相手と顔を合わせて行う打ち合わせは、電話やメールでは伝えきれない先方のニーズや、抱えている問題点を洗い出すためにも非常に重要だ。「相手から効果的に情報を引き出す質問のコツ」を、プロのコンサルタントに聞いてきた。
クライアントとの打ち合わせ当日。事前にいくつも質問を用意して臨んだのに、打ち合わせが終わってみれば結局知りたいことが何1つ分からなかった――。そんな悲惨な思いをしたことのあるビジネスパーソンも少なくないのではないだろうか。
相手と顔を合わせて行うヒアリングは、電話やメールでは伝えきれない先方のニーズや、抱えている問題点を洗い出すためにも非常に重要だ。「相手から効果的に情報を引き出す質問のコツ」を、プロのコンサルタントに聞いてきた。
取材したのは、日立コンサルティングが行っている社内研修。受講者は日立コンサルティングのマネージャークラス以下、約30名のコンサルタントで、講師陣は日立コンサルティングマネージングディレクターの芦辺洋司氏をはじめとする面々だ。
研修が行われたのは静岡県の伊豆・ラフォーレ修善寺ホテル。1週間に渡るトレーニングの中、12月3日「クライアント企業へのインタビュー」メニューに参加した。架空のクライアントと相対するロールプレイを通じて、コンサルタントには欠かせない“質問力”を向上させようというねらいだ。
「一言に質問力と言っても、本を読んだり話を聞いたりするだけで、簡単に向上するものではない。実際に現場に出て場数を踏み、多くのクライアントと話し合った中から、本当の質問力が付いてくる」(芦辺氏)
OJT(On the Job Training)で経験を積んでいくのももちろん1つの手だが、それでは「時間もかかるし、若いコンサルタントの中には、最初の失敗で立ち直れなくなってしまうような人もいる。短期間で集中して研修することで受講者の意識を変え、その人なりの質問力を身につけていってもらうための研修」(芦辺氏)というわけだ。
筆者も仕事柄、初対面の相手から話を聞く機会が多いが、まだまだ「これが自分の質問力」と自信を持って言いきれるようなノウハウは持ち合わせていない。「ベテランコンサルタントにコツを教えてもらって、手軽に質問力アップをねらおう!」などと考えていた身としては、芦辺氏の言葉が耳に痛いが、トレーニングの現場を取材することで、何か見えてくるものもあるはず――。
というわけで、この日取材した中から「コンサルタント以外の職種でもすぐに真似できて、明日からビジネスの場で生かせるような質問のコツ」をまとめてみた。
この日の研修では、受講者がコンサルタントとなって、クライアントのニーズを聞きだすロールプレイが行われた。例えば以下は、架空の会社「F-TEC」の幹部(講師陣)に対し、コンサルタント(受講者)がヒアリングした内容だ。
コンサルタント(受講者):トップの意思決定というのは、現場の社員に伝わっているんですか。
幹部(講師):え……? ああ、はい。伝わっていると思いますけど。
コンサルタント(受講者):では、社員とコミュニケーションを取るために、具体的にどんなことをされているんですか。
幹部(講師):どんなことって言われても……。
コンサルタント(受講者):社内報を出しているとか。
幹部(講師):社内報は出してますけど……。ええと、あなたたち、社内報を出しているかどうかを私にお聞きになりたいんですか?
「総務の専門でもない幹部に、社内報を出しているかどうかを聞かれても、『なぜこの人は自分にそんなことを聞くのだろう?』と思うだけ。これでは会話が成り立たない」(幹部役を務めた講師の玉樹正人氏)
質問をするときに重要なのは、相手に「自分が質問されている理由」を理解してもらうこと。そのためには、質問の前に、「こういう理由からあなたにこの質問をしますよ」というロジックを説明してやる必要がある。「単純に、『御社の○○さんからこういう御相談をいただいておりまして、それを解決するために、あなたにこういうことを聞くのです』と、それを伝えるだけでもいい」(玉樹氏)
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