紙文書はすぐたまるから、廃棄のきっかけを失うとあっという間に書類の山になる。廃棄するきっかけをうまくつかみ、こまめに廃棄するのがポイントなのだ。
前回解説したように、文書には6つのライフサイクルがある。その最終段階が廃棄だ。文書の廃棄のきっかけは、大きく2つのパターンがある。
1.文書情報マネジメントを導入する際の不要文書の廃棄や、事務所移転のための移転作業をスムーズに行うための文書廃棄など不定期に行う場合
2.文書情報マネジメントにのっとって行う保存期間満了に伴い、定期的に行う場合
この2つのパターンの廃棄について内容を確認しておこう。
多くの企業から寄せられる質問に「不要な文書はいっぱいあって必要な文書が全然見つからないのはなぜか」というものがある。不要文書が氾濫(はんらん)して、机周りなどのオフィス環境を悪くするとともに、検索などに多大な時間を費やすというケースだ。不要な文書を多く抱えすぎているため、必要な文書を取り出すのに時間がかかっているのだ。
必要な文書を明確化するために、ほとんど誰も見ていない文書は積極的に廃棄する必要がある。日々の業務を続けていると、文書はどんどんたまっていく。それを放置しておくと、1年もしないうちにオフィスには不要文書が氾濫することに……。文書情報マネジメントの導入に当たってまずすべきことは、これまでためこんでしまった不要文書を廃棄することだ。廃棄文書の例を見てみよう。
文書例 | 詳細 |
---|---|
1年を経過した到来文書 | 他団体から送られた資料、案内、報告書、刊行物、各種通知、社内報など |
処理が終わった文書 | 成果物ができたあとの資料・アンケート個票、改正後の規定類、用済みのFAX紙、回覧済みのパンフレットなど |
課内で重複保管している文書 | − |
一時限りの回覧文書、報告書 | − |
会計伝票類の控えや写し | − |
年賀状、あいさつ状で1年を経過したもの | − |
1年を経過した軽易な帳票類 | 事務用品請求伝票など |
また、廃棄の際の心構えはこうだ。
■廃棄における心構え
− | 内容 |
---|---|
1 | 今見ないものは1年後も見ない |
2 | 迷ったら“捨てる” |
3 | メール、Webサイトなどは紙出力しない |
このパターンのカギは文書ファイルの保存年限の設定だ。保存年限の考え方だが、例えば保存年限3年という場合、文書が完結した年度を起算年にして1年間は事務室に「保管」し、残りの2年間を文書倉庫などに「保存」することになります。
保存年限の設定方法は1年、3年、5年、7年、10年、永年の6つ。最近はどんな重要な文書ファイルであっても、最初から永年保存と設定せず、10年保存にしておいて10年ごとに見直すという傾向もある。
また、過去に永年保存と設定されて文書庫で保存されているものでも、見直すことで廃棄可能な場合も出てくる。ちなみに、法定保存年限で永年と定めているものはない。
保存年限が満了しても、延長の可否を確認した上で廃棄するのがライフサイクル管理の基本ルール。初めから短い年限に設定して、見直しの機会を設けた方がいいだろう。
このパターンの廃棄作業を実際に行う場合は、まず廃棄作業に入る前に、保存期間を満了した文書ファイルについては、持ち込んだ各課に対してその旨を通知しよう。延長の要求などがなければ保存箱ごと廃棄する。廃棄は原則自社で行うのがいいが、外注に出す場合は、必ず担当者も作業に立ち会うなどの確認が必要だ。筆者が実際に指導した組織の中には、立ち会えない代わりに、作業状況をすべてビデオ撮影した例もあった。とにかく、ライフサイクルの最後だから、きちんと見届けることが大事だ。情報漏えいは、得てしてこうした作業を怠ったことから起こる。
なお、1年保存のファイルでも個人情報や秘密情報を含むものについては、文書主管部門に一度集めて、シュレッダー処理などを行うといいだろう。