ビジネスシーンに特化したノート「ニーモシネ」誕生の秘密マルマンフェア 2008(1/3 ページ)

「大切なことを、自分の代わりに覚えておいてもらう」。そんなコンセプトから生まれたノート「Mnemosyne(ニーモシネ)」が売れている。マルマンフェア 2008で、ニーモシネ開発の背景と、ビジネスパーソンのノートの使い方について聞いた。

» 2008年11月21日 20時30分 公開
[杉本吏,ITmedia]

 「大切なことを、自分の代わりに覚えておいてもらう」。そんなコンセプトから生まれたノートが、1年間で35万冊と売れている。マルマンが販売するビジネスパーソン向けノートシリーズ「Mnemosyne」だ。これで「ニーモシネ」と読む。

 製品名の由来は、ギリシャ神話に登場する記憶の女神、「Mnemosyne(ムネモシュネ)」から。「ムネモシュネでは読めないし、覚えてもらえないと思って。あえて独自の読み方にしたけれど、ニーモシネでも読めない」。商品企画を担当する石川悟司さんは、マルマンフェア 2008の会場で笑いながらそう話した。

マルマンのビジネスパーソン向けノート「Mnemosyne(ニーモシネ)」シリーズ。現在20種類を用意する

“引き算”の魅力に目を向ける消費者が増えた

マルマンフェア 2008でニーモシネの開発の経緯などを説明した、商品企画チームの石川悟司さん

 4年前に新たなノートブランドの商品企画に携わったとき、石川さんの所属する商品企画チームは、ノート市場に対してある懸念を抱いていた。

 1つは、世の中のペーパーレス化の流れ。PCの普及などによって、「デジタルは便利で新しくて速い」、アナログは「不便で古くて遅い」という価値観が広まりつつあった。

 もう1つは、消費者が「感性的な価値」を重視するようになってきているということ。それまでは価格が安かったり多機能であったりすれば売れたものが、売れなくなってきていた。

 それよりもむしろ、「デザイン的な価値や、そのブランドの持つ歴史的背景、多機能ではなく機能をぎりぎりまで絞った“引き算”の魅力といった部分に目を向ける消費者が増えていると感じた」(石川さん)。ヘミングウェイやゴッホが愛用したとされる高級ノート「MOLESKINE」や、シンプルながら洗練されたデザインで使い勝手のいい「ロディア」のノートが売れているところに、それが表れている。

MOLESKINE(左)とロディア(右)のノート

 こうした背景がある中で、なおビジネスシーンで活躍できるノートとはどういうものなのか。ビジネス文書のデジタル化が進む中で、手書きの価値とはどこにあるのか。ノートを使う場所、時刻、用途を想定して、商品に求められる要素を絞り切った結果、たどり着いた結論は「ビジネスシーンで生まれる“アイデアを書きとめる”ことに特化したノート」だった。

書いて快感を覚える紙

 ビジネスの現場では、いつどこで斬新なアイデアを思いつくか分からない。社外で移動中に、いつでも取り出してアイデアを残せるメモ帳として、ニーモシネシリーズの第1弾「ROOTS」を発売した。手のひらにすっぽりとおさまるA7変形サイズの縦とじリングノートだ。表紙にはしなやかな感触のPP(ポリプロピレン)素材を採用。ポケットから取り出しやすく、持ちやすいように角を丸めた。項目を立ててメモできるように、区切りの罫線も入れた。

A7変形サイズで手のひらにすっぽりおさまる「ROOTS」

 工夫した点はそれだけではない。「携帯電話やPCに慣れている若い世代に、紙を使うことを便利に感じてもらうためには、まず書くことを習慣にしてもらわなければいけない」。書く習慣をつけてもらうために、ノートの特徴に合わせて紙を使い分けた。

 マルマンがノートに使っている紙の厚さは、通常1平方メートルあたりの重さが68/75/80/96.4グラムの4種類。ROOTSは、持ち歩いて使うメモ帳として、68グラムの最も薄い紙を採用した。

 続いて発売したA5サイズの「INSPIRATION」やA4サイズの「IMAGINATION」は、書くときの手応えや快感を感じてもらうために、「最も書き味がいい」という80グラムの紙を採用。単語帳として使える「Word Cards」は、裏が透けて答えが見えてはいけないという理由から、例外的に画用紙を採用している。

 「紙にペンで書くことの気持ちよさを、手に残る感覚として記憶してもらいたい」

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