Weave、Ubiquityで実現する「ブラウザは知っている」

あなたの行動を知っていて、気の利いた友達のように振舞ってくれる――。そんなブラウザが登場するのもそう遠くないかもしれない。「Weave」「Ubiquity」などを開発するMozilla Labsのエイザ・ラスキン氏の話を聞いて、そう感じた。

» 2008年11月18日 12時40分 公開
[鷹木創,ITmedia]

 Webブラウザは、あなたの行動を知っていて、気の利いた友達のように振舞ってくれる――。そんなブラウザが登場するのもそう遠くないかもしれない。Mozilla Labsのエイザ・ラスキン氏の話を聞いて、そう感じた。

 もちろんたいていのブラウザでは、閲覧したWebページの履歴を管理している。そういう意味ではユーザーのWeb上での行動はすでにブラウザの管理するところだ。だが、この閲覧履歴を有効に活用できていないのではないだろうか。

PCで調べたけどメモを忘れた、どうしよう?

エイザ・ラスキン氏。アップルのMacintoshの開発に携わったジェフ・ラスキン氏の息子である

 ラスキン氏はこう問いかける。「PCでお店の場所を調べたけど、駅まで着いたらメモを取ってないことに気づいた。あなたならどうする?」。現状の選択肢は2つだ。まずはPCで調べたWebサイトに携帯電話でどうにかアクセスしてみる。もう1つは家に帰って確かめる――「両方ともちょっとイヤだね」(ラスキン氏)

 PC同士やPCと携帯電話の連携を図るためにMozilla Labsで開発しているのが、履歴やブックマークなどを同期できるオンラインサービス「Weave」である。

 「2009年上半期にMozillaの携帯用ブラウザFennecで連携機能を実現する。PCのブラウザで見ていたWebページは、携帯でも見られるようになる」。キーボードなどの入力インタフェースが貧弱な携帯電話では、入力作業が面倒だ。だから「PCで入力したパスワード情報なども同期する」。

 Weaveを使うと、複数のオンラインサービスで作成したコンテンツの共有もできるかもしれない。例えばmixiやMySpaceなどのSNSには、自分のコンタクトリストが存在している。利用するにはログインが必要だ。それに自分のPCでログインしていても、ほかのPCや携帯電話から利用するときは再度ログインしなければならない。こうしたログイン情報や、その先にあるコンタクトリストなどを共有化できるというわけだ。「SNSにある自分のコンタクトリストを、あらかじめ指定したサービスや人に個別に開示できるようになるはず」

 もちろんWeaveのサーバに保管したデータは暗号化する。「Mozilla側ではデータを読むことはできない。ユーザーが安心して使えないと普及しない」。Weaveは、企業向けの展開も考えている。「独自サーバにホスティングしてもらうのもいい。企業向けもユーザー体験を最優先し、収益モデルは二の次。サービスの継続性は重要だが、無料で誰でも使えるようにする」

機能を“ブックマーク”

Wordの機能を全部アイコン表示にしたら……

 履歴やオンラインサービス上の情報を有効に活用できそうなことは分かった。では、その情報をどうやって引き出すのか――ラスキン氏の答えは「Connecting the Web with language」。Webに言語でつながる、すなわち話しかけるようにブラウザを使うことだ。「もっとも良いインタフェースとは、存在しなくても分かるインタフェース。言語はインタフェースさを感じさせない」

 現在6000ものアドオンが存在しているFirefox。これらをアイコンにしてブラウザに付けたら使いやすいだろうか。「アイコンが使いやすいというのは誤解だ。Wordの機能を全部アイコン表示にしたら、何の機能を示しているか分かりますか?」

 こうした、しゃべりかけるようにブラウザを操作するために開発しているのが「Ubiquity」である。UbiquityはFirefoxのアドオンだ。入力ボックスに各種オンラインサービスの機能を呼び出すコマンドを入力することで、わざわざオンラインサービスにアクセスせずにその場で必要な機能を利用できる。いわば機能をコマンドとして“ブックマーク”する感覚だ。

 例えば、「map 九州 じゃんがら」と入力する。この場合「map」がGoogleマップの機能を呼び出すコマンドで、「九州」「じゃんがら」がGoogleマップの検索クエリになるわけだ。Gmail上で利用すれば、Googleマップにアクセスすることなく「じゃんがららあめん」の場所をメールに張り付けることも可能だ。同じように外国語のWebページを翻訳し、ページの内容を日本語に書き換えることもできる。

(左)「九州」「じゃんがら」をGoogleマップで検索したところ。(右)Webページを翻訳。直接ページを書き換えて表示できる


 どこのPCや携帯電話からでも自分が調べた情報にアクセスできて、友達にしゃべりかけるように操作すれば、さっと情報を見せてくれる――。すぐに実現できる機能ではないのかもしれないが、Weave、Ubiquityにはそうした可能性を感じた。ラスキン氏は最後に「今後は、Weave、Ubiquityのように実験的に行われていることをどのような形でFirefoxに取り込んでいくかが課題。次期Firefoxであるバージョン3.2や、携帯向けのFennecにはいくつか取り込むことになる」と述べた。

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