タスク分解の達人になるのだシゴトハッカーズ

これまでに、「タスクシートによる見積もり時間付きのToDo管理」「タスクシートとスケジューラーの併用」について紹介してきました。今回は一歩踏み込んで、「いつやれるか分からないタスクの管理方法」「タスク分解のコツ」をお伝えします。

» 2009年04月02日 11時47分 公開
[大橋悦夫、佐々木正悟,Business Media 誠]

 前回までに、「ToDo帰宅時間が分かるタスクシートで管理する」「タスクシートはToDo管理、スケジューラーは時間の枠を確保するために使い分ける」といった内容を紹介してきました。実際に私もタスクシートとスケジューラーの使い分けを試しているのですが、タスクのやり残しや入力漏れが少なくなりました。

 ただ、ちょっと難しいと感じたのは、実際に作業を行う日時がはっきり決まっていないタスク、例えば「来週の水曜日までにやりたい、でもいつやれるか分からない」といったタスクを、どうタスクシートに入力しておけばいいのか、ということです。

 私の場合、とりあえずタスクシートの「明日以降」の欄に入れておくのですが、気付くと締め切りが近づいていて、あわてて片づけるので1日の予定が狂ってしまう――ということもしばしばで……。こういったタスクの管理方法として、何かいいやり方はあるでしょうか?


 そうですね。こういったタスクで怖いのは、あまり意識せずにいて、いきなり締め切り日直前になってしまうということだと思いますので、まずはそれを防ぐことが必要でしょう。そのために、とりあえず「翌日以降の早い時間帯」にこのタスクのための時間を予約しておきます。

 例えば今週の金曜日に、「来週の金曜日までにやっておくべきタスク」が発生した場合、「来週月曜日の午前中」にそのタスクを手がけるための時間を30分から45分くらい取ります。そして、そのタスクの項目名に「今週金曜日締め切り」というただし書きを付けておきます。こうすることで、少なくとも月曜日には金曜締め切りのタスクの存在を思い出すことができます。

 すぐにそのタスクに取りかかることができないなら、取りかかることができそうな曜日に改めて時間枠を確保する。1日で足りそうになければ、2日以上確保するように計画を立てるようにします。

 つまり、まずは「タスクを処理するための計画を立てるというタスク」の時間を、翌日以降に確保してしまうわけです。

 なるほど。スケジューラで枠を確保するとともに、「枠を確保する」というタスクをタスクシートで管理するわけですね。

 上の例でもそうだと思うのですが、「1つのタスクを実行するために、さらに細かいタスクに分解して(段階を踏んで)管理する」というのは重要ですよね。例えば、「リポートを完成させる」という大きなタスクではなく、「資料集め」「アウトライン作成」「図表・グラフ作成」「文章作成」「推敲&修正」と細かく分解するように。このタスク分解をうまく行うためのコツとか、どこまで細分化すればいいのかの目安とかってあるのでしょうか。

 とりあえず「5分以下のタスクはまとめる」など、時間の区切りで分けるという考え方もありだと思いますが、私がやっているのは「次にすぐに行動できるかどうか」を分解の基準にするやり方です。一見したところ、やや大きめの「やりがいがあるタスク」であっても、調子がよかったり得意だったりすれば、そのタスクにすぐに取りかかれることもあります。その場合には、あえて分解しません。

 しかし、疲れていたり苦手なタスクだったりすると、ちょっとしたことでも取りかかりにくく感じるものです。そういうときにはタスクを分解して、「これならすぐにやれそうだ」というタスクを見つけ出します。そしてそれに取りかかるうちに、そのタスクについてまた新しい展望が開けることもあります。

 仕事上の優先度が同じ場合、「気が重いタスク」と「楽なタスク」のどちらから片づけるべきかというのは、いろんな意見があると思うのですが、大橋さんはどうされていますか?

 私自身は、「とりかかりやすいタスク」は後に取っておくようにしています。朝一番を頂点に、時間がたつにつれてどんどん「やる気」は失せていくものなので、エネルギーのあるうちに「重いタスク」を先に片付けるわけです。

 「重いタスク」さえ片づけば、残るタスクは相対的に軽いものばかりになりますから、やればやるほど楽になる、ということになります。この逆になってしまうと最悪ですね。こちらでご紹介しているのは、上記の手順をシステマティックに行うための方法です。タスクをリストアップして並び替える、というだけのものですが、機械的に行えるものなので、是非やってみてください。

 また、今回の話を実践するうえでうってつけだと思われるツールとしては、Nozbeがあります。

 以前も紹介しましたが、タスクを洗い出して、さらに小さなタスクに分解し、コンテクスト(電話、メール、PC、誰かに頼むなど)を割り当てて、今やるべきタスクは何かを常に明らかにしながら仕事を進めることができます。抱えているタスクをマネジメントするための、前加工/整理/管理ツールという位置づけですね。タスクシートにタスクを入力していく前の段階で、抱えているタスクを整理するうえで役に立ちます。

 タスクシートを使うメリットは、「終了予定時刻」が得られることだと思っていますので、最終的にはタスクシートにその日の、“スタメンタスク”を入れて、使っていくことを想定しています。Nozbeは自分が抱えているタスクをすべて入れておく冷蔵庫のようなもので、そこから「今日やる分」ということで、タスクシートというまな板に切り出してくるわけです。

 なるほど。今回のポイントは、


  • 今すぐやらないタスクに関しては「いつやるかを決めるタスク」を設定しておく
  • 大きなタスクは「時間」や「すぐにとりかかれるか」などで細かく分解しておく
  • 分解のためにNozbeなどのWebサービスを使い、タスクシートに入れる前にタスクマネジメントしておく

 ということですね。大橋さん、佐々木さん、ありがとうございました!


筆者:大橋悦夫

大橋
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1974年、東京生まれ。ブログ「シゴタノ!仕事を楽しくする研究日誌」主宰。学生時代よりビジネス書を読みあさり、システム手帳の使い方やスケジュール管理の方法、情報整理のノウハウなどの仕事術を実践を通して研究。その後、ソフトウェアエンジニア、テクニカルライター、専門学校講師などを経て、現在は仕事のスピードアップ・効率アップのためのセミナーや研修を手がける。デジタルハリウッド講師。著書に『「手帳ブログ」のススメ』『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術』『そろそろ本気で継続力をモノにする!』『Life Hacks PRESS vol.2』『LIVE HACKS! 今を大切にして成果を5倍にする「時間畑の法則」』、近著に『成功ハックス』がある。

筆者:佐々木正悟

佐々木
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心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。著書に、『スピードハックス』『チームハックス』のほか『ブレインハックス』『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』『やる気ハックス』などがある。「シゴタノ!−仕事を楽しくする研究日誌」にて「心理ハック」を連載中。ブログ「ライフハックス心理学」主宰。


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