ビジネスにつながる福利厚生、企業内「大学」――博報堂「働きやすい」を形に イマドキの福利厚生(1/2 ページ)

企業内に大学を設立してしまった博報堂。学内の「構想サロン」や「構想ラボ」では、社員が自発的にさまざまな研究をしている。大学開校の狙いは?

» 2008年12月01日 20時27分 公開
[豊島美幸,ITmedia]

 「今はどこもエコ、エコって地球の温暖化に警鐘を鳴らしてますよね。でも松井さんは、長い地球の歴史から見れば、地球がちょっとくしゃみしただけというんです。『ああ、そういう発想もあるんだ』と、物の見方が変わりました」

 講演会に出席したある社員はそう話す。松井さんとは松井孝典(まつい・たかふみ)さんのこと。「地球温暖化の主因はCO2」説が騒がれる状況に懐疑的な惑星物理学者である。

 講演は2008年11月、博報堂内にある人材育成組織「HAKUHODO UNIV.」、通称「博報堂大学」の主催で行われた。博報堂大学では、2005年4月の“開校”以来、年に4回程度、外部のゲストを招き、こうした社員セミナーを開催している。

 前回取り上げたソフトバンクの社内セミナーでは、その目的は「家庭と仕事の両立」を支援しようというもの。福利厚生の王道ともいえる目的だった。一方、博報堂では人事人材開発施策の一環として社内セミナーを開催しているという。

 イマドキの福利厚生を紹介する今特集。最終回は、企業内大学を組織し、人材育成に力を入れる博報堂のケースを紹介しよう。 

すぐに業務に結びつかなくてもいい、大局的視野を養うのが目的

博報堂大学について説明する渡邉さん

 博報堂は、4社から成る博報堂DYホールディングスという持ち株会社傘下のグループ企業の1つだ。博報堂のほか、大広、読売広告社、博報堂DYメディアパートナーズから成る。博報堂と博報堂DYメディアパートナーズの社員が博報堂大学で「構想力」を身に付けていくという。

 博報堂大学とは、社員の構想力を高めるために企業内に設置した人材育成組織だ。大学では講義やセミナーなどを用意。社員は受講したり自主的な研究活動を行う。

 構想力とは、既成概念にとらわれない自由な「発見」力と、チームワークの中で切磋琢磨していく「共創」力、そしてクライアントの抱く課題を解決する「設計」力の3つを兼ね備えたもので、博報堂社員が持つべき必須用件としている。

 「講演会は社員の構想力を高めるために開催しています」。人材開発戦略室の渡邉啓(わたなべ・けい)さんはそう説明する。渡邉さんは博報堂大学の運営に携わっている。

 広告会社という業種柄、社員は日常業務を通して自由に発想する人々に接する機会も多いだろう。十分、構想力も高められそうだ。「だからこそ、敢えて広告畑とは違う畑の人を呼ぶようにしている」。日常業務とはまた違う大局的な視点が養えるはずというわけだ。

 社員の参加は自由で、1講演の参加者は100〜150人ほど。登壇者は冒頭の松井孝典さんやノーベル物理学賞受賞者の小柴昌俊さんをはじめ、これまで学者、ジャーナリスト、演劇関係者など幅広い人選を行ってきた。

 参加者から業務に直接役立ったという声はそれほど挙がらない。だが冒頭ように「物の見方が変わった」という声は聞くという。「今すぐ業務には結びつかない。でもいつか、新しい発想が業務に結びつく時が来るはず」と、渡邉さん。

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