「ハードは冷蔵庫でもいい」――Skype副社長が語る「ソフトウェアコミュニケーションの今後」

最新バージョンの「Skype 4.0 for Windows」ではどこが変わったのか、将来的に目指していく方向性は――。Skypeのダン・ニーリーバイスプレジデントが「ソフトウェアコミュニケーションの今後」を語った。

» 2009年03月17日 22時00分 公開
[杉本吏,ITmedia]

 Skypeは2009年3月17日、都内で「Skype 4.0 for Windows」に関する発表会を開催した。最新バージョンではどこが変わったのか、Skypeが今後目指していく方向性とは――。Skypeでアジア・パシフィック地域を担当するダン・ニーリーバイスプレジデントが語った。

帯域幅マネージャーで通話品質が向上、フルスクリーンでのビデオ通話も

アジア・パシフィック地域担当のダン・ニーリーバイスプレジデント

 「Skypeの5年間の歴史で、最も大きなバージョンアップだ」。2009年2月4日に公開された「Skype 4.0 for Windows」について、ダン・ニーリー氏はそうコメントする。

 Skype 4.0では、回線速度に応じてビデオや音声品質を管理する新たな帯域幅マネージャーを搭載。「低速な回線でも高品質のビデオ会話が楽しめる」という。フルスクリーンでのビデオ通話にも対応し、表情や身振り手振りを交えての会話は「音声だけとは格段に違うレベルのコミュニケーション」(日本担当カントリーマネージャーを務める岩田真一氏)。岩田氏によれば、Skype同士の通話の約25%でビデオ機能が利用されている。

Skype 4.0ではビデオ品質と音声品質を強化し、フルスクリーンでのビデオ通話にも対応した。ビデオ通話は、Skype同士の通話の約25%を占めるという

 3年をかけて独自開発したという音声コーデック「SILK」を搭載し、音声品質も改善した。ビデオ通話機能と同じく、帯域幅マネージャで品質を管理。従来バージョンと比較して、50%程度のネットワーク帯域で音声データを扱える。

日本担当カントリーマネージャーを務める岩田真一氏

 ユーザーからの数万のフィードバックをもとに、「ユーザーインタフェースも抜本的に見直した」(岩田氏)。新たな設定ウィザードでヘッドセットやマイク、Webカメラの設定が簡単に行えるようになり、設定がおかしいときにはユーザーに通知して解決方法を表示する「スマートヘルプ機能」を搭載。Outlookのアドレス帳などからのユーザーデータインポートも容易になった。

 会話管理機能も強化し、チャット画面から音声通信への切り替え、ビデオ通話への切り替えなどが1クリックで行える。また、Skype 4.0ではデフォルトの会話ウィンドウが大きくなったが、「今までのユーザーインタフェースが好きな人、画面を広く使いたい人」には、バージョン3のインタフェースで使えるコンパクトモードも用意している。

 ヘッドセットなどのオフィシャル認定製品などを販売するSkypeショップ日本語版のリニューアルも進めており、数週間後に公開予定だという。製品の送料は無料で、「Skypeが認定する、最もクオリティの高い製品を紹介していく」(岩田氏)。

発表会場に展示されていた、Skypeショップ取扱製品の例。リニューアルオープン当初は7製品をそろえ、その後ラインアップを拡大していく予定だという

「これからの通信は“水のように流れるもの”になる」

 「コミュニケーションの世界、通信の世界は大きなパラダイムシフトを迎えている」(ニーリー氏)。音声通話の世界では、デバイスは固定電話からコードレス電話、携帯電話に移行していった。コンピュータの世界でも、デスクトップPCからノートPC、ポータブルな通信デバイスと、同じような変遷が起こっている。

 「あらゆるプラットフォームがネットワーク接続できるようになると、通信はハードウェアに依存しなくなる。ハードウェアは確かに重要だが、今後コミュニケーションを動かしていくのはソフトウェアだ」

 「これからの通信は“水のように流れるもの”になる。コミュニケーションツールの軋轢(あつれき)は取り除かれ、ツールを問わないコミュニケーションが実現する」。例えば、これまでは会議室の中だけで行われていた議論を、「オフィスでは自席のノートPCで、あるいは携帯電話で“持ち運んで”移動できるようになる。車の中でも、家庭のテレビでもいい。デバイスはなんだっていい。究極的には、台所の冷蔵庫を使ってもコミュニケーションは取れるはずだ」

 Skypeは2009年1月に、AndroidプラットフォームとJavaプラットフォームへの対応を発表した。現在、iPhoneアプリの開発も進めているという。「ノートPCでも、モバイル端末でも、冷蔵庫でも、あらゆるデバイスを横断してコミュニケーションを行えるようにする。それがSkypeが提供する新しい体験」(ニーリー氏)

 現在、Skypeが全世界の国際通話に占める割合は8%を超える。「Skypeの歴史は5年とまだ浅いが、すでにコミュニケーションソフトの世界のリーダーであり、パイオニア的存在。競合他社のことを気にするというよりは、ただ我々自身のミッションに注力して進化していく。それだけだ」

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