビジネス部門担当プレジデントのスティーブン・エロップ氏)。これは、同社が以前から推進している「ソフトウェア+サービス」戦略と呼ばれるものだ。

 「世界各地で多くの企業がMicrosoft Online Servicesの導入を決めている。グラクソ・スミスクラインコカ・コーラNokia――中でもグラクソ・スミソクラインは、10万人がExchange OnlineとSharePoint Online、Office Communication Onlineを利用することを決め、これによってITコストの30%減に成功した」。

 コストメリットに加え、社内のIT部門が「もっと戦略的なことに集中できる」ことも重要だと言う。「IT部門の人間が、コミュニケーションやコラボレーションのことを考えるのは確かに重要だが、それが最も重要な仕事ではないはずだ」

「Google Appsとは根本的に違う」

  Googleの企業向けオフィススイート「Google Apps」とも比較されがちなMicrosoft Online Servicesだが、「確かに価格帯だけを見れば、似ている点もある。しかしGoogleとわが社では、サービスの成り立ち方が根本的に異なっている」(エロップ氏)。

 「Googleのサービスはコンシューマー向けからスタートして、徐々にビジネス向けにシフトしてきた。一方、マイクロソフトは何年も前からエンタープライズ向けにソフトウェアを提供してきて、それをオンラインサービスに持ち込んだ。コンシューマー向けのサービスが、企業のミッションクリティカルなシーンで利用できるのか、信頼性を担保できるのか――ユーザーはそういった点も考える必要がある」

 「Googleが主にオンラインサービスを提供しているのに対し、マイクロソフトはクライアントソフトとオンラインサービスのハイブリッド型ソリューションを提供している。現実的な利用シナリオを考えれば、もちろんユーザーが(ソフトとオンラインサービスのどちらを使うかを)選択できた方がいい」(インフォーメーションワーカービジネス本部の横井伸好本部長)

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