仕事日記で“戦略作戦本部”を持ち歩く樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

昔のように誰にも言えない自分の内向的な気持ちを書き留めるための日記は、取り扱いを変えた方がいい。筆者の考える仕事日記は、自分の行動の方向性も決められる。いわば小さな“戦略作戦本部”を持ち歩くようなものだ。

» 2009年03月05日 15時42分 公開
[樋口健夫,ITmedia]

 前回、仕事の出来事を中心に書く「仕事日記」を提唱した。この日記のメリットを考えてみよう。日記を書くことで、その日の仕事を冷静に分析できるのがもっとも基本的なメリットだろう。

 昔風の日記なら、子孫が読んでくれるかどうかと気にしながら、おごそかに自分の書斎で書いたのかもしれない。「この日記が読まれるころは私はこの世にいないが、あえて……」というように書いたりしたのではないか。今の日記はもっと積極的であり、かつ行動的な活用方法がある。

 はっきりと言えば、昔のように誰にも言えない自分の内向的な気持ちを書き留めるための日記は、時代錯誤になってきた。少なくとも生存中は家族にも、誰にも見せまいとする従来の日記の取り扱いは変えた方がいい。

 では、一体何を書いたらいいのだろう。筆者が考える現代的日記の内容は、

  1. 正確にその日の行動を書く
  2. 誰と面談したかを書く。いつその会社の特定の人に面談したかということをよく日記で調べていた
  3. 何ができたかというポジティブなこと、前向きなこと、良かったことは、すべて書く。筆者はこれにポイント制を導入している。自分へのマイレージとして登録する
  4. 自分自身の大きなドジ、思わぬ失敗、きわどいニアミスなどもできるだけ書く。ひどい個人的ミスの場合は、マイナスのポイントにしたこともある
  5. あまりに驚がくの大事件、大震災、大事故、大台風なども書き留める
  6. 交通費精算に活用。日記なくしては、正確な清算は不可能である
  7. 書いている最中に思いついたアイデア、発想

 極めて重要なのは7番。日記を書いている最中に何か思いついたら、その都度書き込むことがオススメだ。そのとき結論が出なくてもいい。「〜とはなぜだ」「〜に会う必要がある」「〜社を訪問すること」「〜を一度、調べてみた方がよい」などから始まり、戦略的発想に結びつくことも多いのである。

 これは今日の仕事や行動からの連想や思いつきであるだけに、すぐに対処をするべき事柄が多い。つまり、日記を書いている時に、「すぐにやるべきこと」に気がつくということだ。日記発信の戦略案を思いつけば、それを「アイデアマラソン」のノートに書き写したり、スケジューラに翌日の朝一番にすることとして書きつけたりする。もっと大事な火急のこととなると、ポスト・イットに書き留めて「〜の件は、明日朝一番に〜に電話で問い合わせるべき」と書いて、トイレのドアに貼って寝ることもする。SuiCaの入った財布に貼り付けることもある。

 日記は、まさに小さな“戦略作戦本部”になっているのだ。

 最後に、筆者が気をつけていることを1つだけ。それは他人の悪口は基本的に書かないことだ。ただし、ヨメサンは唯一の例外。日記はか弱い筆者(亭主)の唯一の避難場所である。それも筆者は家族に公開している。ヨメサンとの間は、通常(?)だいたい平和な関係であるが、何かが原因できつくこじれることもある。直近の日記を見ると、筆者の捨て台詞が書いてある。「今日のお前の暴言は許せない。克明に今日の日記に書いておく。みんなが見るわ、子孫が見るわ、ダースベーダー、アッカンベーだ」

今回の教訓

 戦略作戦本部に悪口は書けないわな――。


著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「できる人のノート術」(PHP文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちらアイデアマラソン研究所はこちら


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