「コラボレーションの失敗」が起きる10の理由

上司と部下、同僚同士、社内と社外――あらゆるビジネスシーンにおいて、近年“コラボレーション”の重要性が高まってきている。コラボレーションに関して、ビジネスパーソンが不満を感じているのはどんな点なのか。

» 2009年03月25日 22時15分 公開
[杉本吏,ITmedia]

 ここ数年、あちこちで「コラボレーション(コラボ)」という言葉を耳にする。大物ミュージシャン同士のコラボ、有名ブランドとショップのコラボ、アニメやCMなどのコラボ作品。使われるシーンによってさまざまな意味合いを持つ言葉だが、「ビジネスにおける“コラボ”は、何かと耳当たりのいい言葉。乱用されすぎているように思う」と話すのは、IT市場の調査やコンサルティングなどを行うアイ・ティ・アールの内山悟志代表取締役だ。

アイ・ティ・アールの内山氏

 「コラボレーションというのは単なる共同作業ではなく、いろいろな専門分野を持った人間同士が、個人や単独の組織では得られない新たな付加価値を創出すること。ただの分業はコラボレーションとは呼ばない」(内山氏)

 上司と部下という縦の関係、現場での横の関係、社内だけでない社外取引先との関係。「付加価値を創出する」ためのコラボレーションの重要性は年々高まってきているが、実際のビジネスの現場では、どのようにしてコラボレーションが行われているのだろうか。


コラボレーションの基盤はメール、複数ファイルの共有に不満

 アイ・ティ・アールが「(業務上で)コラボレーションを行う際に、よく利用するコミュニケーションの方法」を聞いたところ、最も多かった回答は「電子メールにファイルを添付する」で約7割だったという。2位以下には「共有フォルダやサーバで文書を共有する」「対面のミーティング」「電子メールの本文に書き込む」といった項目が続いた。

アイ・ティ・アールの雪嶋氏

 「ブログSNS、Web会議、WikiといったWeb 2.0技術を基にしたツールの利用は多くて3%ほどと、極めて限定的。今日(こんにち)の現場では、やはりメールによるコミュニケーションがコラボレーションの核として根付いている」(アイ・ティ・アールの雪嶋貴大シニア・アナリスト)。

 また、「業務で作成する資料に用いるファイルの種類」についての調査では、「異なる複数の種類のファイルや文書を組み合わせて使用している」が76%。「コラボレーションで用いるアプリケーションの数」は、「3〜5種類」が過半数を超え、「6〜7種類」と回答した人も10%いた。

 「多くの人が業務に複数の形式のファイルを使用し、それらをメールによって共有している」(雪嶋氏)。その一方で、「複数ファイルを共有することに不満を感じている人は8割に上る」という。具体的な不満点としては、「必要なソフトウェアがないために、自分が送ったファイルを読めない人がいるかもしれない」「相手に自分の意図や趣旨をきちんと理解してもらえるか確信が持てない」「単なるファイルの寄せ集めでは、相手の関心を引くことができない」といった内容が調査結果の上位に並んだ。


「コラボレーションの失敗」が起きる10の理由

アドビシステムズのロブ・ターコフ上級副社長

 ロブ・ターコフ上級副社長は、「こうしたビジネスパーソンの不満は、PDFで解消できる」と主張する。例えば、アドビが提供するAcrobat、特にPDFポートフォリオなどの活用がポイントだという。

 「うまくいっていないコラボレーションには10の無駄がある。意見の相違/動作/誤った理解/余分な処理/コミュニケーション不足/翻訳/解釈/待機/調べ物/不適切な使用だ。中でも大きな問題であるコミュニケーション不足は、共有する文書に簡単にコメントが付けられたり、レビューができたりといった仕組みによって克服が可能だ」

 「PDFなどの現場で使われているツールは、常にボトムアップで導入されている。まずシステムありきで『これを使いなさい』というのではなく、まずユーザーありき。ユーザーがどう働くのかを考えるならば、現場からのボトムアップでコラボレーションの問題を解決することが重要」


 誰でも利用できるメールや電話、リアルタイムのコミュニケーションに適したSkypeなどのインスタントメッセンジャー、ビジネスに関わらずちょっとしたことでも気軽に書けるTwitterなど、コラボレーションツールにはそれぞれの特徴がある。複数のツールを場面に応じてうまく使い分けられればいいが、実際には「あの資料、どうやって送ったっけ……」「ツールごとに連絡先が分散してしまって不便」といった問題が起こりがち。

 最近はブログやSNS、Twitterなど複数のサービスからのフィードを集約して一覧できる「FriedFeed」や、ビジネス向けの「MODIPHI SMART for Business」といったサービスも登場してきている。ますます複雑化していくコラボレーションの現場では、「置いていかれないためのもう一工夫」が必要な時代になってきているのかもしれない。

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