「ドリルじゃなくても穴は開く」を気付かせる質問とは?明日から試せる「質問のコツ」(1/2 ページ)

「ドリルを買おうとしている人は、ドリルが欲しいのではなく、穴を開けたいのだ」――知りたい情報を聞き出すためには、相手にとって“気付き”のある質問をすることが重要だ。

» 2008年12月05日 08時00分 公開
[杉本吏,ITmedia]

 質問によって相手から効果的に情報を引き出すためには、2つのポイントに気を配る必要があることを、前回書いた。

  • 最初に「なぜあなたにこの質問をするのか」を伝える
  • 相手にとって“気付き”のある仮説を立て、それを検証する質問をする

→「なんでそんなこと俺に聞くの?」をなくそう

→共感のコツは「夫婦ゲンカの解決法」にあり

 では、相手にとって“気付き”のある質問とは、具体的にはどんな質問のことなのだろう。日立コンサルティングの芦辺洋司マネージングディレクターは、「自分がクライアントの気持ちになりきって考えれば、聞く価値のある質問が見えてくる」という。

「どんなドリルが欲しいんですか?」に“気付き”はない

 昨年、4分の1インチ・ドリルが100万個売れたが、これは人びとが4分の1インチ・ドリルを欲したからでなく、4分の1インチの穴を欲したからだ。

 この言葉は、ハーバードビジネススクールの名誉教授だったセオドア・レビット氏の著書『マーケティング発想法』からの引用だ。

 芦辺氏は言う。「ドリルを買おうとしている客がいたとする。ここで、うまくいかない営業、うまくいかないコンサルタントは、こう聞いてしまう」

 「どんなドリルが欲しいんですか? 大きさは? 素材は? 出せる価格は?」

 しかし、ドリルの価格の相場を知っている客など多くはないし、大きさや軽さについても「できるだけ小さくて軽い方がいいけれど……」くらいのことしか答えられないものだ。ドリルについて詳しくないからプロに相談しているのに、それをずばり聞いてしまっては仕方がない。

 コンサルタント側は「大体○○グラムくらいの重さで、価格はいくらからいくらまでで――」といった答えを期待しているため、客から「できるだけ軽くて、できるだけ安くて」といった答えをもらっても、「それはそうだけれど……」と詰まってしまう。

 そうではなく、まずは「ドリルを買おうとしている客は、ドリルが欲しいのではなく穴を開けたがっているのだ」というニーズをくみ取る。その上で、質問のターゲットを、「ドリル」ではなく「客」に替えるのだ。つまり、「どんなドリルが欲しいのですか?」ではなく、こう質問すればいい。

 「(あなたは)どこに穴を開けたいんですか? いくつ開けたいんですか? そもそもなぜ開けたいんですか?」

 こう尋ねると、客は「実は、机を自作したくて」だとか、「日曜大工だから、使っても週1回くらい」と言った答えを返すだろう。

 穴を開けたい素材によって、適したドリルの刃は違ってくる。1度しか使わないのなら、耐久度は低くてもいいから、安いものという選択肢もある。木や紙に穴を開けたいのなら、そもそもドリルを使わなくてもいいかもしれない。それどころか、「それは穴を開けなくても問題を解決できますよ。本当に穴を開ける必要がありますか?」という提案につながる可能性だってあるわけだ。

 「店頭でドリルを見ている客は、その可能性に気付いていない。そこを気付かせてあげるのがいい質問であり、いい提案」(芦辺氏)。そのために、自分が相手だったら――と考えて、相手が何をしたいのか、を考えるのだという。

 

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