「1番以外はすべて負け」。世の中にはそんな強い信念を抱き、ビジネスで世界の頂点を極めた男もいます。勝つか負けるか――。決めるのは自分自身の信念なのです。
人生はセルフイメージ、信念、価値観により大きく変わってきます。この3要素によって自らの行動が変わってくるからです。前回まで「私は○○だ」というセルフイメージ、「人は△△だ」という信念について、実践1、実践2を通して解説してきました。
引き続き実践を交え、信念について考えていきます。
平本 では「世の中」はどうでしょう。「危険に満ちている」とか「競争だ」とか「戦いだ」「自己表現の舞台だ」とかいわれますね。
房野 私、実は「世の中はちょっとつらい」です……。
平本 「世の中はつらい」という信念を持っていると、楽に仕事ができたら「これはなんか変だ」と思うはずです。「ちょっと何か足りない」とか。
房野 そう、そうです。うまくいっていると、「どこかに落とし穴があるかもしれない」と思いますね。
平本 そして自分で落とし穴を作ってしまうんですよ。
房野 そうかもしれない。
平本 「世の中は遊びだ」と本気で思っている人は、毎日遊んでいるのに億万長者になったりします。
スタッフ原 私は「世の中は旅だ」と思います。
平本 その心は?
スタッフ原 毎日が冒険のようだからです。
では次々に冒頭を変えてみます。
平本 「人生は」?
房野 「仕事」。私は一生働いていたいな、という気持ちでいます。
平本 文章が書けなくなると、たぶんつらいですね。
房野 そうですね。でも、ほかの仕事でも構わないんです。ただ、ずっと自分で稼いでいこうと思っています。
平本 なるほど。
スタッフ原 私は「人生は楽しい」ですね。
平本 米国の不動産王ドナルド・トランプは「人生とは?」と聞かれて「勝つか負けるかだ」と答えたそうです。しかも「1番でないのはすべて負けだ」と。そういう信念があると、ああやって世界一になるわけです。片や「人生は苦行だ」という人もいます。では、次に「仕事は」?
房野 「仕事は結構楽しい」。ものすごくではないけれど、なかなか楽しい。
平本 「お金は」?
スタッフ原 「お金はたくさん欲しい」
房野 私も(笑)。
平本 たくさん欲しいとして、お金はどうやったら手に入りますか?
スタッフ原 期待に応えれば。
房野 働いて稼ぐ。
平本 働いて稼いで、初めてお金が手に入る、という信念だと、働かずに手に入れるお金は受け入れられないですね。宝くじは買わないし、何かのお礼でお金をもらっても、お歳暮レベルだったらいいけれど、まとまった金額だったら受け取らないです。
房野 そうですね。以前、役に立ったという気持ちになれなかった仕事はギャラをもらって申し訳ないと思いましたね。
平本 ほかには?
スタッフ原 「お金はやった分だけ来る」
房野 「ありすぎると危ない」
平本 そこですね。「危ない」となるとお金持ちにはならない。だって自分の信念がそうですから。
房野 うわあ、残念。
平本 ほかには?
スタッフ原 「お金は人をハッピーにしてくれる」
平本 そんなふうに思えると、たぶんお金を稼げますね。
少し解説しましょう。
「お金は争いの元」などと思うと、「これ以上もらうと争いが起こるから、もらわないでおこう」と思うんです。「お金は悪い」とか「お金は汚い」なんかも信念です。反対に「お金がすべてだ」という人もいます。お金さえあれば何でも買えると思っている人は結構いますよ。それが行動に影響するんです。「お金はトラブルの元だ」と思ったら、これ以上は受け取らない、と思うわけです。
「お金は仕事だ」と思ったら、いい仕事をせずにお金は受け取れないと思う。そして、そういう人は一生、現場で働いていないとダメだったりしますね。「お金は人をハッピーにする」だったら、もしかしたらどんどんお金を稼げるかもしれない。このように、人は信念に基づいて動いています。気づいていない信念は、実はいっぱいあるんです。
さらに冒頭を変えます。これで最後です。
平本 では最後。「運は」「運命は」?
スタッフ原 「運は引き寄せるもの」
平本 となると、自分で頑張ろうとするわけです。
房野 「運は知らない間に落ちていた」「思わぬ時に拾えた」という感じです。
平本 そうすると、よいことを期待しないわけですね。
房野 そうですね。
平本 聞いていると2人の信念は反対ですね。一方は自分で引き寄せるから、頑張ろうとするわけです。一方は、運は頑張って得られるものではないから、コツコツやっていたら、いつか来ると思っている。
こんなふうに、前回から今回にわたって実践してきたことが、信念のうちの世界観に関するものです。
実は世界観のうち、冒頭が「私は」というフレーズにするとセルフイメージになるんですね。つまりセルフイメージは、信念という範疇(はんちゅう)の中の一部なんです。ただ、セルフイメージは自分に深くかかわっているので、あえて分けています。
次回はもう1つの信念について解説していきます。
ピークパフォーマンス 代表取締役
平本あきお(ひらもと あきお)
1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は、『すぐやる! すぐやめる!技術 ― 「先延ばし」と「プチ挫折」を100%撃退するメンタルトレーニング』。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。
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