では、なぜ反面教師は自分をダメにしてしまうのでしょうか。実はこれは脳の仕組みに深い関わりがあります。実は脳はNOを理解できないんです。これはシャレや冗談ではなく本当のこと。どういうことか、もう少し詳しく説明しましょう。
例えば、
これから言うことを想像して下さい。酸っぱいレモンをかじっているところ。
と言えば、きっと皆さんはレモンをかじったところを想像するはずです。その酸っぱさを思い出し、ひょっとすると口の中に唾液がわいてきた人もいるのではないでしょうか。
では逆に、
これから言うことを想像しないで下さい。酸っぱいレモンをかじっているところ
と言われたらどうなるでしょうか。想像するなと言っているにもかかわらず、否応なくレモンをかじったことを想像してしまい、そして、やっぱり口の中に唾液がわいてきてしまうのです。
つまり、脳は脳内で思い描いたことをいくら否定しても、それを否定することはできず、リアルに描いたことに反応してしまう働きを持っているのです。
同じようなケースとして、例えばあなたが自転車に乗っていたとしましょう。そこで操作を誤り、電柱にぶつかってしまいそうになったとします。普通に考えたらハンドルを切って避ければいいだけの話なのですが、危機が迫って冷静な判断力をなくしてしまうと、
と思いつつも、なぜか頭に強くインプットされた電柱に向かって行ってしまう。そんなことを経験したことはないでしょうか。これもまた、「脳はNOを理解できない」現象の1つです。
このように、脳内に具体的な情景を思い描いてしまうと、脳はそこに向かっていくための行動を起こしてしまいます。私は、反面教師が自分自身をダメにしてしまう理由も実はここにあると分析しています。
特に、身近に反面教師がいる場合、自分がなりたくない状態をいつも具体的に見続けることになります。従って、「ああはなりたくない」と思えば思うほど、脳内に「なりたくない自分の具体的なイメージ」が刷り込まれてしまうことになり、そして無意識のうちに、なりたくない人物に向かって、行動を起こし始めてしまうんです。
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