ビジネス文書、活用のための電子化で考える4つのこと紙、時間、空間――3つの無駄をなくす文書管理(1/2 ページ)

「紙、空間、時間 3つの無駄をなくす文書管理」をテーマに、現場の生産性や効率を向上させる文書管理を考える2009年2月の総務特集。選別、入力、検索などの観点から活用できる電子化を考える。

» 2009年02月13日 21時08分 公開
[鷹木創,ITmedia]

 「紙、空間、時間 3つの無駄をなくす文書管理」をテーマに、現場の生産性や効率を向上させる文書管理を考える2009年2月の総務特集。第2回となる今回は、電子化について考えてみたい。

導入コストに関わる「選別」――“2対8の法則”で選ぶ電子化の対象

ポイント
選別 (1)法令で定められた書類とそうでない書類に分類
(2)そうでない書類を「再活用できるかできないか」で選別
(3)不要な書類を廃棄。よく見る書類だけにする
(4)完成前の書類を混ぜない
入力 アナログの場合:あらかじめ決めた見出しを付けてファイリングしたり、キャビネットの決まった場所にしまう
デジタルの場合:ドキュメントスキャナや複合機でスキャン
検索 アナログの場合:使う色や見出しに使う言葉を統一しておく
デジタルの場合:OCR機能などを使ってスキャンしたデータを検索できるようにしておく

 考えてみたいと意気込んでみたものの、電子化といえどアナログの文書管理と手順はあまり変わらない。「選別」「入力」「検索」――である。特に「選別」が導入コストを左右する。

 契約書や提案書など事業に関わるビジネス文書から、名刺などの個人所有の文書まで、電子化というとすべての書類を電子化したくなるが、実は電子化には手間がかかる。

 電子化といえばスキャナだが、スキャンすればすぐ活用できるのかというとそれは別なのだ。少なくともスキャン後のデータが検索可能な状態にしておく必要があり、OCR(光学式文字読取装置)ソフトやOCR機能が付いたスキャナが必須。さらにデータの読み取り間違いなどを肉眼で確認し、修正する作業は避けられない。スキャナの読み取り速度自体が向上したとしても、OCR後に確認しないことには使えるデータにならなかったりするのである。

 こうした作業は意外と時間がかかる。例えば、1営業日1人の顧客と名刺交換する営業マンなら、1年で200枚以上の名刺が手元に集まることになる。毎日電子化していれば、1日1枚程度の電子化はそれほど苦でははないが、200枚を1度に電子化しようとすると、それなりの労力が必要だ。

 そこで、アクティブな書類からスキャンすることがオススメ。具体的には昔の書類から電子化するのではなく、直近の書類からさかのぼって電子化していくのである。PFUの楠忠和さん(イメージングビジネス営業統括部部長)は「全書類のうち直近から2割ぐらいまでの書類で、現状の仕事の約8割がカバーできるはず」という。パレートの法則でいう「売り上げの8割は全顧客の2割から」ならぬ、「仕事の8割は全書類の2割でカバーする」というわけだ。残りのロングテール部分は「コストに応じて決めて行けばいい」(エプソン販売プロダクトマーケティング部の浅野英威さん)。

大量書類の電子化に適したスキャナは?

 続いては「入力」と「検索」である。特に入力については、スキャナが主役だ。通常スキャナというと、フラットベッドスキャナかスキャナ付きの複合機を利用するケースが一般的。フラットベッドスキャナは厚みのある書類や製本された書類をスキャンするのに向いているが、いちいち本体を開いて書類をセットしなければならず、大量のスキャンには向いていない。スキャナ付きの複合機はADF(自動紙送り装置)が付いていて、それなりに大量のスキャンも可能だが、OCR機能が付いていなかったり、同僚が使っていて好きなときに使えなかったりする。

 そこで利用したいのが、机の上で使えるドキュメントスキャナ。ADFと読み取り装置だけのコンパクトな本体で、A4用紙で毎分15枚以上の両面読み取りできるものが主流だ。小さなものではティッシュペーパーの箱程度の大きさ。価格はまちまちだが、5万円程度から10万円程度で購入できる。もし大量に書類をスキャンしたい場合は、こうしたドキュメントスキャナの導入も検討してほしい。

最近本誌で紹介したドキュメントスキャナ
製品名 用紙サイズ スキャン速度
(A4、毎分、カラー、200dpi)
読み取り解像度(カラー) 本体価格 発売元
ScanMate i1120 A4 20枚40面 75/100/150/200/240/300/400/600dpi 4万円前後 コダック
imageFORMULA DR-2510C A4 25枚50面 100/150/200/300/600dpi 4万9800円程度 キヤノンマーケティングジャパン
ScanSnap S1500/S1500M A4 20枚40面 150/200/300/600dpi 4万9800円 PFU
fi-6130 A4 30枚60面 50〜600dpi(1dpi毎指定可能)、1200dpi(ドライバにて設定) 12万6000円 PFU
CaminacsW A3 12枚24面 100/150/200/300/600dpi 9万4290円 コクヨS&T
imageFORMULA DR-3010C A4 30枚60面 100/150/200/300/600dpi 12万6000円 キヤノンマーケティングジャパン
ES-D400 A4 40枚80面 75/100/150/200/240/300/400/600dpi 13万4400円 セイコーエプソン

スキャン後の保管、フォルダ構造はリアルと同様に

 再利用を考えると、スキャン後のファイルをどのように保管するのかも重要だ。コストをかけられるなら専用のソリューションを導入するのも手だが、手っ取り早く始められるパターンが、部署のファイルサーバを利用すること。ただこの場合は問題もあって、ルールを決めずに適当に置いてしまったりすると、せっかく選別したファイルなのに、ファイルサーバの中がすぐに混沌としてくるのだ。ではルールを決めるとして、電子化後にまったく新しいルールを作ってしまうと、かえって混乱を招いてしまう。

 コクヨS&Tの津山倫巳さん(ドキュメントソリューション事業部チームリーダー)はこう言う。「ルールを決めておかないと、共有のファイルサーバはやりたい放題になってしまう。そのファイルを保存した人がほかの部署に異動したらいよいよ分からない」。例えば「2009年2月13日_鷹木_Biz.ID_記事_文書管理特集」というように、作成した年月日、作成者、案件名などがひと目で分かるようにするといい。

 また、フォルダの階層構造などは、既存の文書管理ルールや会社組織に応じたものにすること。「リアルなキャビネットをそのまま電子化したと思えば分かりやすい」(キングジムファイリング研究室の矢次信一郎さん)。ただし、階層構造が深くなると、ファイルに行き着くまでが面倒になりがち。「3階層ぐらいにとどめるべき」(津山さん)という。

 フォルダの名前も現在使っているファイリングルールに沿ったものがオススメだが、リコーの有田絢子さん(販売事業本部ソリューションマーケティングセンター)は「『その他』『庶務』『その1』『その2』といった、検索すると同じような名前がヒットしてしまうような役立たない名前は避けるべきだ」という。「年代別に分けるなら日時を必ず入れたり、案件別ならお客様の名前が分かるようにしたり、業務を簡潔に表した内容にしたほうがいい」

 また、検索性を向上させるために、定期的に不要なファイルを削除するのもオススメ。「1年間に一度も見ないファイルが半分ぐらいあるはず。3カ月、1年、3年ぐらいのスパンでファイルサーバの中身を見直してみては」(津山さん)

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