落とせる大物、落とせぬ小銭Biz.ID Weekly Top10

当時任天堂の社長だった山内溥氏は、完成したばかりのゲームボーイの最終試作機を手渡されたときに、思わぬ行動を取ったという――。

» 2008年11月20日 11時00分 公開
[杉本吏,ITmedia]

 先週のアクセスランキング第1位に輝いたのは、写真と動画で見るポメラの開発秘話(後編)。いつも持ち歩いて使えるツールとして、耐久性を重視したポメラ。「75センチの高さから落としても壊れない。目の前でどーんと落としても大丈夫です」という開発者の立石幸士氏のコメントから、ネットで見かけたある話を思い出した。

 当時任天堂の社長だった山内溥氏(現相談役)が、完成したばかりのゲームボーイの最終試作機を手渡され、いきなり床に叩き落としたというエピソードである。山内社長は、「子供が遊ぶゲーム機は、ちょっとくらい乱暴な扱い方をしても壊れてはならない」というポリシーから、こんな行動を取ったという。

 なんというか、大物と呼ばれる人というのはやはり人には思いつかない、思いついても実行には移せないようなことができる人なのかもしれないなあ、と思ったりする。

 小心者の筆者が同じ状況に立たされたら、とりあえずしげしげと外観をチェック。電源を入れて遊んでみて、存分に試した後で「これ、こっから落としても壊れない?」と担当者に聞くくらいが精いっぱいだろう。担当者が「大丈夫です、絶対に壊れません! 何なら試しに落としてみてくださいよ」くらいのことを言ったとしても、「ほんとに? でもねえ……せっかく作ったんだからねえ……」などと答えるに違いない。なんだか情けない。

 いつの日かそんな情けない自分を克服して、試作品なんかを盛大にどかーんと落としてみたいものである。早く誰かゲームボーイとかポメラみたいなものを渡してくれたりしないかなー、落とすのになー。などと考えているのだが、残念ながら今のところそういった予定はない。

 仕方がないので、コンビニで小銭のおつりを受け取った際に、盛大に床にぶちまけたりしている日々である。この場合、わざと落としているわけではないのが最大の問題なのだが、いいのだ。いつの日かポリシーを持って試作品を落とすのだ。などと強く心に誓いながら、今日も背を丸めて小銭を拾い集める筆者である――。

 

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ