「年賀状を書く」をお題に、ちょっとしたコツで字を改善していく全3回の短期集中講座。2回目のキーワードはすばり黄金比率です。これを使えば躍動感あふれる美文字をすぐ手に入れることができます。年賀状で一言添える文章などに。
悪筆がすぐ直る11の技に端を発した悪筆改善シリーズでは、「年賀状の宛名書き」をゴールに、全3回の短期集中講座を“開講”。1回目の【基礎編】では、たくさん書いても手が疲れず、キレイな字をキープする3つの技に触れた。
引き続き、高宮暉峰(たかみや・きほう)先生の定期講座「文字キャリアコース」から、今回は【本編】を見ていこう。
【本編】で使う技はただ1つだけ。黄金比率である。
年賀状の裏面をすべて手書きするのは大変だし、今どきは「年賀状コンシェルジュ」や「年賀状デザインキット」、「プリントマジック」などのオンラインサービスをはじめ、手書きする必要のない無料作成ツールがたくさんある。それらでラクに作ってしまえばいい。
とはいえツールで作ってハイおしまい、とするのはいかにも味気ない。一筆だけでも添えたいところだ。「元気でやってますか? こちらは相変わらず。今年こそ元ゼミのメンツで飲もう!」。こんな程度でグッとぬくもり感のある年賀のあいさつになる。そしてこの一言に黄金比率を使うと、躍動感のある文字列に仕上げることができるのだ。ここでいう「黄金比率」とは、最も美しいとされる、いわゆる黄金比とは異なる。高宮先生独自の"黄金比”だ。
これが黄金比率の基本数字。縦書き、横書き、どちらでも同じだ。漢字の文字サイズを100%とすると、カタカナを80%に、ひらがなを70%の文字サイズで書きましょう。そうすればメリハリのある文字列に仕上がりますよ、という意味である。先生はその理由を次のように説明する。
日本人は漢字、カタカナ、ひらがなという3種もの文字を巧みに使い分ける文化を持つが、各文字の持つ情報量には差がある。最も情報量が多いのは、字画の密度が最も高い漢字。例外もあるものの、基本的には情報量と字画密度は比例すると考えていい。
文字とは、相手に情報を速く、分かりやすく伝える手段。だから情報量の多い漢字ほど文字サイズを大きくして注意喚起し、少ないカタカナやひらがなほど文字サイズを小さくして流し読みできるようにする。こうして読み手が情報を受け取りやすくする気配りが、書き手には必要。この「情報を相手に伝えやすくする」という必要性から黄金比率が生まれた――というのだ。
では漢字100、カタカナ80、ひらがな70。なぜこの対比になったのだろう?
「経験値に基づき数値化した」と、高宮先生。今まで感覚でしかとらえられなかったバランスをハッキリと数字にして表すことで、誰もがその数字を元に書きやすくなる目安にできるようにしたという。
また、ひらがなよりカタカナをやや大きく書くのはなぜだろう。
「カタカナは外来語や固有名詞を表す時に使うことが多いので、ひらがなより少し大きくし、目立たせることによってより速く情報を伝えられる」。数字やアルファベットもカタカナと同じ理由で、漢字に対して80%の大きさがベストだという。
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