教える前に絶対欠かせない「概念分析」とは?(後編)プロ講師に学ぶ、達人の技術を教えるためのトーク術(1/3 ページ)

教えるのに失敗する4つのパターンにはまらないためにすることは「概念分析」。この概念分析をしっかりやれば、教えるための説明時間が10分の1になる――かもしれません。

» 2009年02月04日 19時39分 公開
[開米瑞浩,ITmedia]

 前回は「子供に道路の渡り方を教える」ケースを例に「問題点・課題・特性・解決策」というフレームで情報を整理し、4つの失敗パターンについて簡単にお話しました。

教える失敗の4パターン

  1. 安易に解決策を与えてしまう
  2. 不明確な課題設定
  3. 前提知識の不足
  4. 思考プロセスデザイン不在

 その上で最後に「質問」をしておきました。まずはその解答から行きましょう。

質問 「受講生が考える過程でどのようにその知識を使っているかを注意ぶかくモニタリングし、コントロールしなければならない」とはいっても、言うは易く行うは難しです。それを実現するために「先にやらなければならないこと」を次の2つから選ぶとしたら、どちらでしょうか?

  1. 教えたいテーマ自体がどんな概念から構成されているかを整理・分析すること
  2. 受講生が持っている前提知識を確認すること

 答えはもちろん「1」の方です。教えたいテーマ自体がどんな概念から構成されているかを整理分析しておかないと、受講生がその知識を持っているかどうかを確認できませんので、当然のことですね。

 なぜこんな質問を前回の最後に書いておいたかというと、現実にはこの「当たり前のこと」がなかなか難しいからです。意外に思われるかもしれませんが、本当です。

概念を発見するための常套手段は「細分化」と「順序づけ」

問題解決ストーリー
1 【問題点】 車にぶつかると危ない
2 【課題】 安全確保するにはどうしたらいい?
3 【特性A】 車は道路を走ってくる
4 【特性B】 車が接近するには時間がかかる
5 【特性C】 道路横断時は右と左から車が接近してくる
6 【特性D】 右側から来る車のほうが先に危険になる
7 【解決策】 右・左・右の順に見て安全を確認し、手を挙げて渡る

 きちんと概念分析をしてみると、前回掲載した「問題解決ストーリー」も、あのままではいけないということが分かってきます。具体的にはどこがいけないのでしょうか?

 概念分析をするときに非常によく使う手のひとつが、「順番を考える」ことです。もしAとBという2つの情報に順番をつけられるなら、AとBの間には何らかの関係があるはずで、その関係を明確に語っておかないと、「概念を分析した」ことにはなりません。

 ということで、順番を考えてみましょう。考えやすくするために、上記の個条書きから以下の通り3項目だけ抜き出しました。この3項目の間にはどんな順番がありますか?


問題解決ストーリー(抜粋)
2 【課題】 道路を横断するときに安全確保するにはどうしたらいい?
3 【特性A】 車は道路を走ってくる
5 【特性C】 道路横断時は右と左から車が接近してくる

 きちんと論理のつながりを整理すると、こうなります。

  • 【特性A】車は道路を走ってくる
  • 【問題点】道路を横断するときは、車にぶつかりやすく、危ない
  • 【課題】道路を横断するときに安全確保するにはどうしたらいい?
  • 【特性C】道路横断時は右と左から車が接近してくる
  • 【解決策】右・左・右の順に見て安全を確認し、手を挙げて渡る

 「車は道路を走ってくる」という特性Aは、「だから、道路を横断するときは車にぶつかりやすく、危ない」という問題点を生む要因なわけです。こう並べると、特性A→問題点→課題→特性C→解決策、と論理が一本につながってくることに注目してください。このように、

  • 情報を細分化して、相互の関連性を明確にし、順序づける

 のは「概念分析」を行うときに最もよく使う手段です。いつもいつも単純な一本論理で済むわけではありませんが、「まっすぐ一本につながるロジック」が基本中の基本なのは間違いないので、まずはそれを発見する努力をしてみましょう。

 ちなみに、特性AとCは一見、同じことを別な表現で言っているだけのようにも見えますが、Aが車自体に注目して性質を記述しているのに対して、Cは「自分の視点から車がどう見えるか」を語っています。そのため、Aは一般論としての問題点につながり、Cはそれに対して自分がとることのできる解決策につながります。

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