正しい治療法って1つじゃないんですか?現役医師がズバリ回答

なぜ複数の医師に意見を聞いた方がいいんですか? 治療法って1つじゃないんですか――? 前回に引き続き、セカンドオピニオンへの疑問に仁科桜子医師がお答えします。

» 2009年02月23日 09時10分 公開
[仁科桜子(企画:ソフトバンククリエイティブ),ITmedia]

 こんにちは。女医の仁科桜子(にしな・さくらこ)が、患者さんからの素朴な疑問に、医師の立場からズバリ回答しています。前回に引き続き、さっそくセカンドオピニオンの質問に答えちゃいます!

質問3:正しい治療法って1つじゃないんですか? 

 複数の医師にセカンドオピニオンを聞いたとして、どの医師の治療法が正しいんですか? また、セカンドオピニオンの聞き方を教えてください。


 ご質問ありがとうございます。前回、「セカンドオピニオンは聞いた方がいいか?」という質問に対し、聞いた方がいいとお答えしました。セカンドオピニオンとは、診断や治療などについて別の医師の意見をもらうことです。

治療法は1つに限らない

 ここで誤解しないでいただきたいのは、セカンドオピニオンというのはあくまで「ほかの医師の意見を聞く」ことであって、誰が正しいとか誰の意見は誤りだとか、そういうケンカ腰のガチンコみたいなものとは全く趣旨が違うということです。ファーストの医師とセカンドの医師の意見が違ったとしても、両者とも間違っていないということも多々あるのです。

 だから、もしセカンドの医師の意見をファーストの医師に伝えるのなら、聞いた通りにそのまま言えばいいと思います。こういう意見もあるんですねーって感じで。「別の先生はこう言ってましたけど」と敵対心まるだしでファーストの医師にかみ付くのはオススメしません。しつこいようですが、どちらも間違っていないことがたくさんあるので。

 患者さんからすると、どうしても絶対的な治療法があると思いがちですが、そんな病気ばかりではないということは理解しておいたほうがいいかも。癌(がん)の治療法に関して、医師の意見が分かれていることなどを見れば、そのあたりは分かりますよね。

 結局のところ、いろいろな意見を聞いた上で最終的には患者自身が判断し選択することが大切なんですよね。たった1つの意見を鵜(う)呑みにしていては選択の余地もないわけで、選択するための前段階として、まずはさまざまな意見を聞くことが重要なんです。そして患者自身がちゃんと理解し納得した上で治療を受けるということに意義があると思います。納得することで治療にも前向きになれると思いますしね。

あらかじめ紹介状をもらっておく

 セカンドオピニオンをもらいに行くときの準備としては、本来なら紹介状(今までの経過や診断、今後の治療方針などを盛り込んで、ファーストの医師がセカンドの医師宛てに書いたもの)やすべての検査結果を持って行くのが理想的。

 そうじゃないと、いくら「ファーストの病院でこう言われました」と患者の口から言っても、検査の結果など客観的な情報がない状態では、セカンドの診断を付けようがないですもの。また新たにセカンドの病院で一から検査しなおすというのもナンセンスですよね。

 最近では、「セカンドオピニオン外来」という専門の外来を設けている病院もあります。このような外来なら、初めてのセカンドオピニオンでも抵抗なく受診できるかもしれませんね。

 世の中にはたくさんのいろいろな医師がいて、考え方も性格もさまざまです。だからこそ、自分で信頼できる医師を選び、納得いく治療を選択することが大切なのです。とはいいつつも、これがあまりにも度を越してしまうと、「自分の信念に合う医者がいない!」と病院を転々とする「ドクターショッピング」の域に入ってしまう恐れもあり、要注意。b何事もほどほどが大切なのかも。

 こう考えると、1つ目の質問でもお話ししましたが、主治医を探すのって結婚相手を探すのとちょっと似てるのかも。合コンに行ってみたり、お見合いしてみたり。いろんな方法でいろんな異性に出会ってみて、「あっちよりこっちの方がカッコイイかも」「でもあっちのほうがお金持ってるよなー」なんて思いながらトーナメントで最後に残った勝者を探す……。そして結婚してみたら「あー失敗した!」と思ったりして。皆さんも、彼氏/彼女を選ぶようにしっかり吟味して、納得できる治療を見つけるのがいいですよ。 


 次の質問「症状はどう説明すれば伝わりますか?」に続く――。

本日の処方せん

  • セカンドオピニオンとは、診断や治療などについて別の医師の意見をもらうこと。
  • 治療法は1つとは限らない。複数の医師の意見を聞き、納得できる治療法を見つけること。
  • セカンドオピニオンに行く際には、ファーストオピニオンの医師から紹介状をもらっておくとスムーズ。

仁科桜子(ドクトル・ピノコ)プロフィール

女医。 医大生時代には体育会に属しつつ、某社キャンペーンガールや大手塾講師など数々のバイトをこなす日々を過ごす。 現在は、酒と体力だけには自信アリの外科系ドクターとして病院勤務。

ドクトル・ピノコ名義で「週刊ビジスタニュース」などにコラムを執筆している。2009年1月、仁科桜子(にしな・さくらこ)名義で『病院はもうご臨終です』(ソフトバンク新書)を発売した。


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